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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第七章 インターン
51/69

51 前期研修

お待たせしました第51話を更新しました!


いよいよ、研修が始まります。何もない山の中の病院でちょっと不安な飛鳥ですが……

 私は七時四十分くらいにアパートの部屋を出ました。病院に向かっているのは私だけです。小路丸(こじまる)さんや南条(なんじょう)さんは? あれ、二階堂(にかいどう)君は? そう思いながら私は病院まで来ました。エレベーターで五階まで行き院長室を目指します。この時間って本当人が少ないです。受付も誰もいませんでした。守衛さんはいましたけどね!

『コンコン』

 私は院長室の扉をノックします。

「はい、どうぞ」

「おはようございます」

 私はそう挨拶して中へ入ります。

「あっ、おはようございます。今村(いまむら)さんが一番乗りですね」

「えっ、あの二階堂君は?」

「あっ、二階堂さんは昨日の夕方に連絡がありましたので明日からです」

 そうか、二階堂君は私より一日遅かったのか……

「それでは早速ですが、これが前期研修の日程です」

 私は日程表を受け取りました。それによると……

 まず最初の二ヶ月間が内科での研修です。オーベンは西岡(にしおか)先生です。次の二ヶ月間が外科です。オーベンは城戸(きど)先輩になっています。その次の二ヶ月間は整形外科です。オーベンは石井(いしい)先生です。そして最後に精神科です。オーベンは糸井(いとい)先生になっています。残りの四ヶ月は選択と地域医療になっていますが二年目も同じく選択と地域医療です。

「あの、残りの四ヶ月と二年目の選択と地域医療というのは?」

 私がそう訊くと……

「ああ、ここの病院は診療科を決めても手伝いがあったりしてね、午後からは病院に来れない患者さん宅を回ったりする地域医療もあるのでそういうのも学んで頂きます」

「はい……」

 そういう事で早速、内科の医局に来ました。

「おはようございます」

「あっ、おはようございます院長」

「研修医の今村先生です」

「よろしくお願いします」

 そうか、私ももう先生と呼ばれるんですね……

「あれ、二階堂先生は?」

「あっ、彼は……」

「ひょっとして逃げた?」

 いや、そんな事を言うのは可笑しいでしょう!

「いや、医師免許登録済証明書が一日遅れたみたいでね、明日からの研修になります」

「そうか……」

「まあ、逃げるとかはないでしょう」

 二階堂君に限ってそれはないと私は思いました。

「いや、うちの病院はやっぱり無理とか言ってやめる人いるんですよ」

 えっ、そんな人いるの? 私はそれを訊いてまたもや自信がなくなりましたけど……

「それじゃ、今日は西岡先生と外来をやりましょうか」

 どうやら悩んでいる暇は無さそうです。

「はい、お願いします」

 取り敢えず、医師の仕事はどこでも同じようなものだと思います。まあ、街なのか山なのかの違いだけのはずだから……

「今村先生、カルテは電子カルテだから診察前は必ずPCのスイッチを入れてね!」

 電子カルテをクリックすると診療科の選択肢が出て内科外来をクリックすると最初の患者さんのカルテが出て来ます。最初の患者さんは初診のようです。うん、これは便利ですね! 準備も出来て今から外来開始です。私は西岡先生の横に立って見学です。

高田(たかだ)さん一番へどうぞ」

 最初の患者さんが呼ばれました。診察室へは女子高生らしき女の子とその母親らしき女性が入って来ました。

「どうされましたか?」

 女の子の足と手は赤く腫れたように蕁麻疹が出ています。

「これはどうされたんですか?」

「はい、それが……」

 彼女の話では通学時に酷くなるとのことでした。

「うーん、通学はバスですか?」

「いえ、自転車です」

「すみませんが脚と腕をもう少しよく診せて下さい」

 そう言って西岡先生は彼女の太腿から下の脚と腕を診ます。一番酷いところは脚の膝から下が蕁麻疹で赤くなっています。しかし、腕も少しは赤くなっていますが、そこまで酷くはありません。

「うーん、帯状疱疹ではないようだし、何かのアレルギーとかかな」

 西岡先生もちょっと困ってますけど…… でも、これって……

「でも、朝が一番酷いんです。あとは少しずつひいてくるんですけど」

 女子高生はそう言ってます。

「あの、西岡先生これ温めてみたらどうでしょう」

「あの、そんな事したら余計に酷くなるんじゃ」

 彼女の母親はそう言ってちょっと心配しています。

「今村先生は何か心当たりでも?」

「はい、似たような症例を見たことが…… これは寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)ではないでしょうか?」

「なるほど! そうか、スカートで自転車通学だから脚に蕁麻疹が……」

 そういう事で患部に温めたタオルを当て少し温めてみると少し落ち着いたような……

「学校でもお昼過ぎには少し落ち着きませんか?」

 私が確認すると。

「はい、お昼過ぎには赤みが取れてることもあります」

 女子高生もそう言います。

「あの、寒冷蕁麻疹とはなんですか?」

「寒冷蕁麻疹とは寒さや冷たさなどの寒冷刺激に反応して蕁麻疹が出る皮膚病です」

「そうなんだ、それならもう少し早く診てもらえば良かった。最近は暖かくなったからそうでも無いけど、この辺はまだ朝は寒いから」

「車で送っている時はそこまでなかったものね」

 この皮膚病は脚や腕に急な温度変化があって冷やされると皮膚内にヒスタミンが大量に分泌されるのです。確か抗ヒスタミン薬で症状を抑えられるはずですけど、あとは西岡先生にお任せしましょう。

「ではお大事に!」

 そういう事で最初の患者さんが終了しました。いや、最初から大変でした。


 午前中の外来が終わりました。最初の患者さん以外ほとんどの患者さんが年配のお爺ちゃんお婆ちゃんでした。私は医局でゆっくりしてると……

「今村先生、寒冷蕁麻疹はどこで知ったんですか?」

 西岡先生です。

「あれは、大学の先生が寒冷蕁麻疹でした」

 本郷(ほんごう)先生が症状は軽かったけどそれで困ってましたね! 『もう嫌だ』とか言ってたような……

「お疲れ様です」

 あれ、誰か来ましたけど……

「あっ、慶子(けいこ)先生! お昼からよろしく」

 吉岡(よしおか)部長が何かをお願いしてるようですけど……

「はい、良いですよ! 新人借りてって良いですか?」

「ああ、良いよ」

 って、城戸先輩!

飛鳥(あすか)、お昼から地域医療に行くからね! ランチに行こうか」

 そう言って先輩は私を連れて食堂へ行きました。

「さて、何を食べようかな」

「先輩、ここのお薦めってなんですか?」

「そうだね…… それなら定食じゃない! 今日は唐揚げみたいだけど、日替わりだから」

「ふーん、定食か……」

「私はカレーにしよう!」

 先輩はサッとすませるようですけど……

「美味しいですか?」

「ここの料理はなんでも美味しいよ」

 先輩の話では全てがお薦めみたいなので、今日のお昼はカツカレーにしましょう。

「あれ、カロリー上げて来たね」

「だってお昼から地域医療で外に行くなら食べとかないと」

「まあ、そこまで大した事は無いよ! 下界に行く訳じゃないしね」

「下界ですか?」

 フフフ、先輩は微笑んだあと……

「ここは山の上の天界だから、街に下る時は下界に行くって表現になるのよ」

 なるほど…… 面白いですね。

「でも、下界に降りるってそんなにカロリー消費しますか」

「車で往復八十分と用事を済ませてだから二時間以上はかかるかな」

 なるほど…… 下界へ降りるのも大変です。

「でも、初日から地域医療になるなんて事あるんですか?」

「まあ、今日は二階堂先生も来てないからそうなったんじゃない! それに応援頼まれた時に飛鳥を連れて行く事を条件に出したら別に良いよ! って事だったから」

「なるほど、そうだったんですね」

 私達は食事を終えて病院からまだ先の畑野(はたの)地区へ行きます。病院の車の側にはもう一人看護師さんらしき人がいますけど……

「はい、(しずく)ちゃん行くよ!」

「はい」

「えっ!」

 私も南条さんもびっくりです。

「今村先生も行くんですか?」

 南条さんは先輩に訊いていますけど……

「なに、知ってるの?」

「はい、一応同期です」

「あっ、そうか! 雫ちゃんも今年からだもんね」

「はい」

 元気な返事だ事、最初の頃からするとかなり変わったかな、結構人見知りだったはずだけど……

「南条さんは八日から仕事をしてたの?」

「あっ、いえ、その、四月一日からです。今村先生とか二階堂先生には七日と八日しか逢わなかったのでどうされたのかと思っていました」

「あっ、私達は医師免許の登録が終わるまでは医療活動出来ないから休みだったの」

「そうだったんですね」

 そんな話をしながら、私達は先輩の運転で畑野地区の室川(むろかわ)さん宅へ行きます。

「確か、この辺なんだけど……」

 あれ、ここって町内で唯一のスーパーがある所じゃ……

「あっ、あったあった」

 そう言って先輩は室川さん宅のチャイムを押します。

「……」

 返答がありませんけど……

「先輩、お留守じゃないんですか?」

 私はそう言いましたけど…… しばらくすると……

『ガチャ』

 扉が開きました。

「はい、どちらさん?」

 どうやら室川さん本人のようですけど……

「北山総合病院の城戸ですけど」

「ああ、北総の先生か、どうぞ!」

「ねえ、居たでしょう!」

 先輩聞こえますって…… 私達の話を気にもせず、室川さんは私達を家の中へ入れてくれました。

「室川さん、早速ですけど脈拍と血圧を測らせてください」

 先輩がそう言うと……

「ああ、そうですね! よろしくお願いします」

 そう言って室川さんはソファーに座って右腕を差し出します。患者さんは室川悟(むろかわさとる)さん六十二歳です。

「雫ちゃん、測定して!」

 南条さんは先輩の指示どおり血圧を測ります。

「飛鳥、室川さんは認知症だからそのつもりでね」

 先輩は小さい声で教えてくれました。

「はい、介護の方はいないんですか?」

「うん、この時間はいないけどもう少ししたら戻ると思う」

 南条さんは血圧と脈拍を測り終えたようです。

「血圧は上が152、下が96です。脈拍は82です」

「室川さん、また血圧高くなってるよ!」

「先生、違うって! 若い看護師さんに手ば握らるっぎさ、血圧も高うなろうもん」

 えっ、そんな事で高くはならないと思うけど……

「まあ、若い女の子に手を握られるのも久しぶりだろうからね! 今度は私が測るから」

 そう言って今度は先輩が測るみたいですけど……

「まずは深呼吸を十回やってね!」

 室川さんは言われた通り手を真上に上げて深呼吸をします。その後もう一度血圧を測ると……

「うん、今度は136と87だから、まあまあかな」

 先輩ちょっと不服そうです。

「なんで私の時は高くならないかな……」

 そう話している時に『ガチャ』と扉が開く音が……

麻知子(まちこ)さん、お邪魔してます」

「あっ、慶子先生来てたんですね」

「飛鳥、この方は室川麻知子さん室川悟さんの奥さん」

「初めまして」

「飛鳥先生よろしくね」

「はい」

 私達がそう話をしている時、南条さんは先輩の指示で室川さんに簡単な計算をしてもらってます100から7を引いて答えてもらうんですが……

「室川さん100引く7ですよ」

「うーん、子供の頃から馬鹿だったからな」

 いや、だからってそんな簡単な問題が出来ない訳ないでしょう。

「えっと、91!」

 南条さんは「えっ」という表情です。

「続けて!」

 先輩は正解とか関係ないみたいです。

「91引く7は?」

「うーん、86」

「86引く7は」

「えっと89」

 あっ、今度は増えちゃいました……

「雫ちゃん、もう良いよ」

 なんとなく先輩は結果が解っていたみたいです。

「それじゃ、次は……」

 先輩はカードの絵を覚えてもらってそれでどんな絵があったかを答えてもらうテストをしましたけど…… 五問中正解は三問でした。

「はい、それじゃ今日は終わりです。お薬も必ず飲むように」

「慶子先生ありがとう! またね」

 そういう事で今日の地域医療は終了です。

「飛鳥、アイスでも食べない?」

「この辺、何処かで売っているんですか?」

 私がそう言うと……

「今村先生、スーパーがこの先にありますから」

 南条さんにそう言われてしまいました。そうか、そういえば近くにスーパーがにありましたね…… そういう事で、私達はスーパーへ行きましたけど……

「飛鳥どうしたの?」

 これがスーパー? 確かに食料品とか売ってますけど…… これって売店じゃないのと思えるくらい店舗が狭いです。まあ、この辺ではこれで充分なのかな…… これじゃちょっとしたコンビニより狭いかも…… そう思いながらアイスを買って食べます。先輩と私はモナカアイスです。南条さんはソフトクリームみたいなものを買ったみたいです。でも、一仕事終えた後のアイスは格別ですね!


初日は一人だけの研修でした。二階堂君は医師登録が一日遅れたようです。

研修は、午前に内科の外来をして、午後から地域医療に回ってと、大変そうです。

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