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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第一章 橋本大学
5/69

5 自転車部始動!

お待たせしました第5話を更新しました!


今回は自転車部の新歓があります。そこでいろんな先輩方と知り合う事になります。


 今日は土曜日です。大学も自動車学校もお休みですが自転車部の新歓があります。でもその前に購入した自転車を取りに行かないと……

「こんにちは!」

 私達が声を掛けショップへ行くと……

「あっ、いらっしゃい、この間のお嬢さん方ですね! こちらに準備出来てますよ」

 お嬢さんだってなんか照れるな…… 私達が頼んでいたクロスバイクが短髪のイケメンお兄さんによって、きちんと整備され並んでいました。

「うわっ、この間より綺麗になってる」

 私は思わず駆け寄りました。赤色がより鮮やかになっているような……

「あっ、あなたにはこれもですね!」

 私は別に頼んでいた輪行バッグを受け取りました。

飛鳥(あすか)の自転車は前にバッグを付けたの?」

 玲華(れいか)がちょっと羨ましそうです。

「うん、これ取り外せるの、便利でしょう」

 私もちょっと自慢してしまいました。


 私達は頼んでいたクロスバイクを受け取り早速、橋本川の河川敷へ向かいます。橋本川は橋本駅から一條駅方面にちょっと行ったところにあって鉄橋が掛かってます。

「お疲れ様です」

「あっ、お疲れ様。ちょっと待っててね……」

 なんだか様子が可笑しい先輩方ですが……

「飛鳥お疲れ」

 看護科の郁美(いくみ)です。

「お疲れ様、何かあったの?」

「うん、顧問の先生が急に手術になって来れなくなったから道具と食材を他の先輩が取りに行ってるの」

「手術って急患って事?」

「うん、そうみたい」

「大丈夫なのかな?」

 玲華も静香(しずか)遥香(はるか)も私のそばへ来ました。

「まあ、こういう仕事は仕方がないわね」

 玲華は淋しそうに俯いて言いました。

「そうか、玲華のお父さんやお母さんもそうだよね」

「そうね、たまに一緒に遊んでいても急患が入るとそこで終わりになるの、私が幼い頃はそれがね……」

 玲華はその頃のことを思い出しているみたいです。私にはそんな経験はないけど…… でも、その淋しい気持ちは分かるかな……

「皆んなお待たせ! 道具と食材持って来たわよ」

 先輩が車で河川敷までやって来ました。どうやら先生だけが来れないみたいです。

「それじゃ、道具を降ろすの手伝ってね」

 先輩達から声を掛けられ私達も手伝います。

「あの、この車って先輩のなんですか?」

 黒いSUVから降りて来た先輩に静香が訊いていますけど……

「ううん、私のじゃ無いわよ! こんな大きいのはいらないかな」

 そう言われてしまいました。

「この車は桐生(きりゅう)先生のだよ! 急に手術になったから城戸(きど)さんにお願いして車を持って来てもらったんだ」

 そう言うのは男性の先輩です。

「それって、桐生先生も来るって事ですよね?」

 思わず私が訊いてしまいました。

「そりゃ、来るでしょうね! 先生は自転車部の顧問だから」

「えーっ! そうなんですか?」

 私達五人は一斉に声を上げてしまいました。

「えっ、ひょっとして知らなかったの?」

 城戸先輩は小首を傾げながら訊いています。

「はい」

 またもや五人揃って返事をしてしまいました。

「へぇー、そうなんだ! 大概新入生は先生目当てで入部する人が多いんだけど…… 今年は違ったみたいね」

「でも、城戸はそっちだったよな」

 城戸先輩は苦笑しながら……

「もう、昔の話でしょう」

 そんな話をしながらまずはバーベキューの火起こしをします。火起こしは男性の先輩が二人掛かりでやっていますが……

「ちょっと、全然駄目じゃない!」

 城戸先輩は火起こし組の男子に言っています。

「そんな事言ったって今までは先生がやってくれてたから……」

「それじゃ、どうするのよ!」

 男子の先輩も城戸先輩も困っています。火が起こせないと……

「先輩、ちょっとすみません」

 松坂(まつざか)君がそう言って小枝や木葉を集めて来たみたいです。どうやら松坂君が火起こしをするみたいですけど……

「君、大丈夫なの?」

 城戸先輩はちょっと心配そうですけど……

「大丈夫です」

 自身たっぷり言う松坂君ですけど、なかなか火が点きません。あと少しなんだけどなぁ……

「しょうがない、奥の手を使うか……」

 そう言ってなにやらバッグの中から何かを取り出しました。

「カチッ、カチッ」と音がしたかと思ったら「ボーッ」というバーナーの音が…… 松坂君はとっておきの飛び道具を持っていました。

「凄いな君!」

 男子先輩はホッとしているようですが……

「そういう便利な物を持ってるなら最初から使いなさいよ」

 城戸先輩、そんな事言わないであげて……

「でも、松坂君はなんでそんなのを持ってるの?」

 遥香は不思議そうです。

「バーベキューをするって事だったからいざという時に使えるかなってね」

「こういうの好きなの?」

「ああ、アウトドアはちょっとやってたから! トーチバーナーはあると便利なんだよ」

 トーチバーナーって言うんだ。たまに飲食店で食材の表面を炙ったりする時にも使われてるよね! 私達は松坂君の違う一面を見たような気がしました。その後、準備が出来て始めようとした時でした。

「あっ、遅くなってすまなかった」

 桐生先生がクロスバイクで到着です。

「先生、患者さんはいいんですか?」

「ああ、手術は無事終わったからな! おっ、ちゃんと火が点いてるじゃないか」

「あっ、それは一年生の彼が点けてくれたんですよ」

「ほう、そうか凄いな!」

 桐生先生はそう言って関心してるみたいです。

「これを使えば誰だって点ける事は出来ますよ」

 松坂君はちょっと謙遜してますね。

「ほう、それは頼もしい道具だな! 私も今度準備するとしよう」

「先生、手術は大丈夫だったんですか?」

 静香が気になったようです。

「なあに、急性虫垂炎で大した事はなかったんだが、手術をしないと腹膜炎を起こすからな、そうなると面倒なんだよ! まあ手術時間は三十分くらいで終わったんだがね」

 その話を聞いた先輩達は神妙な面持ちでしたが、私達一年生は手術時間が三十分だったという事に感心していました。

 そうこうしているとお肉も野菜もいい具合に焼けて新歓が始まりました。

「皆んなビールで良い?」

「あっ、私は車で病院へ戻らないといけないから烏龍茶にするかな、城戸君の自転車は皆んなと同じところに停めてあるから」

 桐生先生は、まだ仕事が残ってるようです。

「先生は今日当番なんですか?」

「いや、手術をしたクランケが心配だからな」

 先生はお休みの日なのに大変です。

「一年生はビールで良いかしら」

 城戸先輩にそう訊かれて……

「すみません、私はアルコールは駄目で……」

 私が飲むとコップ半分でグロッキー状態になるのでここはやめておきます。ちなみにコップというのはジョッキみたいに大きいものではなくて小さいグラスのことですよ!

「なに、飛鳥はアルコールだめなの? 全く可愛い事言って」

 静香にそう言われてなんだか恥ずかしい私です。でも、玲華をはじめ他の一年生は結構イケる口のようです。でも私達一年生はまだ十九歳だよね……

「それじゃ、あなたはコーラでいいかしら」

「はい、ありがとうございます」

 そう言って乾杯をした後、自己紹介です。その後はバーベキューを皆んなで食べますが、中山(なかやま)先輩がホルモンを焼きながら……

「そう言えばさ、二年生の時にやった解剖実習の脂肪に似てるな、これ……」

「ちょっと中山君、何言ってるの」

「えっ、似てないかな? あれって削ぐように上手く剥がさないと血管やら神経を切っちゃうから大変なんだよな」

「もう、脂肪はもっと黄色かったでしょう」

 迷惑そうに言っている城戸先輩も話に乗って来てるような……

「そうだな、なんとなくスクランブルエッグのような感じかな…… 君達も二年生になったらやらなきゃいけないからね!」

 中山先輩と高木(たかぎ)先輩は笑いながら言ってます。今年三年生の先輩は……

「あれはピンセットでつまみ上げてメスで削ぎ落としたかな……」

「まあ、そんな感じだったかな」

 などと先輩方は話しています。

「もう、皆んなバーベキューの時に話す事じゃないでしょう」

 城戸先輩は苦笑いですが、私達一年生は、ちょっと微妙な顔です。松坂君に至ってはちょっと顔色が悪いかも…… でも、来年はどっちにしてもやらなければならない実習なのです。私はちょっと楽しみなんですけど…… そんな私は変ですか?


新歓がバーベキューとはちょっと変わったサークルですけど自転車部は恒例行事のようです。しかし、そこで話される内容は流石医学部と言ったところでしょうか……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新入生歓迎でバーベキュー。いいですね、なんだか懐かしいです。 私の大学の時は、地域的なものもあってお花見が新歓でした。こちらは桜の咲く時期が4月中頃から末ですからね…。 急患はなかなかね…
2021/05/24 06:19 退会済み
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