43 国家試験と卒業
お待たせしました第43話を更新しました!
いよいよ国家試験です。カッキーや谷崎君が言っていた禁忌肢の問題に注意しないといけません。卒試よりも国試の方が簡単なはずなんですけどね……
いよいよ、大学最後の試験、医師国家試験です。試験は二日間あります。科目としてはA各論、B必修、C総論があってその中に一般問題と臨床問題と長文問題があるようです。問題総数は四百問、これを二日間で解きます。それと谷崎君が言っていた禁忌肢の問題がこの中に含まれているんでしょうけど……
「飛鳥、これに合格出来れば医師になれるんだからね!」
玲華は緊張しているのかそんな事を言います。
「うん、私も頑張るよ」
私も、かなり変ですよね! いよいよ試験開始です。午前はA各論が十二時まであります。その後食事を挟んでB必修とC総論が夕方の六時半くらいまであります。なんだかもうグッタリです。
「はあ、終わった!」
私はちょっと早めに終わったので一人でホテルへ行きます。私が試験会場を出る時、玲華はまだ問題とにらめっこしてましたからね!
「今村、どうだった?」
「二階堂君、まあなんとか大丈夫だと思う」
「禁忌肢と思えるのがB必修に一つとC総論に二つあったようだが」
「うん、私もそれは見つけた。梨菜達は?」
「さあ、俺が会場を出る時はカッキーはまだいたようだけど冬野は見なかったな」
梨菜はたぶん先にホテルにいるかもしれませんね。そういう事で私と二階堂君は一緒にホテルへ戻ります。ホテルといってもラブホテルじゃ無いですよ! 安いビジネスホテルに今日はみんなでお泊まりです。私達の大学の近く橋本市や城南市には国家試験を受ける会場が無いので隣県まで試験を受けに来ています。みんなでお泊まりですけど、あんまり楽しくは無いですね、明日も試験がありますから…… 私と二階堂君がホテルに着いた時は梨菜と玲華は戻っていました。
「玲華、どうやって戻って来たの?」
玲華より私が会場を先に出たはずなのに。
「あっ、丁度梨菜と静香と一緒になったから割り勘でタクシーで戻って来たの」
なるほどね……
「食事はどうしようか?」
「みんな戻ってからで良いんじゃ無い」
そういえば、カッキーも生田君も美咲もまだ戻ってないです。私達はお喋りをしながらみんなが戻るのを待っていましたけど、みんなが戻って来たのは七時前くらいでした。
「カッキーは最後まで粘ったのね」
梨菜が一言。
「だってドボンらしき問題があって迷っていたら、いつの間にかみんないなくなってるんだもん」
「とにかく、早く飯食って寝えようぜ! 今日は疲れた」
松坂君そう言えば元気が無いですね。私達はそれぞれ近くのファミレスで食事をした後、部屋に戻り、明日の試験勉強をします。
「飛鳥、まだやってるの?」
「うん、なんとなく落ち着かなくて」
「でも、早く寝んだ方がいいよ」
「うん」
みんな普段と違いますね。私もちょっとナーバスです。
翌日も朝から試験です。昨日と同様、今日も夕方六時半まであります。はあ、気が重いです。
朝九時半からD各論を昼まで受けて、昼食を挟んでからE必修を受けて、今はF総論の長文問題をやっています。これが終われば終了ですが…… これって何だか可笑しいんですよね。答えはeで良いのかな? でも、そうなると…… やっぱり違いますね。そう思った時です。
「はい、そこまでです!」
あっ、終わってしまった! 一問長文を残してしまいました。慌ててeの解答をしようと思いましたがやめました。何だか怪しい問題でしたので、私の頭の中で禁忌肢という言葉が過ぎったのです。まあ、四百問中の一問くらい良いかな! でも、なんだか心残りではあります。
私は会場を出て、待ち合わせのロビーに降りて来ました。
「飛鳥は最後までいたの?」
「うん、一番最後の問題がちょっと可笑しくて」
「あっ、それは私も迷った。答えはeだと思うんだけど、でも、そうなると可笑しいんだよね」
遥香もそう言います。
「それで飛鳥はどうしたの?」
「時間が無くなって、それは残した」
「えっ、残したの?」
「だって、時間切れなんだもん」
私が玲華にそう言っていたら……
「それは残して正解だったかも知れないよ」
谷崎君がそう言います。
「なんでよ、解らなくても何か書くべきでしょう」
「でも、そういう可笑しい問題は禁忌肢の可能性が高いんだよ」
「谷崎君は最後の問題はどうしたの?」
梨菜もちょっと気になったのか訊いています。
「僕は…… 今村さんと同じように解かなかった」
「それが正解なの?」
美咲やカッキーも話に加わります。
「可笑しいと思ったなら、間違ってドボンになるより無回答にした方が良いかも知れないね」
うーん、何だか気になりますけど、こればかりは解りませんね!
「合格発表のあとに成績表が郵送で届くはずだから解ると思うよ」
何だか谷崎君って余裕だね。
これで私達の試験は全て終了しました。後は卒業式を待つだけです。
「飛鳥、卒業旅行だけど三月五日に決まったけど大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だよ! 他には誰が行くの?」
「えっと、静香と遥香だけよ」
「えっ、卒業旅行ってどこに行くの?」
梨菜が話に加わります。
「清川温泉に勉強疲れを癒しに二泊で行くのよ」
「えっ、それ羨ましい……」
梨菜と、カッキーには話して無かったもんね!
「玲華、あと二人くらいなんとかならない?」
駄目元で私が訊きますけど……
「飛鳥がそう言うと思って、あと三人はOKよ!」
「カッキー、一緒に行こうか!」
「うん、飛鳥も玲華も梨菜とも研修先が違うから最後に一緒の旅行だね」
「それじゃ、あと一人だけど…… 二階堂君来る?」
「おい、行ける訳ないだろう! 大体部屋を別にしないとまずいだろう」
「あっ、私は構わないけど」
いやいや梨菜、そういう訳にはいかないでしょう。
「それじゃ、飛鳥と梨菜と二階堂君が一緒の部屋になれば良くない」
「ちょっと待て、可笑しいだろ! 俺は行かないからな」
二階堂君は顔を真っ赤にしてそう言います。まあ、そうでしょうね……
「無理しなくて良いのに」
玲華、そういう問題じゃないよ……
「でも、二階堂君が来てくれたら楽しいかな!」
私も、ちょっと本音が……
「今村、気持ちは嬉しいが、やっぱり無理だ!」
「それじゃ、飛鳥と二人だったら良いんじゃない?」
玲華、もう良いよ。
「もう、可哀想だからやめて」
私がそう言うと……
「もう、冗談が通じないんだから」
いや、玲華は半分以上本気だったと思う。でも、梨菜も何だか残念そうです。そういう事で女子六人は清川温泉に卒業旅行です。
でも、卒業まで私と二階堂君は外科の練習がありますからもうひと頑張りです。
「ねえ、玲華も一緒に外科の練習しない」
「えっ、私も行って良いの?」
「たぶん良いと思うけど……」
でも、大平准教授に一度訊いた方が良いかな?
二階堂君から大平准教授にこの事を訊いてもらったら別に構わないという事でしたので玲華と梨菜、そしてカッキーも練習に行く事になりました。
「今日はみんなで練習に来てくれてありがとう! 今日は気管挿管をこの人形を使ってやりましょう。二人組になって交代で挿管します」
気管挿管とは緊急時や全身麻酔での手術の時によく行われます。まず器材の準備とチェックを行います。その後、スニッフィングポジション即ち挿管しやすい体位をとり喉頭鏡を使って挿管します。
「柿本さん喉頭鏡の向きが逆、ブレイドは患者さんの下向きにして渡してください」
「はい」
声門が見えました。チューブを入れます。
「先生、チューブが声門を通りました」
「うん、それじゃスタイレットを抜いてカフを入れたら固定して終了だ! あとは五点聴診して片肺挿管とか食道挿管になってないか確認して下さい」
五点聴診とは左右の前胸部、左右の側胸部、心窩部を聴診する事です。
「先生終わりました」
「はいそれじゃ交代して」
今度はカッキーが挿管しますけど…… カッキー喉頭鏡突っ込みすぎ! 本物の患者さんだったらオエっとするかも……
なんとか今日の練習は終わりました。
「挿管って結構難しいよね!」
カッキーがそう言うと玲華も梨菜も一堂に頷きます。
「飛鳥は簡単にやってたよね」
「そんな事ないよ、結構難しかったよ」
私は意外とスムーズに出来たのでカッキーはそう思ったのかも知れません。
「飛鳥は結構器用だからね」
玲華も梨菜もそう言うけど……
「如月もかなり上手かったと思うがな」
そう、二階堂君は玲華と一緒でしたね。こうして私達は卒業まで練習を続けました。
三月一日、卒業式です。長かった大学生活もこれで終わりです。私の今日のコーデは黒いワンピースにグレーのボレロと黒いパンプスを履いています。玲華達は羽織袴で出席ですね! 本当は大学を卒業した後、性別適合手術をするはずだったんですけど…… まあ、手術出来る病院は解っているのでそのうちで良いかな、医師になれば手術代も自分で稼げますからね!
今日は母も姉も卒業式に来てくれました。母はハンカチで涙を拭いて感無量といった感じです。式のあとはお世話になった先生達と記念撮影です。
「飛鳥、みんなで写真撮ろう!」
そういう事でみんなで写真撮影ですけど、なんで本郷先生がいるの?
「楓ちゃんちょっと待って! まずは学生だけで撮るから」
「あら良いじゃない一緒で」
まったく困ったものです。
「本郷先生はこの後一緒に入って下さい」
私がそう言うと……
「仕方ないわね、桐生先生も一緒に撮りましょう」
そんな事を言ってます。まったく、本郷先生が言う事じゃないですよね!
「ああ、すぐに行く」
桐生先生もそう返事をしてますけど、何だか格好つけてますね……
「飛鳥、やっと大学卒業だね!」
姉からそう言われました。
「うん、六年間は長かったけど充実してたかな」
「ところで一緒の人達も良いところのお嬢さんとかなの?」
「さあ、どうだろう? 病院を継ぐために来てる人もいたけど、ただ医師になりたい人も多いみたい」
まあ、皆さん高級車で来てる人が多いからね! うちよりか裕福だとは思いますけどね!
「飛鳥、病院はいつから入院なの?」
母からそう訊かれました。そう言えば母には手術延期の話をしていませんでした。
「あっ、お母さんその事なんだけど……」
「どうかしたの?」
「病院の研修が意外と早く始まるから手術は延期にしたの」
母はガッカリすると思っていましたけど、なんだか安心したような、ホッとしたようにも感じました。
「そうなのね、仕方がないわね、でもそういう事はちゃんと教えなさい」
そう、言われてしまいました。
「それで、家にはいつ戻って来るの?」
「えっと、五日から清川温泉にみんなで行って来るから、後片付けをして十日には一度戻るから」
「解ったわ、それじゃ荷物も運ばないと」
「あっ、それは業者さんに頼んで北山町に送るから」
「送るからって、どこに送るの?」
「えっと、総合病院のアパートがあるからそこに」
私がそう言ったあと、母の話では北山町の祖父母の家にという話があったようです。でも、病院の研修も勤務にしても時間が不規則なのでちょっと無理です。
「あと、お爺ちゃんが車を買ってくれるそうよ」
「えっ、お爺ちゃんが?」
「ええ、仕事をするなら車がいるだろうからって……」
「うん、あとで連絡するから」
「まったく、お爺ちゃんは飛鳥に甘いんだから」
「お姉ちゃんはお父さんに買ってもらったでしょう! それに私は夏休みにバイトして少しは貯金してるから」
そんな話をしていたら話辛そうに玲華が私の側にいます。
「あっ、玲華、どうしたの?」
「みんな待ってるから……」
あっ、そうでした。これからまた集まるんでした。
「お母さんごめんみんな待ってるから」
そういう事で私の大学生活は卒業とともに無事終了しました。
国家試験も無事に終わり長かった大学生活も卒業です。春からはみんなと別れ二階堂君と北総で研修が始まりますけど、その前に卒業旅行です!




