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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第五章 卒業試験と国家試験

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39/69

39 北山総合病院

お待たせしました第39話を更新しました!


飛鳥は前期研修先になった北山総合病院へ面接に行くことになりました。


 私は今、北山総合(きたやまそうごう)病院のパンフレットを見ています。来週面接という事でしたからね!

飛鳥(あすか)、何見てるの?」

 玲華(れいか)が覗き込んできますけど……

「北山総合病院?」

「うん、面接だって!」

「面接?」

「うん、私の場合地域医療枠だから試験とか無いみたい」

 玲華は唖然とした顔をしてますけど……

「初期研修をするのに試験は無いよ! 私もいくつかの候補は提出してるけど」

「えっ、そうなの?」

 私はなんだか恥ずかしい感じです。玲華の話だと前期研修は他の大学病院や総合病院の協力で研修をする事になってるようです。勿論、橋本(はしもと)大学病院で研修も可能なんですけどね!

「それで、玲華は何処に行くつもりなの?」

「私は城南医療(じょうなんいりょう)センター、城南中央(じょうなんちゅうおう)病院、北山総合病院と橋本大学病院」

 玲華は平然と言いますけど……

如月総合(きさらぎそうごう)病院へは行かないの?」

「行く訳ないでしょう! 私が研修に行って迷惑するのはオーベンの先生だよ!」

「えっ、なんでよ」

「当たり前でしょ! 病院の娘が研修に来てまともな研修をさせてもらえると思う?」

 あっ、そうか、そうだよね……

「まあ、確かにそうだね……」

「兄貴のときもオーベンの先生からチヤホヤされてさ、あんなの研修でもなんでも無いよ」

 玲華は研修が終わってからも如月総合病院へ戻るつもりはないかな……

「でもさ、私が北総(きたそう)に決まればまた飛鳥と一緒だね!」

「北総って、早速略してるけどあんな山間の病院を何故候補にしてるの?」

「だって城戸(きど)先輩がいるでしょう!」

「そりゃそうだけど、近くにコンビニとか無いよ」

「えっ、マジ……」

「それに、まえに城戸先輩から訊いたけど、かなり人手不足だから大変だって話だけど」

「そうなの? やっぱり街の病院が良いかな……」

 まあ、私も玲華が一緒なら嬉しいけど、あの辺はなんにも無いところだもんね! 一度お爺ちゃん家に泊まりに行ったけど街灯も少ないし、スーパーは七時に閉まっちゃうし、バスだってコミュニティバスが一日五本くらいしかないし、さっき玲華にも言ったけどコンビニが無いんだよね…… 病院研修が終わって弁当とか買おうと思っても車で三十分行った北山大学病院の手前くらいまで行かないと無いんだよね…… 結構不便なところです。まあ、そうは言っても私はそこに九年間はお世話にならないといけないんですよね……


 水曜日、私は城南駅に来ています。ここからバスで北山宿(きたやましゅく)行きに乗りそこからタクシーで北山総合病院を目指します。バスはすぐに来ましたけど小さいバスですね、マイクロバスよりも小さいんじゃないかな……

「あの、すみません北山総合病院へ行くには何処で乗り換えた方が良いですか」

 一応、運転手さんに聞きました。

「ああ、北総に行くんだったら北山大学病院で降りて北山町役場(きたやままちやくば)行きのコミュニティバスに乗れば病院の玄関前まで行ってくれますよ」

「そうですか、有難うございます」

 なんと、このバスは北山大学病院を通るようです。高校の時こんな小さいバスは乗った事なかったですね…… 私は空いている座席に座ると……

「あんた、北総に行くと?」

 知らないおばさんに声を掛けられました。

「はい、そうですけど……」

 このおばさんなんだろう? ちょっと警戒してしまいました。

「大学病院で五分でコミュニティバスに乗り換えられるよ」

 なんと、そう教えて頂きました。

「あっ、すみません有難うございます」

「全然良かよ」

 このおばさん、とても親切な方でした。この人も北山総合病院に行くのかな? そしてバスは北山大学病院に到着しました。あのおばさんは降りないようです。私はバスから降りてコミュニティバスの時間を確認します。するとあのおばさんが言うように五分後にバスが来るようです。

「あれ、飛鳥君?」

 えっ、私は声がする方に顔を向けます。そこには上杉(うえすぎ)先生がいます。

「上杉先生! おはようございます」

「どうしたの?」

「あっ、北山総合病院へ行きます」

「えっ、北総に?」

「はい、前期研修が北山総合病院に決まって来るように言われたので」

「そうか、飛鳥君ももう卒業なんだね」

「はい」

 そう話をしている時ワゴン車が来ました。えっ、これなの?

「それじゃね、飛鳥君」

 ワゴン車は私の前に止まりました。入口のところに北山総合病院と北山町役場と行き先が書かれたプレートが付いています。これに乗れば行ってくれるんですよね! でも、乗っているのは年配のお爺ちゃんとお婆ちゃんが三人乗っています。ワゴン車は私を乗せると山の方へ走って行きます。相変わらず山間の狭い道を縫うように走って行きます。ワゴン車は三十分ほど走って北山総合病院に到着しました。はあ、やっと着きましたね、乗っていた人達はほとんどの人がここで降りました。ここが、私の研修先ですか! そう思い病院の中へ入ります。

「おはようございます。橋本大学から来ました今村飛鳥(いまむらあすか)です」

 受付でそう言うと…… 受付の事務のお姉さんは内線で連絡しているみたいです。

「お待たせしました。そこのエレベーターから五階に行ってください。五階に着いたら右側突きあたりの院長室へ行ってください」

 私は受付の側にあるエレベーターで五階の院長室を目指します。流石に病院のエレベーターは広いです。車椅子とかも乗るでしょうからね。五階に到着して院長室の前まで来ました。

『コンコン』

 私がノックをすると「はい、どうぞ」と中から返事がありました。

「失礼します。橋本大学から来ました今村飛鳥です。よろしくお願いします」

「ようこそ、清済会(せいさいかい)北山総合病院へ、駐車場は空いていましたか?」

「あっ、いえ、バスで来ましたので……」

「そうですか! 大変だったでしょう。バスの本数は少ないし、乗り換えとかも解り辛かったでしょうから」

「あっ、いえ、城南駅からスムーズにバスがありましたので」

「そうですか、さあ、お掛けください」

 そう言ってくれたのは少し背が高く白髪混じりのダンディな男性です。

「初めまして清済会北山総合病院院長の鳥越隼人(とりごえはやと)です」

「はい、初めましてよろしくお願いします」

 早速、病院の説明が始まりました。

「うちの病院は北山大学病院の関連の病院ですけど、実際は清済会系の病院です。ただ医師不足のところもあるので関連の大学病院から応援に来て頂いている先生もいらっしゃいます」

 何だか医療法人も複雑ですね……

「今村さんは地域医療枠で大学に入学されたんですよね」

「はい」

「それじゃ、理解されてるとは思いますけど研修期間を含めて九年間うちの病院で医療活動をして頂く事になりますけど大丈夫ですか?」

 大丈夫もなにもそうしなければ大学の学費をすべて払わないといけなくなりますからね! 私はなるべく表情を変えないように……

「はい、大丈夫です」

 一応そう答えておきましょう。

「それと、研修は国家試験に合格して登録済証明書が届いてからになりますが四月の七日と八日は医療法人清済会の入社式に出てもらう事になるんですけど……」

 四月の七日と八日ですか…… 手術をしてから二十二、二十三日目にあたりますね……

「あの、これはどうしても出席した方が良いんでしょうか?」

「何か予定がありますか?」

「はい…… 春休みに手術を考えています」

「あっ、GIDの?」

「はい」

「そうですか…… うーん」

 鳥越院長はちょっと困ったような顔をしています。

「本来なら容認したいのですが…… こればかりは私の一存では決められなくて、清済会の役員に君がGIDである事を話さなければなりません。あんまり関係ない人に話す事ではと思っていたんですが……」

 なるほど、確かに滅多に合わない人には話したくないかな……

「解りました。手術の件は病院の方と話してみます。術後二十日くらいで退院もしくは外泊が出来るかどうか」

「ええ、よろしくお願いします。では先生方に紹介しますのでこちらへ」

 私は鳥越院長に連れられ外科の医局に来ました。

「皆さんお疲れ様です! 来年度の研修医を紹介します。今村飛鳥さんです」

「あっ、飛鳥! やっぱりここになったんだ」

「あれ、城戸先生はご存知なんですね」

「あっ、はい。大学の後輩です」

 城戸先輩は外科医として勤務されてるみたいです。私とは四年違いますからもう研修は終わっているんですよね。

「今村さん、噂は大平(おおひら)准教授から聞いてますよ! 期待してますからね」

 えっと、この人は誰でしょうか?

「外科部長、まずは自己紹介が先でしょう」

「あっ、そうでした。失礼しました。私は外科部長をしています山田拓弥(やまだたくや)です。よろしく」

「よろしくお願いします」

 その後私は内科、整形外科、精神科へと連れて行かれました。

「あっ、今村飛鳥さんですね、案西(あんざい)先生から話は聞いています。よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

 河合勝利(かわいかつとし)先生は精神科部長の先生で、今後私はこの先生にお世話になるんだろうと思います。

「河合部長もご存知でしたか!」

「あっ、いえ私は今津赤十字(いまづせきじゅうじ)病院の案西先生に聞いていたので、有力候補だって!」

 どういう事でしょうか? 大平准教授も案西先生もなんだか勝手な事を言ってるみたいですけど…… その後、病院内をいろいろと案内してもらい私の面接? は終わりました。

「飛鳥、時間ある?」

 城戸先輩に声を掛けられ昼食に誘われました。

「好きな物頼んで良いよ! ご馳走してあげる」

「有難うございます。でも先輩仕事は大丈夫なんですか?」

「うん、今のところはね! 何かあればこれが鳴るから」

 先輩は胸ポケットに入れているPHSを見せます。

「これってまだ使えるんですか?」

「うん、一般的には無くなっちゃったけど、医療用はあと二年くらい使えるかな…… でも、来年度からうちの病院も医療用のスマホになるみたいだよ」

「でも、電磁波の影響とか無いんですか」

「今のスマホはPHSと変わらないくらい微弱なんだって、だから今度からは電子カルテを見に医局やナースステーションまで行かなくても良いんだよね」

「スマホで見れちゃうんですか?」

「そういう事!」

 なるほど、それは便利ですね。

「ところで飛鳥、手術はやっぱりしないの?」

「それが……」

 そうでした、それを山岡大学(やまおかだいがく)病院に聞かないといけません。

「どうしたの? 何だか急に元気が無くなったようだけど」

「それが……」

 私は大学卒業後の手術の件と入社式の件を城戸先輩に話しました。

「そうか…… それはちょっと厳しいかな」

「やっぱり無理ですよね……」

「飛鳥、今回は延期した方が良いんじゃない」

「うーん……」

「無理して飛鳥の身に何かあったらそっちの方が心配だよ!」

 先輩にそう心配されました。まあ、確かにそうですけど…… そうなると今度はいつ手術出来るのか…… 取り敢えずこの事は山岡大学病院の馬場(ばば)先生に要相談ですね!


飛鳥の性別適合手術に黄色信号です。果たして手術をする事は出来るのでしょうか……

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