20 告白
お待たせしました第20話を更新しました!
今回はいよいよ恵美子ちゃん登場です。飛鳥はちゃんと言えるのかな?
七月中旬、解剖実習もいよいよ大詰めです。今は実際の臓器を取り出して大きさや形なんかを観察しています。この頃になるとみんな慣れたもので手際良く作業を進めています。ほんの数ヶ月前まではみんなおっかなびっくりで作業してましたけど、慣れというのは凄いですね! 実習が終わったあとは、ちょっと遅めの昼食を食べながらいつもの反省会です。
「私達って臭ってないかな?」
梨菜が何を思ったのかそう言います。
「確かにホルマリン臭ってなかなか取れないよね!」
カッキーも頷きます。
「俺なんか風呂に入っていてホルマリンの臭いがしたからな!」
「あっ、二階堂君それ解る! 私もお風呂に入っててなんでホルマリンの臭いがって思ってたから」
別に二階堂君に合わせた訳じゃないですよ!
「私もそれは思った…… けどなんとなく言えなかったんだよね、でもみんなそうなんだよね」
梨菜もそう思っていたみたいです。
「でもさ、なんでお風呂で臭うのかな?」
「カッキーそれはホルマリン臭が染みついた身体でお風呂に入ると身体が温まり毛穴が開く事でふわっと臭うんだよ」
生田君がそう言います。
「なるほど…… でも、困るんだよねバスで帰るから、バス停はまだ良いけどバスの中はちょっと……」
「確かにね、その点飛鳥は近くだから良いよね」
梨菜とカッキーからそう言われましたけど、それって私だけじゃないと思うけど……
「でも、スーパーに買い物に行く時は気が気じゃないよ! 食料品売り場とかで変な目で見られてないかとか」
「そうか、でも玲華はやってくれないの?」
「作る人が行かないと、それに玲華も同じ日に実習してるしね!」
なんだか反省会と言うより座談会になってますね!
「それより花火大会があるの知ってる?」
美咲です。
「えっ、どこであるの?」
「橋本川の下流の方で上がるらしいから河川敷から見えるんじゃないかな」
「それじゃみんなで行こうよ!」
カッキーは行く気満々です。
「それじゃ、玲華達の班も誘って良いよね!」
「そうだな、みんなで行った方が楽しいから」
そういう事で今度の土曜日はみんなで花火大会です。
大学の帰り、いつも通りスーパーに寄ります。でも梨菜が言う臭いが気になります。周りを見ますけど、問題は無さそうです。さて、今日は何にしようかな? 鯖が安いですね! 鯖の味噌煮とか美味しそうです。生姜で鯖の臭いを取って…… 私の臭いも生姜で取れないかな?
「あっ、飛鳥」
「玲華!」
「今日の夕ご飯は何にするの?」
「鯖が安いから三枚におろして味噌煮にしようかなって思っているけど」
「あっ、青魚は良いんじゃない」
そういう事で玲華公認の鯖の味噌煮とポテトサラダになりました。
「あっ! そうそう、花火大会を自転車部で見ようかって城戸先輩が言ってたけど」
「えっ、そうなの?」
「なに、二階堂君と二人で見るつもりだった?」
私は苦笑しながらも……
「いや、そうじゃなくて私の班と玲華の班で見に行こうかって話」
「ふーん、そうか」
玲華はちょっと考えたようにして私に話しかけます。
「それじゃ、みんなで行こうよ! 城戸先輩には話しとくから、それに良く見える穴場もあるらしいから」
玲華の話ではそういうちょっとした秘密の隠れ家みたいなところがあるようです。
そんな話をしながら私達は部屋に戻って来ました。夕飯の支度をしますけど……
「飛鳥、これちょっと多くない」
確かに、安いからといって鯖一匹はちょっと多かったです。どうしようかな……
「あっ、そうだお隣にお裾分けしょうか!」
「あっ、そうだね! 桐生先生も一人だし良いかもね」
そうと決まれば作った鯖の味噌煮をタッパーに入れて私が持っていきます。
『ピンポン』
軽快にチャイムを鳴らしますが中からは返事がありません。もう一度だけ……
『ピンポン』
やっぱり返事がありません。まだ、大学から戻られていないようです。
「何か用かな?」
「えっ!」
背後から声が聞こえて、ちょっと驚いてしまいました。
「おいおい、そんな幽霊でもみたように驚かなくてもいいじゃないか」
「あっ、お疲れ様です! 先生、これ作り過ぎちゃったので良かったら食べて下さい」
私はタッパーを先生に差し出しました。先生はタッパーの中を見て……
「鯖の味噌煮か美味しそうだ、ありがとう。これ今村が作ったのか?」
「はい」
先生は嬉しそうに受け取ってくれました。
「あっ、今村! 自転車部で花火大会を見る話聞いてるか?」
「はい、玲華から…… でも二年の同じ班の人達からも誘われていて……」
「うん、もしよかったらうちの部と一緒でも良いんじゃないか」
「はい!」
そういう事で今度の土曜日はちょっと楽しみです。
私達も食事を終え後片付けをしてる時……
「飛鳥、お風呂先に良いかな?」
「うん、良いよ!」
珍しく玲華がそう言いますので心良く先に譲りました。今日は見たいドラマはないようです。後片付けも終わりリビングでゆっくりしてると、私のスマホが突然鳴りました。慌ててスマホを取ると……
『飛鳥さんお久しぶりです!』
恵美子ちゃんです。
「恵美子ちゃんどうしたの?」
彼女はひと呼吸おいて……
『飛鳥さん、私、カリフォルニア大学生物科学部に合格しました』
「えっ!」
私は突然の事で驚いてしまいました。
「お、おめでとう」
ようやく理解した私はお祝いの言葉を言いました。
『私もこれで女子大生ですよ!」
なんだか相変わらずの恵美子ちゃんです。でも、二階堂君の事を話さないと、そう思いますが言葉が出ません。
「恵美子ちゃん、よく合格出来たね」
私はなんでこんな上から目線な事を言うのかな……
『それはたぶん、マイクのおかげかな…… あっ、マイクは今、お付き合いしている男の子なんですけど…… 飛鳥さんには早く言わなきゃと思ってはいたんですけど……』
流石の恵美子ちゃんも最後は声が小さくなってしまいました。
「恵美子ちゃん……」
『飛鳥さんごめんなさい! でも、やっぱり身近で支えてくれる人が恋しくて……』
「恵美子ちゃん、ごめん私も今お付き合いしている人がいるの……」
『えっ、それって女の人ですか?』
「ううん、男の人…… 背が高くて凄くカッコ良いの!」
『へえーっ、なんか意外ですね! 飛鳥さんは男の人は無理だと思っていたから』
「うん、私もそう思ってた。マイク君はどんな人?」
『マイクも背が高いですよ。195センチくらいかな、キスするときは爪先立ちしないとだから、マイクが少ししゃがんでくれれば良いのにさ!』
「えっ、キスしたの?」
「飛鳥さん、こっちでキスは挨拶代わりですよ』
そりゃそうだけど、お互い口でする訳じゃないでしよう! でも、私だって……ってあれは事故みたいなものか……
『飛鳥さん、どうかしましたか?』
「えっ、ううん…… 今度マイク君の写真見せてよ」
『良いですよ! 飛鳥さんの彼の写真も見せてくださいよ』
「うん…… 恵美子ちゃんごめんね! 私も早く言わなきゃと思ってたし、なんだか裏切っているようで辛かったの……」
『それはお互い様です。私も飛鳥さんに悪いなと思いながらも受験に託けてマイクと……』
「うん、でも、恵美子ちゃんも素敵な人がいて良かった」
『はい! 飛鳥さんこれからもずっと友達で良いですよね!』
「もちろん、私の方こそこれからもよろしく」
『はい、それじゃね! もう少し寝てなきゃキツイから』
「あっ、時差があるから…… 確か早朝四時くらいなんだよね!」
『はい、日本より十六時間遅れてますので、おやすみなさい』
「おやすみ」
これでなんだかスッキリした。恵美子ちゃん…… 良かった!
「飛鳥、誰か来てたの?」
玲華がお風呂から上がって来ました。
「ううん、恵美子ちゃんから電話だったの!」
「そう…… 二階堂君の事、言えた?」
「うん! 恵美子ちゃんも新しい彼氏さんを見つけたんだって!」
「そうか…… でも、良かったね!」
「うん! それにカルフォルニア大学に合格したんだって!」
「えーっ! やっぱり恵美子ちゃんは凄いな!」
「うん」
これで安心して二階堂君とお付き合い出来ます。まあ、結構心置きなく付き合ってたけど……
土曜日、私は花火大会へ行く準備をしています。
「飛鳥、そろそろ行くよ、えっ! 浴衣を着て行くの」
「うん、折角の花火大会だしね! 紫の藤の花の浴衣似合うかな?」
「うん、似合うけど…… その下は下着だよね!」
「えっ、そんな訳ないでしょう! ちゃんと肌襦袢を着てますよ」
玲華は何を言い出すのか…… 私はちょっと恥ずかしくなりました。
「それじゃ、下着じゃないんだ」
「違います! 肌襦袢を着てないと下着が透けて見えたりするから恥ずかしいんだから……」
「まあ、そうだよね襟元が肌蹴てブラとか見えたら大変だもんね」
「もう、だからそうならないようにしてるのよ」
まったく玲華は……
「ところで玲華はそれで行くの?」
「うん、私は気軽に行くのが良いから」
玲華はブルーのTシャツに白いホットパンツです。玲華の生脚がなんだか眩しいです。
『ピンポン!』
チャイムが鳴り玲華が対応します。
「おい、そろそろ行くぞって、如月はそれで行くのか!」
「先生、どこ見てるの? エッチ!」
桐生先生が迎えに来ましたけど…… 玲華が何か失礼な事を言ってたような……
「先生、すみません」
私が玄関へ行くと……
「今村は浴衣か…… よく似合ってるよ」
「あっ、ありがとうございます」
なんだか照れますね、そういう事で桐生先生の車で出発です。
「先生、大学へ行かないんですか?」
「花火を見る穴場があるって聞いてなかったか」
「あっ、はい、そうでした」
そう言えば梨菜達は神地君のワゴン車で来るって言ってたけど…… 二階堂君はどうするんだろう。
私達が花火の見える穴場に到着すると、いつものバーベキューの準備が出来ていました。
「今回もやるんですね!」
「そりゃ、やるさ! だからこんな穴場でやるんだよ」
まあ、そうですね! 河川敷は人がいっぱいでバーベキューなんて出来ないですからね!
「飛鳥はやっぱり浴衣だった。凄く似合ってるよ」
「えっ、城戸先輩なんで解ったんですか?」
「ふふふ、女の勘よ」
女の勘恐るべし…… 私には到底無理です。
「あっ、二階堂君!」
私は彼の元へ駆け寄ります。
「今村、浴衣似合ってるよ。綺麗だな……」
「ありがとう! それで、ここまでどうやって来たの?」
「ああ、近くまでバイクで来た」
などとコソコソ話をしていると……
「何コソコソやってるのよ! いやらしい」
梨菜に言われてしまいました。やっぱり監視されてるような……
「飛鳥、下着とか透けないの!」
そう言って静香も話しかけて来ました。
「あっ、肌襦袢を着てるから大丈夫だよ」
「なるほどね、それじゃ二階堂君もやり難いね」
「なんの話だよ」
「ふふふ、別に」
「おーい、みんな! イカも肉も焼けたから食べてくれよ」
中山先輩も張り切っていますね!
「あの、城戸先輩は卒業後の研修はどうするんですか?」
「うん、私は地域医療枠で来てるから北山総合病院が有力かな」
「北山総合病院って人工スキー場の近くですよね」
「そう、冬は骨折の患者さんが増えるのよ!」
「でも、良かった! 先輩は卒業後は東京に帰っちゃうと思ったから」
「そのつもりなら地域医療枠なんて使わないわ! それに私は地域医療に興味があるから数年後はどこかの診療所勤務も良いかなって……」
その時でした。
『ヒューン、バン』
花火が始まりました。
「二階堂君、凄く綺麗だよ」
「うん」
私は草履の音をたてながら二階堂君の側へ行きます。うちわでパタパタ仰ぎながら反対の手は彼と手を繋いで花火を見ます! なんだか良い感じです。
恵美子ちゃんはちゃんとカリフォルニア大学に合格し、なんと彼氏までゲットしていました。彼女も飛鳥の事を思いながらも…… お互い気不味い思いをしてたようですけど、分かり合えて良かったと思います。




