16 飛鳥の恋物語
お待たせしました16話を更新しました。
前回、二階堂君に告白された飛鳥ですが、その事で悩んでしまいました。試験前だというのに……
二階堂君とはカフェで別れてマンションへ戻って来ました。ちょっと遅くなっちゃった玲華怒ってるよね…… それとも弁当でも買って食べてるかな?
「ただいま……」
そう言ってリビングへ行くと……
「飛鳥、お帰り! 遅かったから先に食べちゃったから」
えっ、何を食べたの? テーブルの上には食器も弁当空もないようだけど…… って! テーブルの片隅にあるのはカップラーメンの空容器……
「玲華、ごめんね! 夕ご飯にカップラーメンだなんて……」
「良いのよ、あそこのスーパーの弁当も飽きたから、まあたまにはね! 飛鳥の分もあるからね」
「あっ、ありがとう……」
「ところで二階堂君なんだったの?」
玲華にそう訊かれ、私はちょっと俯いたまま頬を赤く染め説明出来ないでいると……
「飛鳥、まさか……」
「うん、告られた…… どうしよう……」
私は正直に放課後の出来事を話しました。キス以外は…… まあ、どうせバレる事だし、下手に隠すと後が怖いから……
「それでGIDの事は話したの?」
「うん…… それでも良いからって」
「はぁ! 何やってんのよ! 試験前に」
確かにそうだよね……
「でも、私の事かなり気を遣ってくれたんだよ」
「そんなの当たり前でしょう!」
やっぱり玲華は酷い! そんな言い方しなくったって……
「それでオッケーしたの?」
「うん、成り行きで……」
「そう、いいんじゃない私はお似合いだと思うけど…… それならいっそうの事、二階堂君と同棲する? それともここで三人で暮らす?」
「…… 玲華、ふざけてるでしょう」
「ふふふ!」
玲華はただ微笑むだけでした。
「もう! 私、お風呂に入る!」
私は膨れっ面でお風呂へ行きました。玲華はいつものお気に入りのドラマがあるのでそっちが先のようです。
『チャッポン!』
湯船に浸かり目を閉じると私の頭の中には二階堂君がいます。はぁ…… もう溜息しか出ません。突然キスなんかしてくるから…… まあ、私が瞳を閉じたのも悪いんだけど、だからってキスする?
「まったく、おまえが悪いんだぞ!」
私は思わず叫んでしまいました。
『ガチャ』
えっ、なんで扉が開くの?
「飛鳥どうかした! 大丈夫?」
玲華にそう声を掛けられてしまいました。どうやら聞こえていたようで恥ずかしいです。
翌朝、早めに目が覚めてしまいました。もう眠れません。仕方ないので起きて朝ごはんを作ろうと思いましたけど…… まだ朝の五時前です。はぁ、まだ早すぎるよね! そう思いながら少しの間、試験勉強です。その後、夕ご飯の仕込みをして朝食を作ります。定番のサンドイッチです。するといい香りに誘われるように玲華が起きてきました。
「相変わらず早いわね!」
「うん、五時前に目が覚めて眠れなかったから」
「飛鳥、大丈夫?」
「うん…… 明日の試験に備えて今日は休もうかな…… 講義もないから」
「うん、そうね良いんじゃない」
そういう事で私は、本日大学をお休みします。玲華は朝食を食べた後大学へ行ってしまいました。玲華がいなくなった後って結構静かなもんなんですね! 私は引き続き試験勉強をしますが…… なんだか二階堂君の事が気になって仕方ありません。やっぱり、大学へ行こうかな…… そう思うと急に二階堂君に逢いたくなりました。なんでよ! どうしてよ! どうしよう…… そう思ったらもう居ても立っても居られなくなり…… 私は大学へと行ってしまいました。
たぶん図書室にみんないるよね! そう思い図書室へ向かっていると……
「二階堂君、いろいろ言うつもりは無いけど試験前はやめてね! 飛鳥は困ってどうしようもなくなっているから!」
「すまん、そんなつもりはなかったんだが……」
「私に謝られてもね、まさかとは思うけど試験前に言えば飛鳥の成績が下がるとか思ったんじゃ無いでしょうね」
「馬鹿な事を言うな! 俺は自分の気持ちを言ったまでだ…… それに今村が留年したり、他の班になるのも嫌だ」
二階堂君は私の事を思ってくれていた。それに玲華は私のために…… でも、もうやめて彼を責めないであげて……
「玲華やめて! お願い……」
「今村、大丈夫なのか?」
「飛鳥……」
「うん、試験勉強してたんだけど…… 解らないとこがあって、二階堂君教えてもらっても良い?」
私は完全に病気だと自分でも思いました。病院に行かないと駄目かな?
その日はずっと二人で勉強しました。二階堂君と一緒というのがこんなに心地良いとは…… 周りもなんだか私達に遠慮してくれてるみたいです。神地君は……
「やっぱり付き合ってんじゃねえか……」
そうボヤいていたそうです。あとから梨菜とカッキーにそう聞きました。でも、梨菜もなんだか不機嫌そうに私の事を見ています。なにか悪い事でもしたかな? 私……
放課後、私は城南市に来ています。最初は本郷先生に相談しょうと思ったのですが、なんだか忙しそうでしたので…… 私は午後から休診中の北条クリニックの裏口のチャイムを鳴らしました。
『はい、急患ですか?』
インターフォンで訊かれてしまいました。まあ、私の今の心境は急患以上です。
「美彩先生、今村です」
そう言うと、扉が開き驚いた表情の先生が……
「どうしたの? なんだか訳ありの顔をしてるけど……」
そう言った美彩先生は私をリビングへ通してくれました。
「コーヒーで良いかしら」
「はい」
そして、私は美彩先生に昨日の出来事を全て話しました。もちろんキスのことも……
「そうか…… 飛鳥さんは二十歳だっけ?」
「いえ、まだ十九です」
「ふーん、年頃だね! それはお医者様でも、草津の湯でも……ってやつだね」
「なんですか、それ?」
「はぁ!」
美彩先生は溜息をひとつ吐いて……
「ジェネレーションギャップ…… なのかな? だから恋だよ!」
「ああ、やっぱりそうですよね……」
「でも、飛鳥さんが男の子を好きになるなんてね……」
「どうしたら良いですか? もう胸が苦しくて…… どうにもならなくて……」
美彩先生は微笑みながら……
「これはどうにもならないわよ! 私にもそういう事があったわ」
「えっ、それって……」
「私が研修医だった頃、如月総合病院で初めて秀一さんに会ったの! その時が、今の飛鳥さんと同じ感じだったかな…… もう、いつも彼の事を考えているの! ちょっと苦しかったけどあの頃が一番幸せを感じていたかな! そう思わない? 好きな人のことをいつまでも考えているのよ」
美彩先生はひとりで喋っています。まあ確かに、私が普通の女の子だったらそうかも知れないけど…… 美彩先生の話を聞いていた時でした。
「ただいま」
ひょっとして、上杉先生……
「お帰りなさい秀一さん、珍しい人が来てるわよ」
「珍しい人?」
そう言いながら上杉先生がリビングに入って来ました。
「お邪魔してます」
「飛鳥君、久しぶりだな。また一段と女性らしくなって……」
「あっ、はい……」
「秀一さん、飛鳥さんが男の子に恋をしたんだって!」
「えっ! 本当なの?」
「あっ…… はい」
私の顔は赤くなってないかな……
「それじゃ、いずれは手術とかも……」
「それはまだ考えていません」
「そうか、それじゃ気持ちが不安定だよね!」
「はい」
しばらく上杉先生は考えてから。
「まあ、今何かをということじゃ無くて良いんだよね」
「どうにもならないですよね?」
「まあ、そうだな…… 本郷先生は知ってるの?」
「いえ、今日相談に行こうと思っていたんですけど…… 外来で忙しそうだったし、予約もしてなかったので……」
「そうか……」
上杉先生もちょっと困った表情です。
「ねえ、相手の人ってどんな人?」
美彩先生はちょっと相手の方に興味があるみたいですけど……
「えっと、同じ学年で同じ班の人ですけど……」
「真面目な人!」
えっ、今度は上杉先生まで…… 二人はなんだか私の両親みたいに心配しています。その時、スマホが鳴りました。
「ひょっとして彼氏さんからかな!」
美彩先生変な事言わないで……
「もしもし」
『飛鳥、今どこにいるの?』
あっ、また忘れてた! 玲華です。
「玲華、ごめん…… 今、美彩先生のところなの……」
『美彩先生のところに行くのなら連絡くらいしなさいよ』
「ごめんね、玲華」
『もう、分かったわよ今日はお弁当にするから…… 早く帰って来なさいよ』
「うん」
そこで話は終わりました。上杉先生が帰って来てると言う事はそういう時間ですよね……
「飛鳥君、誰からだい!」
上杉先生から聞かれました。
「玲華です」
「えっ、何故玲華ちゃんが今頃?」
「あっ、今、玲華のマンションで同居してまして……」
「えっ、またどうして?」
まあ、そうなりますよね……
「えっと、いろいろありまして……」
「それじゃ車で送るわよ! 一條駅の近くなの?」
「いえ、橋本駅のそばなんですけど……」
「それなら、ここから三十分くらいだから…… 秀一さん、私行ってくるわね」
「うん、気をつけてね!」
そう言って上杉先生は美彩先生を抱き寄せます。
「ちょ、ちょっと、飛鳥さんが見てるでしょう……」
美彩先生はちょっと頬を赤く染めています。仲が良くて良いな……
「ハハ、そうだね…… いってらっしゃい」
そして、私は美彩先生の車で玲華のマンションまで送ってもらいました。
「美彩先生ありがとうございます。あの、良かったらコーヒーでも飲んで行きませんか……」
「そうね、ひとりじゃ帰りにくいんでしょう」
ハハハ、図星ですね。そして五階の玲華の部屋へ戻って来ました。
「ただいま……」
そっと部屋の奥をを覗き込みますが……
「飛鳥、先生のところに行くのなら一言言ってよね!」
「ごめん」
「玲華ちゃん久しぶりね!」
「えっ、美彩先生!」
「飛鳥さんを送って来たから」
「あっ、すぐコーヒーを淹れますので上がってください」
そう言って私はキッチンへ逃げました。
「まったくもう……」
私達三人はコーヒーを飲みながら女子トークです。
「先生、レトルトのカレーがあるので一緒に夕食いかがですか?」
「ええ、頂くわ! ところで玲華ちゃんは彼とはどうなの?」
そう言えば、大学に入ってから逢っているのかな?
「えっ、甲斐君? ちゃんと続いているよ!」
「でも、大学が違うでしょう」
美彩先生も気になるみたいですけど……
「彼も忙しいからメールや電話がほとんどだけど、夏休みや冬休みに何度か逢ったかな!」
「そう、二人とも上手く行くと良いわね」
その後も三人で女子トークは続きます。もう、どうでも良いような話をしていたらなんだか気持ちが落ち着いて良くなりました。
「美彩先生ありがとうございます。玲華もありがとう」
「うん、普段の飛鳥さんに戻ったみたいね!」
やっぱり美彩先生は何でもお見通しです。私の一番の理解者かな……
その後、午後九時過ぎに美彩先生は帰って行きました。私達も明日から試験です。でも、今の気持ちなら何とかなりそうです。
なんとかいつもの飛鳥に戻る事が出来たみたいです。久々に上杉先生や美彩先生に会って気持ちが落ち着いたのかも知れません。これなら試験の方もなんとかなりそう……




