15 Wの告白
お待たせしました第15話を更新しました!
今回はタイトルの通り、Wの告白で飛鳥は…… お楽しみください!
年が明けて一月の中旬です。私達は久々に自転車部に来ています。雪は降っていませんが今にも雪が降りそうなそんな寒い日が続いています。
「あれ、郁美がいないね!」
「まだ、実習があってるんじゃない」
玲華と二人そう話していると……
「何言ってるの! 戸田さんは今日は来ないわよ」
城戸先輩が言います。
「何かあったんですか?」
私が城戸先輩に訊くと……
「看護科の一年生は今日は、戴帽式なのよ。三月の臨地実習が始まるからね」
「戴帽式ってナースキャップを付ける儀式ですよね、まだナースキャップってあるんですね!」
玲華、儀式って発想はちょっと…… でも、ナースキャップはどこの病院の看護師さんもしてないですよね。
「そうね、実際にはないけど、以前同窓会から寄贈して頂いたのを看護科の先生達がひとつひとつ縫製してるって話よ」
「でも、看護科って男子もいますよね、男子もナースキャップを被るんですか?」
「そんな訳ないでしょう! 男子は胸に大学のエンブレムを付けるみたいよ」
先輩は自慢げに話しています。
「先輩は看護科でもないのに詳しいですね!」
玲華、何もそんな事言わなくても……
「私も看護科の友人は結構いるからね」
「でも、看護科は良いな! そういう行事があって」
「あら、なに言ってるの! あなた達も四年生の今頃は白衣式に参加しないといけないのよ」
「白衣式? ですか!」
「そう、五年生になったらスチューデントドクターとして臨床実習を受けるの、その時白衣は必需品でしょう」
戴帽式は聞いた事あったけど、白衣式もあるようです。しかし、各病院でもナースキャップの廃止で戴帽式も廃止している学校が多い中、我が橋本大学では看護科の生徒が看護職を目指す決意を新たにする節目の行事として戴帽式が行われているそうです。ちなみに白衣式は医学科の四年生がクリニカルクラークシップの臨床実習の前に医師を目指す医学科の生徒が医師としての心構えを新たにするという目的で行われているようです。これもちょっと楽しみですね! どうせならちょっとお洒落な白衣が良いかな!
二月になり講義及び実習と終了しました。来週から後期定期試験です。各科目とも六十点以上取れないと再試験になります。もし、それも駄目だと…… 考えたくもありませんけど…… ちょっと大変な事になるかも知れません。という事で只今図書室で勉強中です。ここは静かだし、調べ物があっても直ぐに調べられます。しかもW i-Fiが充実してるのでネット検索も完璧です。そんな時、気付いたんですけど恵美子ちゃんからメールが来てました。内容としては英語でのコミュニケーションもある程度取れるようになり大学受験の志望校を決めましたという事ですけど…… カルフォルニア大学ロサンゼルス校を受験するという事でした。やっぱり恵美子ちゃんは凄い! カルフォルニア大学って名門の大学だって美彩先生も言っていたような…… そんな大学を志望校にするとはね…… 日本で言えば東大、早稲田、慶應のこの辺りになるんでしょうか? まあ、レベルは違うと思いますけど…… なんだか想像もつきません。
『恵美子ちゃんがんばってね!』
それだけメールで返信しました。恵美子ちゃんはだんだん私から離れて行っているようでちょっと淋しいけど…… がんばってほしいです。
「飛鳥、どうかした?」
隣で勉強中の玲華が私の異変に気付いたようです。まあ、メールを見てニヤついていたかも……
「うん、恵美子ちゃんからメールが来てて、カルフォルニア大学を受験するんだって!」
私がそう言うと……
「えっ、恵美子ちゃん大丈夫なの? かなり有名で一流の大学だよ」
「うん、そうみたいだけど大丈夫だよ! 恵美子ちゃんだったら」
私はそう思いました。でも、まずは人の事より自分のことですね。
「あっ、ここにいた!」
二階堂君です。
「今村、ちょっと良いか……」
「うん、どうしたの?」
そう言いながら彼の側へ行き話をします。
「うん、ちょっと…… 放課後時間あるか?」
「うん、良いけど」
「それじゃ、ちょっと付き合ってくれ」
「うん、分かった……」
そう言って行ってしまいました。どうしたのかな二階堂君!
「飛鳥、二階堂君なんだって?」
「うん、放課後ちょっと付き合って欲しいんだって」
「なにそれ! ひょっとしてあいつ飛鳥の事好きなんじゃない?」
「えっ、うそ!」
それはないでしょう、だって私は…… でも、二階堂君は知らないか…… うん。
「飛鳥、ひょっとしてあなたも二階堂君の事好きなの?」
「そ、そんな訳ないじゃない」
私は手を振って否定しました。けど…… 気になる存在ではあります。
「まあ良いけど、試験前はやめときなさいよ」
「うん…… って、なに言わせるのよ」
まったく玲華のペースにハマるとこだったわ!
私は放課後、大学病院のロビーに来ています。ここで待ってて、という事でしたけど……
「今村すまん、遅くなった」
私は二階堂君と一緒にロビーから地下へ行く階段を降りて行きます。
「ねえ、ここって……」
「ああ、今から病理解剖があるんだ。それで見学を願い出たら、もう一人連れて来るように言われて」
「そうなんだ、それじゃ玲華も連れて来れば良かったかな?」
「いいや、定員は二名なんだから」
そう話している時でした。
「二階堂君は彼女を連れて来たのか?」
えっ、この人は……
「教授、違いますよ! 同じ班の娘です」
二階堂君はそう言って否定します。私は恥ずかしくて俯いていました。
「解剖は教授がするんですか?」
すると、もう一人男性の先生がいますが……
「いや、大平准教授にやってもらいます。君達も四月から解剖実習を受ける事になると思うから」
「赤倉教授、照れ臭いからやめてください」
「まあ、良いじゃないですか! 今どき病理解剖の見学に来る生徒ですよ」
などと、赤倉教授と大平准教授は言ってますけど…… その後私達は解剖室へ入ります。解剖室にはもう一人、大平准教授の助手の方がいます。どうやら大平准教授は助手の方と二人で病理解剖をするみたいです。
早速解剖が始まりました。当然ですが死体を切り開いてもほとんど出血はありません。まず胸のところから腹部にかけてYの字に開腹されました。
「先生、肝臓や胃に異常はありません」
「うん、膵臓や十二指腸も調べてみよう」
その後も、色々と調べているみたいですが、臓器が取り出されました。
「あれは、膵臓かな?」
「膵臓?」
二階堂君の言葉に私も呟いてしまいました。
「先生、膵管にかなり浸潤しています」
「どうやら膵臓癌があったようだね」
その後膵臓があった場所には綿が詰められ閉腹されました。
「二階堂君、どうだった?」
「はい、手術と違ってかなり大きく開腹するんだと思いました」
「うん、死因を調べる為には必要な臓器を取り出して調べないといけないからね」
どうやら今からが本番のようですが私達はここまでのようです。なんだか静かに事が進みとても違和感がありました。私と二階堂君は赤倉教授にお礼を言って解剖室を、あとにしました。
「今村、サンキューな」
「えっ、なにが?」
「いや、付き合ってくれて」
「ううん、私の方こそ良い勉強になったよ」
この後、二階堂君の誘いもあってカフェでお茶でもしようという事で大学に戻る時でした。
「おーい二階堂、なにやってんだ?」
えっと、神地君だっけ? 二階堂君のところに来ました。
「えっ、なにおまえ達ってそういう事なのか?」
えっ、何がそういう事?
「なに勘違いしてんだよ」
「だっておまえら二人きり仲良く歩いてるってことはそういう事だろう」
「馬鹿やろ、そんなんじゃねえよ!」
そうか、それじゃ俺にもチャンスはある訳だ! そう言って神地君は私に……
「なあ、俺と付き合ってよ! 最初会った時から良いなと思ってたんだよ」
えっ、なに、いきなり…… なんだかちょっと怖いんですけど……
「あっ、私はちょっとそういうのは……」
「神地やめろよ!」
「良いじゃん、二階堂はそんなんじゃないんだろう!」
そう言って神地君は私に迫って来ます。私はとても怖くなって恐怖感でいっぱいです。
「おい、神地やめろと言っているのが解らないのか?」
それでも必要以上に迫ってくる神地君ですが……
「うわぁー」
という声と共に神地君は大の字になって倒れていました。
「ああ! やってしまった……」
二階堂君はびっくりしたように私の側へ来ていますけど、神地君は「痛てぇー」と言いながら寝転んだままです。
「二階堂君行こう!」
「えっ、しかし、このままほっとけないだろう……」
すると神地君は背中を手で押さえながら辛うじて自力で起きて行ってしまいました。
「神地、大丈夫か?」
二階堂君が声を掛けますが彼は軽く手を挙げるのが精一杯のようです。
「大丈夫でしょう!」
それにしてもちょっと怖かった! やっぱり私は男性恐怖症なんですね。
「今村は凄いんだな…… あれって柔道技だよな?」
「うん…… 小学生の頃ちょっとだけやってたから」
その後、私達はカフェでお茶をします。
「なあ、今村! 俺さあ」
「うん、どうしたの?」
なんだか二階堂君が可笑しいんだけど……
「あのな、その、なんだ…… 俺と付き合って欲しい」
彼は、絞り出すようにそう言い切りました。私はそれを聞いてびっくりしました。本日二回目の告白です。でも、神地君の時と違って二階堂君の告白は、ちょっと胸がキュンとしました。私は恥ずかしくて二階堂君の顔をまともに見れません。
「あ、あの、二階堂君、私はね、実は…… その、男、なんだけど……」
私がそう言うと彼は……
「今村、嫌ならそう言ってくれ、そんな誰でも判るような嘘はやめろ」
そう言われ、私もちょっとムキになって……
「嘘じゃないよ!」
そう言って私は二階堂君の手を引っ張って引き寄せ、私の学生証を見せました。もちろん性別のところはMの表示があります。
「えっ、なんで……」
彼はちょっと落ち込んでしまったようです。
「ごめんね、隠すつもりはなかったの、でも言い出しにくくて……」
「今村、それってMtFなのか?」
「うん…… 私はGIDなの」
「そうか、でも手術するんだろう! それなら、やっぱり付き合って欲しい!」
彼の言葉は想定外でした。ここまで私の事を思ってくれるなんて…… 私、このまま二階堂君と…… でも、手術は…… あっ、恵美子ちゃん……
「ご、ごめんね、手術は解らないけど…… 今のところ予定は無いので…… どこも悪く無いのにメスを入れるのは考えられなくて……」
すると彼は、顔を上げ……
「これって皆んな知ってるのか?」
私はちょっと俯いたまま……
「大学の先生と玲華は知ってる」
「そうか、分かった」
そう言って、二階堂君は私を抱き寄せ……
「それでも良いから付き合って欲しい! おまえじゃなきゃ駄目なんだ……」
この一言で、私の胸はキュンキュンしています。私は彼の腕の中で瞳を閉じて彼と唇を重ねてしまいました。試験前だというのに……
飛鳥はまた、大変な事になりました。恵美子ちゃんはどうなるのか? その前に試験は大丈夫でしょうか?




