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第72話 循環参照無限級数

「道を、あけろぉぉぉ!!」


 前方に立ちはだかる『呪い』を、平行世界から呼び出した空間を切り裂く斬撃で薙ぎ倒す。

 もう、何匹倒したかわからない。

 少なくない数の敵を倒したはずだ。


「くそ、無限湧きかってんだ」


 だけど、『呪い』の供給は途絶えない。

 いや、それよりもむしろ、加速しているような――。


「……いや、いやいや。そんなまさか」


 ――不意に、嫌な予感が浮かんだ。


「そんなはずないだろ。いやでも、もしそうだとしたら」


 普通なら、思いついてもそれを実行なんてしない。

 なぜならそれは、神の作り出したルールを無視する背徳行為。

 時間の理を破る絶対の禁忌。


 普通ならタイムパラドクスが起きる。

 世界が崩壊したっておかしくない。

 だから、普通は思いついても実行しない。


 だが、相手は『呪い』で狂っている。


「呪い渡しの回廊、か?」


 思い浮かんだ最悪のパターン。

 それはこうだ。


1.『岩戸』を支配した「未来の麒麟」が、「今の麒麟」に『呪い』を送る。

2.「今の麒麟n」が『岩戸』を占領するときの『呪い』の保有数は、「未来の麒麟n-1」より多くなる。

3.nを無限に飛ばす。


 ようするに、同じ時間のループの中で、最初に保有する『呪い』の数だけが無限に増え続けるんじゃないかっていう悪魔的な予想だ。

 もちろん、これがうまいこと行くなんて保証はどこにもない。


 だが、無いとも言い切れない。

 それに、平行世界の可能性まで含めたら……。


「どうする! どっちに行くべきだ!」


 一つは『岩戸』の最奥、神藤さんが普段過ごしている間。

 もう一つは呪い渡しの回廊。

 先の予想を正しいとするなら、間違いなくこちらに進まなければ詰みだ。


「麒麟は神藤さんが近くにいることを暗示していた。なら最奥を目指すべきか? いや、オレに無駄足を踏ませる作戦か?」


 考えつつも、足は止めない。

 間欠泉のように湧き出る『呪い』をバッタバッタと薙ぎ倒し、岩戸に向けて走り続ける。


 『呪い』は本殿の方からあふれかえっているように見える。

 だが、呪い渡しの回廊は、オレが中国にいる碧羽さんに呪いを届けられたように、送り手はともかく受け取り手の場所に制限はない。


 それに、麒麟の召喚位置が自分の近くだけという確証もない。

 麒麟本人は呪い渡しの回廊にいながら、本殿に呪いを召喚して外に向かわせている可能性だって十分あり得る。


「いや、一つあったか。確信できる情報が」


 麒麟はオレに【アドミニストレータ】を解除するように迫った。神藤さんを殺せる状況にありながら、殺すのではなく交渉材料として利用した。


 それはなぜだ。

 麒麟にとって停止した時間が不都合だったからだ。


「時間が停止したら、呪い渡しの回廊も使えなくなるもんなぁ? そうだろ、麒麟!」


 目的地は決まった。

 呪い渡しの回廊だ。


「てめえら、その道あけろッ!!」


 納刀術『つるべ落とし』で、剣を鞘に納める。

 歩法『地走り』で、弓矢のごとく走り出す。


「一閃!」


 鯉口を切り、空間ごと引き裂く斬撃を飛ばす。

 背景が一瞬切り落とされ、直線上にいた『呪い』が崩れ落ちる。


「双葉ッ」


 返す刃で前方に×印の剣閃を描く。

 引き裂くのは同様に「空間」。

 まだ700メートルはあった遠方につながるワームホールを開き、飛び込む。


「三元!!」


 ワームホールで移動した先にいた大型の『呪い』を亜音速で貫く。


「四天ッ!!」


 三元で突き刺した「点」から横なぎに一振り「線」を描く。切断「面」が「立体」的に切り崩される「時空」を超えた斬撃。


「はぁ……はぁ……五筒開花(ウーピンカイホウ)ってな」


 【剣術】スキルをフルで使った。

 それでも、人間にできる動きを超えていたようで、バーストを使った時よりもひどい激痛に苛まれる。


 杖代わりに鞘を突き、崩れそうになる膝を腕の力で支える。


「くそ、立ち止まって、られねえんだよ」


 だから、動けよ。オレの足だろ。


 ――ボクが代わりに片付けてあげようか?


 脳裡(のうり)に、そんな声が響く。


「まだ、オレは、諦めちゃいねえ。お前の出番なんて、来ねえよ」


 精一杯の強がりを見せる。

 それが無駄だってことは、なんとなくわかっているけれど。


 ――ふぅん。それは残念だ。


「待ってろよ、麒麟」


 ――あいつにご執心、なんだね。


 ……そうかもな。

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