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第17話 決着、アドミニストレータ

「君が送ってくれた人魚の呪い。あれのおかげで助かった。君は命の恩人だ。だから、すべてが終わるまで大人しくしていてくれないか?」


 目の前に立つ男に委縮する。

 あちこちに変な力が入っている。

 背中がさむい。

 ああ、そうか。

 これが恐怖というやつか。


 なるほど。

 両手を上げて屈してしまいたいな。

 オレは自分がモブだと知っているけれど、無駄と知って死ぬのは遠慮願いたい。


 ……だけどさ。


「申し訳ないですけど、それはできない相談です」

「なに?」

「ここから先へは通しません」


 人のために傷つきたいなんて高尚な理念じゃない。

 崇高な使命を掲げた英雄思想でもない。

 それでも。


「ちなつの笑顔は、オレが守るんだ」


 この先には神藤さんがいる。

 彼女が殺されたらちなつは悲しむ。

 そんなの、オレは絶対認めない。


 そのためなら、オレは一歩前に踏み出せる。

 怖くたって、一歩が小さくたって、立ち上がれる。

 ほんの少しの勇気が、オレの背中を押してくれる。


「行くぜ、バースト。力を貸せよ」


 超常の柩(パンドラ)を駆動させる。

 ギュリギュリと音を立てて形を変える禁断の箱。

 あふれ出した黒い瘴気がオレにまとわりつく。


「……残念だ。だが、安心してくれ。君は命の恩人だし、『岩戸』の人間でもない。命まではとらない」

「……いつまで、余裕を見せられるかな!」


 疾駆。

 空間魔法で虚空から機巧竹刀(からくりしない)を呼び出し、斬り付ける。


 碧羽さんは動かない。

 ただじっと、剣閃の軌跡を目で追うばかりだ。

 そして。


「な――っ」


 手の平で、機巧竹刀の刃を受け止めた。

 鮮血がうなりを上げ、あたりに血しぶきをまき散らす。


 一見すればすでに致命傷だ。

 その手は使い物にならず、時間とともに失血死に至るのが容易に予測できる。


 だが、現実はそうならなかった。


「どうした。何を驚いている。君がくれた贈り物だろう」

「……人魚の呪いによる、再生!」


 そうだ。

 そういえばそうだった。


(おいおい! 鬼に金棒なんてレベルじゃねえぞ!)


 なんだよそりゃ。

 数千万の被害を出す呪いを単騎で打ち倒す化け物に、不死能力まで付与してあるだと?


 そんなの、どうやって突破しろと。


「今度はこちらから行くぞ」

「っ!」


 碧羽さんが槍を振り抜く。

 くそが。

 目ではしっかり追えてるのに、体が追い付いてくれない。


 こんなところで、オレは死ぬのか?


 ……ふざけんじゃねえ。

 ここで死んだら、誰の笑顔も守れねえ。


(起動しろよ、【アドミニストレータ】!!)


 声を出さずに念を送る。

 ダメもとで縋った、最後の希望。


(……来た!)


 世界が加速していく感覚。

 モノクロに染まる世界。

 眼前に迫る三叉の槍。


「……間に、あった」


 オレの目の先10センチで、碧羽さんの槍はピタリと止まっていた。


「声に出さなくても、発動できるんだな。知らなかった」


 というか、命までは奪わないって視力の保証はしてくれないんですね。思いっきり眼球つぶしに来てるじゃないですか。あぶねえ。

 なんとか一命はとりとめたな。


「問題は、こっからどうするかだけど……」


 碧羽さんって、停止してるんだよな。

 今のうちに超常の柩(パンドラ)を回収できないかな。


「あ、碧羽さんの柩を回収出来ちゃったよ」


 いくら相手が英雄格と言えど、呪いありと呪いなしなら負けまいて。


 よし、攻撃の先から別の場所に移動して。


「【アドミニストレータ】、解除」

「っ⁉ いつの間に!! 瞬間移動⁉」

「だけじゃないですよ。ほら」

「それは……僕の柩⁉ どういうことだ!」


 目に見えて狼狽する碧羽さん。

 オレは優しく微笑んだ。


「決着はここにってことだ」


 いくぜ、バースト。


「うおおおおぉぉぉっ!!」

「ぐはぁぁぁっ⁉」


 刃を返した機巧竹刀でたたきつける。


「安心してください。峰打ちです。命までは奪いません」

「ぐぁ……っ、くそ、く、そ、がぁ!!」


 悪いね。

 神藤さんに害なそうとする相手を放っておくわけにはいかないんだ。


「やはり、来ましたか、碧羽」

「神藤ぅぅぅ! 貴様あぁぁ!!」

「ヴェ⁉ 神藤さん⁉ どうしてこんな前線に⁉」


 あんたは引っ込んでろよ!!


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