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第13話 立ちはだかる『岩戸』

 『岩戸』に行きたいという要望は存外あっさりととおってしまった。

 日付にすれば、ちなつに相談した翌日のこと。


 神宮深くに案内されたオレは、どこまでも長く連なる、真っ赤な鳥居を前に息をこぼした。

 周囲は背の高い木々に囲われているが、足元の石畳は手入れが行き届いていて、荘厳という言葉の意味を思い知る絶景だ。


「ようこそおいでくださいました。楪灰(ゆずりは)想矢(そうや)様」

「えと、ご丁寧にありがとうございます。楪灰想矢と申します。よろしくお願いいたします」


 オレを出迎えてくれたのは、狐の面をかぶった官女さんだった。面をつけているからなのもあるだろうけれど、静かにたたずんでいる様子も相まって、どこか無生物っぽさを感じてしまう。


「楪灰様のお願いを聞き届けられるかは、判断しかねます」


 官女さんが、緩やかな動きで右手をあげると、ぽぽぽぽとオレたちを囲うように火の玉が現れた。

 ……警戒されている?


「私の質問に、お答えいただけますね?」


 オレは超常の柩を発動する準備だけして、身構えずに話に耳を傾けた。


「一つ、楪灰様は、超常の柩を保有されていらっしゃるとのことですが、どちらで手に入れられましたか」


 ……いきなり、踏み込んだ質問をしてくるな。

 さて、どう答えたものか。


(本当のことを言うのは簡単だ。それでオレにデメリットがあるわけじゃない。問題は、信じてもらえるかどうか……いや、無理だろうな)


 ゲームの世界から引っ張り出しました?

 そんなこと言ったって、一笑に伏せられるだけなんて目に見えている。


「オレが言えるのは、『岩戸』や『凱旋門』から盗んだわけじゃないってことと、持っているのは色々な偶然が重なりあった結果ってことだけだ」

「『凱旋門』のことをどこでお知りになられたのかはいささか疑問ですが、いいでしょう。それでは、シリアル番号をお教えください」

「シリアル番号?」

「はい。柩にはそれぞれ番号が割り振られています。『岩戸』が管理している柩の番号と合致しなければ、楪灰様の言葉を真と置きましょう」


 やべ、これ大丈夫か?

 オレが持ってきてるのは原作主人公の天月(あまつき)悠斗(ゆうと)の柩だけど、コイツ自身は『岩戸』の柩を使ってるんだよな。


 もしかして、『岩戸』で管理されている柩と同じ番号の柩が二つ存在することになるんじゃ……。


「番号なんて無いが?」


 柩をくまなく調べるが、どこにもない。


「そんなはずはございません。お見せくださいませ」


 横に官女さんが並んで、柩をのぞき込む。

 狐の面越しに「ほら、ここに」と、柩の一点を指さし……。


「……っ、本当に、シリアライズされていない柩⁉」


 官女さんは、幽霊を見たように絶叫した。


「なるほど。楪灰様の言葉は確かに正しかったようでございます。シリアライズされていない柩であれば、『岩戸』の手にも『凱旋門』の手にも移ったことのない柩。疑ってかかり、申し訳ございません」

「いえ、お気になさらず。当然の警戒だと思います」


 あぶねえ。

 どういうわけかわからないけれど、どうにか疑いの目を切り抜けられたらしい。

 天月悠斗の物とは別インスタンスなのか、それとも重複して存在してしまったために番号が消え去ったのか。

 その辺の謎は残ったままだけど、とりあえず不要な嫌疑は免れたっぽい。


「それで、オレは『岩戸』に立ち入れますか?」

「申し訳ございません。もう一点だけ確認させていただいてもよろしいですか?」

「オレに答えられることなら」


 やめて。

 これ以上叩かれたらボロが出てきちゃう。

 継ぎ接ぎで繋いだ嘘が破れちゃう。


「楪灰様は、どちらの味方ですか?」


 ……。

 ああ、そういうことか。


(一昨日東雲(しののめ)紅映(くれは)と接触しているから、内通者の可能性を疑われているのか)


 はてさて、どう答えたものか。

 うーん。『岩戸』の味方ですと答えてもいいのだけれど、嘘を嘘と見抜く能力者だったりした場合に厄介だ。


 嘘ではなく、かといって真実でもない。

 そんなウルトラシーの答えはないものか。


 いや、一つだけあるか。


「そうですね、しいて言うなら」

「しいて言うなら……?」

東雲(しののめ)碧羽(あおば)を助けにきた」

「……」


 官女さんが、仮面越しに息をのむのがわかった。

 ここで一気に畳みかける。


「呪い渡しの回廊、開いてもらえますかね?」

「……その情報は、『岩戸』の人間でもごく一部の者しか知りえません。楪灰様、あなたはいったい……」


 トップシークレットのはずの情報を、オレは切り札としてぶつけた。反応は上々。


「ただのモブですよ。この世界の行く末を知る、どこにでもいる一般人ですよ」


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