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第10話 東雲 紅映

 最近のゲームには2周目がある。

 ラスボスを倒せるだけのスキルが既にあり、1周目に起きたイベントを把握した状態で進める2周目。

 そう、「強くてニューゲーム」である。


 もちろん、『ぱんどら☆ばーすと』にも2周目は存在する。1周目の段階でヒロインになりそうだなってキャラクターが10人はいた。一人ずつ攻略しても10周は必要だし、複数人同時攻略、ハーレムルートまで考慮すれば組み合わせはとんでもないことになる。


 さて、俺が2周目に選んだヒロインに言及する前に、伝えておくべきことがある。まず、ゲーム内において所属する陣営についてだ。これは大きく3つある。


 一つは『岩戸』と呼ばれる伊勢神宮に本部を置く、東洋を中心とした組織。

 ここに所属した場合、神藤家を始めとしたキャラクター達とのイベントが発生しやすくなる。


 二つ目は『凱旋門』と呼ばれる、フランスに本部を置く、西洋を中心とした組織。

 こちらのルートは試したことがないけれど、おそらく西洋生まれのキャラクターとのイベントが発生しやすくなるだろうと思われる。


 この二つの組織は、活動範囲こそ違えど、目的は同じ「呪いの討伐」と「平和の維持」だ。

 もっとも、そのための手段や理念は相反する部分があり、敵対することもあるのだけれど、それはまた機会があれば話すとしよう。


 問題は、第三陣営だ。

 いや、彼らを一緒くたにするのは危険だろうか。


 彼らには、決まった組織名がない。

 それどころか本部もなければ、まとまりもない。

 そんな彼らを一言で言うのなら、あぶれ者だ。


 例えば東雲(しののめ)紅映(くれは)のように。

 緋色の髪、ちょこんと生えた愛らしい八重歯。

 元気が似合う彼女は、『岩戸』から指名手配された犯罪者だ。


「動くな、無関係なこいつの命を散らしたくはないでしょう?」

「東雲! きさま、どこまで卑劣な!!」


 ……どうしてこうなった。


(動かないで。大丈夫、あなたに危害は与えない)

(あ、はい)


 俺は今、彼女の人質として捕まっている。

 どうしてこうなった?


「柩を置きなさい」

「……我々のような端役は柩を持ち合わせていない」

「柩を置きなさい。三度目の忠告はないわ。この少年の首が飛ぶと思いなさい」

「くっ」


 『岩戸』の刺客さんたちが、黒い柩を足元に置いて手を離した。

 おー、嬉しいね。

 モブキャラの俺にも人質としての価値はあるのか。


「そう。そのままゆっくり振り返りなさい。手は頭の後ろで組むこと」

「分かった。だが、先に少年を解放してくれ」

「状況が見えていないのかしら? この場の支配権は私にある。交渉の余地はないわ」

「くっ」


 言われたとおりに背中を見せる『岩戸』の刺客。


 紅映は俺の耳元で吐息を零すと、懐から黒色の柩を取り出した。これこそが、彼女が『岩戸』から狙われている理由である。


「じゃあね、おまぬけさんたち」


 彼女の足を、黒い甲殻が覆う。

 これが彼女の超常の柩(パンドラ)

 蝗害(こうがい)の呪いだ。


 バッタ類の脚力を手にした(足にした?)彼女は、俺を抱えたままひとっとび。

 あっという間にその場を離れてしまった。



「やー、ごめんね少年くん。ごたごたに巻き込んじゃって」

「いえ、お力になれたなら幸いです」

「やー! いい子だね! なでなでしてあげよう」


 と、いうわけで。

 俺は東雲(しののめ)紅映(くれは)になでなでしてもらっていた。

 どうしてこうなった。


「……ああ、これかい? 気になるよね」

「いえ、そういうわけでは」

「このこのー、恥ずかしがるなって」


 超常の柩(パンドラ)を手に取って彼女は言う。


「これさ、お兄ちゃんの形見なんだよね」


 そう口にする、彼女の瞳は揺らいでいた。


 本当に、どうしてこうなった。


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