天使との出会い 5
「で、どうすんよ?マフィアの反応から、アレッシアの名前はあいつらにばれている。お前の呼び方を変えた方がいいんじゃねえか」壮大な話を聞いたクロンは心を落ち着かせるようにそう言った。話のスケールに圧倒されて頭が沸きそうであったからだ。「そうだな。偽名でも使おうか」アレッシアは指に顎を乗せて考えた。「ふっ、いいこと思いついたぜ。兄弟って言い合うのはどうだ。名前を呼ばなくて済むしわかりやすい」クロンの嬉しそうな顔と反面にアレッシアは汚らわしいものを見るように顔をしかめた。「バカかな君は。全然私たちは似てないじゃないか。どうしたんだ。頭をさっきの戦いでやられたのか?」しかし、クロンは譲らない。「いや、兄弟がいい。いちいち偽名なんて面倒だ。覚えてらんない。それに兄弟って言い合うと仲良くなりそうじゃん。もっと」クロンは照れながら答えた。「何言ってんだか。会ってまだ1日だぞ。僕は絶対にそんなことは言わん。分かったか」クロンは心底嫌そうに断言した。クロンはなんとか説得しようとしたものの、アレッシアは意見を変えなかったため、他の話題に移ることにした。「それにしても、アレッシアはマフィアが関係してるって言ってたけど、どのマフィアが敵か分かんなかいじゃあどうしようもないな。あの、襲ってきたやつに聞けばよかったなあ」クロンはモーリスのことを思い出していた。「あの時は、クロンの実力を見たかったからな、仕方ない。それに、僕が拷問しようもんなら止めただろ?」アレッシアは残念そうにこたえる。「そりゃそうだよ・・・。そんなことしてたら、止めない理由がない。てか、さっきも言ってたけど、お前さあ、上で見てたんだよなぁ。負けてたら、どうすんだよー。死んじゃうよ」クロンはじーとアレッシアを睨む。「不審者に意味わからない理由でストーカーされたこっちの身にもなって欲しいがな。君の実力を確かめるためだからな。死んだらそこまでさ。でも、結果としてその意味のわからない理由通りに事が進んでるんだからいいだろ?」アレッシアは話を逸らした。「ああ、まあそうとも言えるな・・・。まっいっか。ところで敵を探す方法はもう考えてあんのか?さすがに何もあてがないのは勘弁だぞ」クロンは期待を向けてアレッシアに尋ねる。「もちろん、あるさ。まあ、一応だけどな。そのために明日は就活だ。無職から抜けるぞ」クロンは意味が分からなかったが、特に深く考えずアレッシアに任せた。「それは楽しみだな。さって、結構疲れたし、そろそろシャワー浴びて寝るか」クロンは服を脱ぎ始めた。「・・・まさかと思うが、泊まるのか?このバカわ」アレッシアは愕然とした表情を浮かべた。「あー、もちろんさ。泊まる場所ないし」クロンはいまさら感を醸し出した。「はー。仕方ない。どうせ、なんか言っても部屋の前で寝ようとすんだろ、めんどくさいバカは。しかし、条件がある。僕がシャワーを浴びる前に寝ろ。絶対だ。絶対にだぞ。誓えよ。違えるなよ」アレッシアな念押しにしつこく丁寧に迫った。クロンははいはいと思いながらも了承し、そのままシャワーに、入っていった。
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「おい、モーリス。いつまで寝てる。起きろ。たく、五つ目の最後の仕事をしくじるとは。使えない奴だ」
顔を白髪の少年にビンタをされ、モーリスは目覚める。「・・・くっ、ああ。NT様、すみません油断しました。アレッシアのやつは2人でいてそれで負けてしまいました」モーリスは申し訳なさそうにNTという男に話す。「仕方ない。俺の想定が甘かったんだ。アレッシアは優秀な奴だ。あいつの風と聖の魔法は魔法学校でも最高岬の実力らしい。そんなやつに連勤のお前に任せたのがそもそものミスだ。それにもう1人いたのなら、失敗するのは当然だ」NTはそう元気づけようとしたがモーリスにとっては1人に負けたとは言えない苦しい空気に包まれた。「はあ、そうですね。仕方ないですね。では、どうします?今晩もう一回襲います?」モーリスはNTの機嫌を取ろうとする。「いや、モーリスの万全を待つとして、相手の情報も探りたい。襲うのはまた後日にしよう。ところで、アレッシアの情報がもっと詳しく知りたい。後で戦闘内容を詳しく教えろよ。分かったかモーリス」NTは純粋にモーリスを信じてそう言った。「・・・やべ。適当に話作らなきゃ」モーリスは五連勤からまた一仕事増やされてしまった。