天使との出会い 4
一連の行動を見ていたアレッシアは満足をしていた。「クロンの神器、あれはそこらの神器とは比べ物にならない。そして、クロンの奥義とも言えるあの技。安心した。あの自信の持ちようにふさわしい奥義をきちんと持ってるとはな」クロンの実力をきちんと見れたアレッシアは彼との偶然の出会いに思わず笑みをこぼしてしまった。「魔法の得意属性は性格によって変わるからな。最初、ただの陽気な奴が力属性というもんだから、失望しかけたけどまさかあんな怒りを向ける男だったとは」そう言うと、アレッシアは建物から降りていった。クロンに自身の目的を話すために。
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「あの神器、ギャングのものか。しかし、あの実力はギャングの中でもそれなりに上の方だ。アレッシアはなぜ、あんな奴らに追われている」クロンはアレッシアに不信感と期待感を抱いていた。「ギャングの本気度が高い行動をしたんだ。それなりの理由があるはずだ」クロンがとぼとぼアレッシアを探していると、「やあ、見てたよ。言うだけの実力があったね。賞賛に値するよ」アレッシアがクロンを後ろから見上げるように話しかけた。「とりあえず、理由を説明して欲しいなアレッシア。どうせ、お前が無職なのと理由があるんだろ」クロンは冗談ぽく言っているが、どこか怒りを滲ませていた。「分かったよ。君は実力があるからね。話すよ。ふふふ」アレッシアはイタズラっぽく笑って続けた。「しっかし、君は力属性だね。今の隠せない怒りだったり、さっきの戦いの最後の容赦なさといいね」「よしてくれ」クロンは不機嫌そうに言う。「直したいんだ。こういう性格を。嫌いなんだよこの性格が」アレッシアは陽気さが一気に消えたクロンに驚きながらも了承した。「分かったよ。しかし、驚いた。あんなに明るかったから自己肯定感も高いと思った」「別に、いいだろ」本格的に起こりそうなクロンを見てアレッシアはそのまま黙り、自身の泊まるホテルのまで向かった。
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クロンはソファに座り、水を飲みながら、自身の疑問を口にした。「マフィアが襲ってきた理由を知りたい。それが一番気になる」クロンがそう言い始めると、ベッドに座っていたアレッシアは立ち上がり、机から新聞を取った。「どこかなっと・・・。おっと、あったあったこれだこれ、少し見てくれ」その記事は強盗事件の記事でここ最近連続で起きているとの内容だった。「ここ最近、話題になってるだろ?連続強盗事件」アレッシアは新聞をクロンに見せる。「すまん、最近この国にいなくてな、知らなかった。でも、記事にはそう書いているな」クロンはアレッシアの目を見る「この記事には強盗事件の犯人は悪評高い富豪や官僚を襲い、殺害している。そして金庫の金の一部の大半を奪い、今も犯人は分かっていない。しかし、ネットでは義賊というやつまで現れている」アレッシアは新聞をしまい話を続けた。「そして、こんな噂がある。来年の大統領選挙にシルフィという男が出馬する」「あぁ、知ってるよイタリア1の大富豪だろ。あんまりいい噂を聞かないがな。そして、確か」アレッシアはクロンの言葉を遮る。「そうだ、自身の財産を投げ売って国民に配るという公約を出している」アレッシアは興奮気味に話を続ける。「民衆はもちろんこの政策に喜ぶ。多くの人が投票し、シルフィは勝つかもしれん。だけど、おかしくはないか。国民に一定の額を配るには相当の金がかかる。金に関しては悪評があるシルフィがなぜ自身の金を失おうとするか」クロンは少し考えこう言った。「名誉のためじゃないか」「それもあるだろうけど、そうじゃない。・・・あるんだよ。配っていい金が。強盗事件の金はシルフィが持っている。僕はそう考えている」クロンは驚き尋ねる「証拠はあんのか?そんなの大事件じゃないか」アレッシアは自信満々に答える。「証拠はある。見せることはできないがな。おそらく、マフィアや警察関係の奴らもこの事に協力している。私の考えでは、マフィアたちが強盗をやり、警察達が証拠を隠し、金をシルフィに渡す。これを繰り返している」クロンは少し呆れながら「証拠が見せれないんじゃ、信用できると思うか」と投げかける。「お前だって、意味のわからない理由で私に付いてっただろストーカーが。信用しなきゃ、お前の勘が外れたっていう話なだけになるぞ」クロンは反論したかったが、アレッシアの言ってることに正当性が少しあり、言い返せなかった。「ともかく、ここからが本題だ」アレッシアは演説を始めた。「私たちはシルフィ達が盗んだ金を盗む。盗まなくても、この事件を世間に明らかにする」アレッシアは声を荒げて言う。「そもそも、強盗殺人自体やっていることが間違っている。僕はそれを許さない。だが、このことを世間に伝えると私たちの身の危険は異常な程高くなる。それなら、金を盗んで、その分の補填にする。どう?クロン」アレッシアはクロンに微笑みかける。「そうか、マフィアが襲って来たのは証拠隠滅か?怪しい話だが、納得はできる」クロンは納得したように頭を頷かせる。「だが、何よりも事件を明らかにして金を得るっていうのは夢がある。うん、いい。凄くいい」クロンは顔が明るくなり、自身の陽気さを取り戻していった。「でだ、金は何処にあるのかわかるのか?」クロンはアレッシアに期待感を滲み出している。「いや、分からない。それどころかマフィアは何処の奴らか、誰がマフィアに協力してるかも分からん」アレッシアはクロンに申し訳なさそうに答える。「それらを明らかにする必要があるんだ。分かっているのはマフィアが強盗をしていることと、金が盗まれてシルフィのとこに行っていることだけだ。証拠を探さなきゃいけないんだけど、危険だからな。私1人でもいけると思うが、せっかくだ。クロン、お前も来てくれ」アレッシアはそう頼んだ。彼の瞳は凛々しかったが、言葉に反してどこか怯えたような雰囲気をクロンは感じた。「ああ、もちろんだ」クロンはアレッシアの頼みに応じた。「ふっ、そうか。ありがとな」アレッシアはどこか安心したような、明るい顔でそう返事した。