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第9話 女冒険者

忍者関連のダンジョン改装が一段落した。

この情報が持ち帰られ、対策されるまではいくらか時間があるはず。

その機を狙って『領域』の拡張をすることにした。


『領域』とはダンジョンコアの『根』が張り巡らされた土地のことだ。

ダンジョンコアは『領域』内の動植物から魔力を受け取っている。

『領域』拡張は俺やダンジョンが強くなるための必須事項。

しかし、拡張にも魔力を消費するため、拡張ばかりしていては守りが手薄になる。

タイミングとバランスを考えなければならない。


『領域』管理アプリを開くと、正六角形で区分けされた周辺地図が出る。

六角形のマスは操作の最小単位で『ヘクス』と呼ばれている。

中央の緑に色分けされたエリアが今の俺たちの『領域』だ。

その『領域』の北東に接している黄色いエリアはシュバルツの『領域』。


他の『領域』と接しているヘクスにだけ、それぞれ数字が表示されている。

緑のマスは各1万、黄色いマスは各100万だ。

これはその土地の『根』に込められた魔力量で、防御力に直結する。

奪うにはこの倍以上の魔力を投じる必要がある。

ただ、俺は『根』が機能する最低限の魔力しか込めていない。

シュバルツがその気になれば、俺の『領域』はすぐに侵食されるのだろう。


地図が色分けされているのは自分の『領域』の隣接ヘクスとその隣までだ。

どこで他のダンジョンマスターの『領域』とぶつかるかは手探りになる。

現状で俺が確認できるのはシュバルツの『領域』の南端の一部だけだ。


北東に拡張してシュバルツと無用な摩擦を生むのは避けたい。

西の山脈では俺が来るより少し前に大きなダンジョンが攻略されたらしい。

その跡地にいくつもの新しいダンジョンが生まれていると思われる。

なるみの『姉妹』たちと、俺と同時期に生まれたマスターたちだ。

激戦区に進出するのはもう少し力を蓄えてからにしたい。

となると、残るは南側か。


現在の備蓄魔力で拡張できるのは18ヘクス。

その全量を『領域』拡張に投入する。

10ヘクスほど拡張したところで、南東に黄色いマスが見えてきた。

俺が出会う2人目のダンジョンマスターになるのだろうか?

シュバルツのように友好的な人間ならいいが・・・。


好奇心もあって隣接ヘクスまで拡張してみる。

あまり距離を詰めて刺激するのはよくないかもしれない。

しかし、相手からも見えているのだろうから、ここで遠慮する意味もないだろう。

黄色いマスに表示された数字は40万。

シュバルツほどではないが、うちよりはずっと強そうだ。


なるみ「かずきおにぃちゃん、大変!冒険者が来たよ」

一樹「何階層だ?」

なるみ「まだ外なんだけど、見て」


モニターに川で水浴びをしている少女が映し出される。

反射的に顔を背けた。


なるみ「もう!照れてる場合じゃないでしょ!ちゃんと見て!」


確かにこれから命のやり取りをするときに気にすることではないか。

改めて画面を見ると、水浴びをしているのは2人の女。

筋肉質の赤毛の大女と、金髪の少女だ。

その傍らでは淡い栗毛の魔法使いが周囲を警戒している。


一樹「こいつら、強いのか?」

なるみ「分からない。でも、かずきおにぃちゃんは女の子と戦えるの?」


最初にダンジョンの外で迎撃したとき、結局女は攻撃できなかった。

ボス部屋戦闘ではアーチャーが仕留めてくれたから俺は手を出していない。

女を攻撃するのに抵抗があるのは間違いない。

しかし、ダンジョンに侵入してくるなら殺さなければならない。


一樹「これはリアルタイムの映像なのか?」

なるみ「そうだよ」

一樹「外で迎撃する」


できれば殺したくはない。

武器を手放している今は好機だ。

急襲して武器を破壊すれば、諦めて帰還するだろう。

俺は例の「魔族の下級兵士」の格好に着替えた。


忍者の情報はまだ漏れていないはずだ。

それでもこのタイミングで来たということは、オークには勝てる自信があるということ。

先日の4人組が未帰還という情報は掴んでいるだろうか?

もしそうなら、あの4人組よりも強いということかもしれない。


俺は冒険者が荷物を置いた岸側からそっと近づいた。

水浴びしているのは金髪の少女と栗毛の少女。

赤毛の女が見張りを代わったようだ。


荷物までの距離は当然だが少女たちのほうがずっと近い。

しかし、無防備なところを急襲されれば距離を取りたがるだろう。

なら単純なかけっこにはならないはずだ。

それにスピードなら俺のほうが何倍も速い。


ガサリと敢えて大きな音を立てて茂みから飛び出す。

一気に跳躍し、少女たちと荷物の間に着地した。

横合いから短槍が突き出される。

当然予想済みの攻撃だ、楽に避けられる。

そのまま横なぎの攻撃。

速度も遅く軌道も読みやすいが、避けるこちらも動きが大きくなる。

女はさらに横なぎの攻撃を続ける。


俺を仕留めようと言うより、牽制しようとしているようだ。

2人の少女が赤毛の女の背後を駆け抜ける。

赤毛は俺を荷物から遠ざけようとしているのか?

2人が武器を取って加勢にきたら手に負えなくなる。


赤毛の次の横なぎを避け、今度は少女たちの方へ向かう。

それを遮るように短槍の突きが俺の鼻先を襲う。

それを狙って棍棒を目いっぱい振り下ろす。


短槍が折れ、少女たちは足を止める。

赤毛の女は折れた槍と盾を構えて俺と少女の間に立つ。

さすがに荷物は諦めたか。


俺は赤毛の女の盾にやや控えめに棍棒を振り下ろす。

捻挫か脱臼くらいはするかもしれないが、そこは我慢してもらおう。

直後、ひしゃげた盾が俺の眼前に迫る。


目の前が一瞬真っ白になり、おれは無様に地面に転がった。

大したダメージはない。

力も防御力も俺が勝っているはずだが、体重で負けたか。


俺は即座に立ち上がって武器を構える。

武器を拾おうと駆け寄ってきた少女たちの足が止まる。

頃合か。


俺は足元の剣と杖を引っつかんで撤退した。

赤毛の女の武器と盾は破壊できた。

他の2人の武器も取り上げた。

予想よりも苦戦してしまったが、当初の目的は達成できた。

帰ったら忍者たちに受身を習おう。


なるみ「おにぃちゃん、おかえり!」

一樹「武器は全部取り上げてきた。とりあえず、今回は撤退するだろう」

なるみ「おつかれさまでした。ん?それは?」


奪ってきた剣の柄に白い布が引っかかっている。

なるみが広げると、中央に赤いリボンのついた白いパンツが現れた。


なるみ「かずきおにぃちゃんってこういうの好きなの?」

一樹「いや、違うぞ。それはな・・・」

なるみ「でもさすがに下着泥棒はどうかと思うなー」

一樹「待て!違うんだ、俺は武器を取り上げようとしただけだ」

なるみ「冗談だよ。全部見てたから」

一樹「お前は・・・」

なるみ「それで、実際どうなの?こういうの好きなの?」

一樹「それはまあ、そうかもしれんが・・・」

なるみ「ふむ、、覚えておきます」

一樹「忘れろ!」

なるみ「記録しましたー」


モニターにはあわただしく服をきる少女たちの姿。

さすがに替えの下着は持っていたようだ。

武器だけ奪うつもりだったが、余計な恨みまで買ってしまったかな。

だが今は、命のやり取りをせずに済んだことを喜ぶとしよう。

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