第84話 仮設トンネル
人気の踊り子の写真を売り出す商売は予想以上にうまく行った。
もっとも、自転車操業のうちの財政では大胆な投資は難しい状況だった。
本来であれば新しい分野は行政が支援金を出すなどすべきなのだろう。
しかし、今回は悪いが民間にリスクを負ってもらう形を取った。
大体の流れとしてはこんな感じだ。
まず、カメラ型ゴーレムを設置した撮影所を時間いくらでレンタルする。
そして、撮影所に設置したモニターで売りに出す写真を選んでもらう。
サイズと値段を設定してもらい、注文があれば8掛けで販売店に卸す。
モデル達が営業するためのサンプルも希望があれば8掛けで卸した。
俺は注文を受けてから印刷するので、リスクはほぼ販売店が負う形だ。
印刷費の問題があるので、値段については最低額を設定しておいた。
売上の分配は税2割、印刷所2割、販売店2割、モデルと撮影スタッフが4割だ
印刷ゴーレムは俺しか使えないから、領の取り分が4割となる。
俺がカメラマンを勤める場合は5割くらいになるかな?
俺が物として入手しないといけないのは木片チップと安インクだ。
アルケミストたちが安インクを原料として高級インクを精製する。
製紙ゴーレムが木材チップから写真用の高級紙を製造する。
元手として必要な現金はあまり多くは無い。
アルケミストも製紙ゴーレムも印刷用ゴーレムうちのガーディアンだ。
したがって、現金という形で必要になる人件費はゼロという事になる。
消費する魔力をお金に換算するのは難しいので今は考慮しない。
お金の収支だけを考えるなら、かなり利益率の高い事業になる。
踊り子たちも一度の撮影で継続的に収入が得られるのでなかなか好評だ。
加えて王国の貴族や豪商たちも自分たちの写真を撮りたがった。
王国にも写真はあるらしいのだが、良質なものは王家秘蔵の魔道具のみらしい。
それは式典や社交界デビューなど特別な機会にのみ貸し出されるものだという。
その為、家に自分たちの写真を飾ることは一種のステータスにもなっている。
それを思えばうちの撮影所はかなり身近でお手ごろ価格だ。
そういった需要に応え、色街とは別に百貨店の1室にも撮影所を作っておいた。
A1サイズの家族写真とかを額縁に入れて持ち帰る客もけっこういる。
額縁用の木工職人やスタイリストなんかも手配すれば収益は更に上がりそうだ。
背景用の花や彫刻のレンタル、貸衣装なんかもあるといいかもな。
食料の供給についても状況はかなり改善されている。
領民はもちろん、『経済特区』で提供される食材も今はほとんどが自領産だ。
これで『経済特区』で消費されるお金の大部分が領民の収入と領の税収となる。
金貨2000枚を返すには至らないが、とりあえずの黒字化は成功だ。
あとは、もしもの時のための保存食の研究と食糧備蓄を進めていこう。
ただ、酒と綿や絹、宝石や貴金属、高級調度品なんかはまだ輸入頼りだ。
その辺りも順次、国産化を進めていきたい。
宝石や貴金属は仕方ないが、宝飾加工は国内でできるように職人を育てたい。
木材と粘土はたぶん王国より豊富なはずだから、調度品は完全国産化を目指す。
魔道具技師も国内で育てたいが、これはどこから手を付ければいいのやら。
財政に余裕が出てきたので、王国で買える本はいろいろ取り寄せてはいる。
ただ、一般公開されている技術は子供の工作の域を出ないように思える。
クリスやキャシーの口添えがあればもっと高度な本も買えるのだろうか?
だが、できれば公爵家にはこれ以上借りは作りたくない。
王国で売られている魔道具の現物を取り寄せて分解してみるか?
この世界の特許権とかの知的財産権ってどうなってるんだろう?
その辺の国際的な法整備がなくて技術が秘匿されているのかもしれない。
魔道具についてはおいおい考えていくとしよう。
メインダンジョン付近では、現在庭園風植物園を準備中だ。
メインダンジョンのある山の南側斜面から、反対側の山の北側斜面にかけてだ。
中央の小さな谷を流れる小川も使い、水辺の植物なども紹介していく。
希少種の保護研究エリアも含め、総面積25ヘクタールほどの予定だ。
それはそれで順調なのだが、気になるのがダンジョン入り口周辺だ。
なにやら物々しい砦、というか、小さな城ができつつあるように見える。
西側に簡単なバリケードを作って欲しかっただけなんだけどな。
一樹「随分と立派な物ができつつあるようだな」
カシ「ええ、王国軍を相手にするには頼りないものではありますが、それなりの日数は篭城できるでしょう。鬼族の里からの援軍を待つことはできるかと存じます」
一樹「なるほど。ところで、予算は王国金貨で100枚程度と言った筈だが、足りるのか?」
俺が用意したダンジョン地上部は、正面に角を向けた60m四方の石組みだ。
今組まれている砦は、それを45度回転させて拡大したような形だ。
外枠はダンジョンの4角の先に大きな柱が加えられている。
単純計算で約84m四方の正方形みたいな感じか。
西側は少し窪んで両開きの門があり、両脇に矢狭間が設置されている。
カシ「仰るとおり、通常であれば2000枚ほどは必要でしょう。しかし、今回は瓦代程度で済みました」
一樹「他の材料と人件費はどうなってるんだ?」
カシ「材料は周辺から集めました。幸い材木と粘土は豊富にあります。住人たちも自分たちの家族を守るためとあらばと、無償で働いてくれています」
一樹「無償でか?それは・・・・大丈夫なのか?」
カシ「住民たちも感謝しているのですよ。正直を言えば、先日までは防備が少々心細い印象がありました。居候の身とはいえ、失礼ながら盾にされているように思う者もいたようです」
一樹「申し訳ない。それについては弁解のしようもないな」
カシ「ですが、これ程の兵と設備をご用意いただきました。これだけ頑強な石組みならばちょっとした城の土台にもなりましょう。まだほとんど空とはいえ、食料庫もかなりの容積があります。加えて貯水槽にキノコ部屋。十分に篭城戦に耐えるものです。ただ柵を置くだけではもったいないのではありませんか?」
それはそうかもしれないが、これ程の作業を無償でか。
元はと言えば、彼らは半年ほど前に戦火で焼け出された難民だった。
自分や家族を守りたいという意識は強いのかもしれない。
そういえば開拓村の住民もけっこう自主的に伐採を手伝ってくれたな。
この世界では地域の事業に住民が無償で参加するのが一般的なのか?
日本でも田舎に行ったら町内会の清掃に毎週駆り出されて辛い、なんて話も聞く。
田舎なら単位面積当たりの税収が低いわけで、都会みたく業者任せにはできない。
だから住民が自らの手でいろいろするんだろうが、それも同じという事か?
一樹「なるほど。だが、無償でというのは悪いな。税や家賃、耕作地の賃料に代わる労役と認めよう」
カシ「それは助かりますが、よいのですか?」
俺やガーディアンたちは森さえあれば生きていける。
それに、この分だと放って置いても食糧備蓄を頑張ってくれそうだ。
一樹「問題ない。その代わり、食料備蓄は自分たちでしっかりやって欲しい」
カシ「承知しました」
メインダンジョン入り口には剣士200人、アーチャー200人、魔女100人。
さらに周辺の森には忍者300人を潜ませて鬼族の村を守っている。
未完成とはいえ、鬼族たちで更に砦をかぶせて防備を強めようともしている。
鬼族とメインダンジョンの防備はさしあたり問題はないだろう。
だいぶ遅くなってしまったが、そろそろ予定していたトンネルを掘るとしようか。
メインダンジョンのある烏帽子山の西側の麓に新たにサブダンジョンを造る。
鬼族の『聖域』からの10町ラインぎりぎりの位置、植物園予定地の真正面だ。
トンネルが完成したら、きれいな花園で観光客をお迎えするという趣向だ。
そこから10町ラインに沿って西側へとダンジョンを拡張していく。
『魔界』と『人間界』を結ぶ架け橋、山脈横断トンネルだ。
サブダンジョンとはいえ、コアを壊されても困るので防備は固めないといけない。
防衛設備やガーディアンの配備が済むまでは非公開にしておこう。
できれば地下だけを使った地下鉄にしたかったが、さすがに山脈は起伏が激しい。
所々はダンジョン地上部を橋として造成して谷を越える必要もあった。
植物園内の建物や上下水道のため、ダンジョンは植物園予定地の地下にも広げる。
これで総面積600ヘクス、地下3層、地上は所により2層の大ダンジョンができた。
サブダンジョン自体の維持コストだけで1日だいたい1470万ポイント。
メインダンジョンが1日160万ポイントであることを考えるとかなり大きい。
これに地下鉄やガーディアンを加えるといったいどれほどになるのやら。
いや、むしろメインダンジョンが小さすぎるのか?
メインダンジョンは俺たちの生命線、もっともっと深く広くすべきか?
『領域』拡張を頑張ったおかげで魔力収支は1日4億ほどのプラスになっている。
だが、侵入者が多くなればガーディアンの補充でもっと出費が多くなるだろう。
他のダンジョンマスターとの戦いもあればそこでも出費は多くなるだろう。
そして、ダンジョンを広く深くしていけば維持費も増大する。
魔力を惜しまずダンジョンをもっと拡張すべきだろうか?
それとも今後の戦いに備えて温存すべきだろうか?
現状で1日辺りの収入6億に対し出費が2億ほどだ。
バランスが悩ましいが、さすがに出費を惜しみすぎかもしれない。
ダンジョンは積極的に拡張し、ガーディアンも増やすことにしよう。
それはそれとして、今はこのトンネルを完成させよう。
ダンジョンの地下2層に、西に向かって鉄道を敷設する。
場所によっては地上1層か2層となって谷を越える形になる。
せっかくなので、そこは谷を見下ろす景色を眺められるようにしよう。
なるみ「かずきおにぃちゃん、開拓村のほうでお客さんみたいだよ」
一樹「誰だ?」
なるみ「冒険者ギルドの2人だね」
一樹「分かった。すぐに行く」
俺はなるみのいるメインダンジョンのコアルームまでは瞬間移動できる。
しかし、開拓村へは自分の足で走っていかなければならない。
もっとも、ダンジョンの魔力のおかげで山越えも10分ほどで終わる。
だが、今後は更に時間が短縮されることになるな。
俺は完成したばかりの鉄道を自分の足でかけていく。
日本では線路は普段は踏み入っただけで犯罪になる場所だった。
そんな場所を一人で駆けているのはなんとも不思議な気分だ。
数分の疾走の後、俺は開拓村の北側の大通りに出た。
大通りの南側には警察署、迎賓館、高級ホテルが並んでいる。
まあ、どれも今のところはそういう名前の建物があるだけだけどね。
人員、内装、調度品といった中身はおいおい揃えていく事にしよう。
領の財政は僅かながら黒字になってきたし、ようやく人も増やせるな。
一樹「すまん、待たせたな」
アビー「いえいえ、お気になさらず」
開拓村拠点の執務室に入ると、既にアビーとアデーレが待っていた。
立ち上がって迎えた二人は、またしても「魔族風」ビキニ姿だ。
村の制圧時になるみが見せたビキニを真似しているのだ。
アビー「今日もしっかり決めてきました!如何でしょう!?」
二人はこちらにお尻を向けてポーズを取る。
小さめのビキニからはみ出たお尻がなかなかかわいらしい。
アビーはなにやら楽しそうだが、アデーレはちょっと恥ずかしそうだ。
一樹「なるほど、二人ともかわいいね」
アビー「ありがとうございます」
蝙蝠風の羽と尻尾のついた黒のレザービキニ。
細身のアビーは似合っているが、アデーレは立派な胸がこぼれそうだ。
『魔族』への友好の意思表示という名目だが、実態はアビーのコスプレ趣味か。
アビー「お問い合わせのあったエボシ山周辺のダンジョンの件ですね。詳細はアデーレから説明させて頂きます」
一樹「わかった、頼む」
アデーレ「はい、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げるアデーレの胸の谷間が目のほよ・・いや、目の毒だね。
アデーレ「ただ、比較的新しいダンジョンが多く、あまり分かってはおりません。まずはエボシ山内部のダンジョン、こちらは一樹様の管理するダンジョンということでしたね」
一樹「ああ、その通りだ。この街に人間族を住まわせているように、そこには鬼族を住まわせている。ようやく戦争も終わった所だし、冒険者には下手な行動は慎むよう言っておいて欲しい」
アデーレ「わかりました。一応周知はしておきますが、われわれはあまり強制力を持ちません。その点はご了承願います」
一樹「承知した」
アデーレ「ありがとうございます。次に、エボシ山の南東にあるのが通称スリングダンジョンです」
一樹「スリング?」
アデーレ「はい。スリングショットのような石礫の攻撃を高速で繰り出すゴーレムが多数配置されているとのことです。ダンジョンマスターの目撃情報はありません」
一樹「なるほど」
アビー「ダダダダダーッて秒間何発って勢いで飛んでくるらしいですよ。シンプルですがなかなか厄介です」
一樹「それはすごいな」
マシンガンをゴーレムで再現した感じだろうか?
それも真似して見るかな?
アビー「攻撃力はそこまで高くないようでして、大盾を掲げて突進という形で攻略した人も居たみたいです。ただ、盾役の負担が大きすぎて3階層で断念したそうです」
一樹「なるほど」
俺と同時期に生まれたダンジョンマスターなら、魔力に余裕がなかったのかもしれない。
俺より山脈中央寄りだから、競争も激しかったろうしね。
今の俺なら高速かつ強力なマシンガンを撃つゴーレムも作れるかな?
アデーレ「次に、エボシ山東部の川を越えた場所にあるのが通称ゴブリンダンジョンになります」
アデーレが地図を指そうと上体を傾けるたびに胸の谷間が目に飛び込んでくる。
というか、そんな呼ばれ方をしているのか?
確かに表層はゴブリンばっかりだけどね。
アデーレ「名前の通り大量のゴブリンが住み着いています。地下2層のボスがオークであることまでしか分かっていません。ただ、最近大きく改装されたようです」
一樹「ほう」
最初のダンジョンに増築した『えろえろダンジョン』の事だな。
アデーレ「増築された部分はダミー通路のようでして、コアルームへの通路は見つかっていません。また、小柄な女性が全裸で入れば攻撃されない、との報告があります」
一樹「敵意が無いことを示せば向こうも攻撃しないということか?それにしても、それを試した冒険者も剛毅だな」
アビー「なんか、そういう指示書きがあったらしいんですよ。裸の小柄な女のみ入ることを許す、みたいな」
男は駄目とは書いたが、女の入場を許すとは書いていない。
女は攻撃しないが「侵入者」という扱いであることは変わらない。
だが、俺は関わっていない態でいかないとな。
一樹「ほう。中はどうなってるんだ?」
アビー「遊技場みたいな感じらしいですよ。遊具と温水プールがあるそうです」
一樹「それは楽しそうだな」
アデーレ「浴槽と洗い場のようなものもあるようですね。また、高価なキノコや魔石、コインなどが点在しているとのことです」
一樹「遊技場で宝探しもできるわけか」
アビー「すごいですよね。ほんとうに攻撃されないなら私もちょっと行ってみたいです」
こちらの指示書きに従っている限りは本当に安全だよ。
ただ、飽くまで「侵入者」だから管理者に監視はされるけどね。
一樹「そうだな。俺は行けないのが残念だ」
アデーレ「周辺で『プライベート・ブラック』さんらしき魔族の目撃情報がありますが、彼のダンジョンなんでしょうか?」
一樹「さあな?生憎と近所付き合いは盛んじゃないんだ。それに、知っていても教えるわけにはいかない」
アデーレ「そうなんですね。失礼しました」
一樹「まあ、ほとんどの『魔族』は人間族と戦いたいってわけじゃないし、中にはそういう酔狂なやつもいる。その指示書きとやらを守っておけば問題ないんじゃないか?」
アビー「魔族にもそういう遊び好きな人っているんですね」
一樹「ああ、その辺は人間族とそう変わらないと思うぞ」
アデーレ「そうなんですね。確かに、今までのところ指示に従った状態で攻撃された、という事例は報告されていません」
一樹「なら問題はなさそうだな」
アデーレ「はい。少量ですが希少な素材も見つかっていますので、冒険者ギルドとしては踏破禁止ダンジョンに指定し、継続的に使わせてもらいたいと考えています」
一樹「なるほど。少量とはいえ安全に遊びながら希少素材を入手できるなら確かにいい場所だな」
アビー「そうなんですけど、なんとかって南部貴族が圧力をかけてきてるみたいなんですよ」
一樹「圧力?」
アデーレ「若い女を誘い込むような場所がゴブリンのダンジョンにあるのは怪しい、とのことでして。新区画への進入禁止とダンジョン本体の早期破壊が望ましいと主張しているようです」
それを言われると反論が難しいんだよな。
ゴブリンを連れて来たのは失敗だったかもしれない。
一樹「だが、ルールを守ったのに攻撃されたという報告とか、未帰還パーティーとかはいないんだろう?」
アデーレ「はい。それに冒険者の仕事には危険が付き物です。実際に入るかはそれぞれが自己責任で判断するというのが原則です」
一樹「俺がはっきり安全だと言ってやれればいいんだけどな。まあ、現状で犠牲者は皆無、または極少数なんだろう?つまりリスクは低いって事なんじゃないのか?」
アデーレ「こちらで把握している限りでは確かにそうですね。ただ、群れの規模の割りにゴブリンの上位種が多いようなんです。その為、なんらかの方法で人間族の女を捕らえている可能性が高いという指摘があります」
食糧事情がいいせいかな?
くず肉とか余った臓物とかあげてるしね。
ゴブリンアーチャーの訓練のためにリスとかを狩って与えてもいる。
一樹「なるほど。まあ、ダンジョンに入る以上は危険がないとは言い切れないな。いずれにせよ俺としては仲間の住処の破壊については当然賛同できない」
アデーレ「そうですよね」
アビー「それに、マリョクタケみたいな需要の高い素材も見つかってるんですよ。皆無じゃないにしても、リスクが低いならギルドとしては温存したい場所ですね」
一樹「役人には頭の固い奴がちょくちょくいるみたいだな」
アビー「そうなんですよ。困ったもんです」
アデーレ「そういう事情なので、ギルドとしては立ち入り禁止と言わざるを得ないですね」
一樹「そうか。せっかくそいつが遊び場を提供してくれてるってのに残念なことだ」
アビー「まあ、強制力なんてないんですけどね」
一樹「そうか、そうだったな」
アデーレ「魔族の方からすると、入られて大丈夫なもんなんですか?」
一樹「それは人によるし場所にもよるんじゃないか?実際に俺はその場所を見てないが、小柄な女は入っていいんだっけ?そいつがそう書いてるなら大丈夫だろ」
女は入ってよし、なんて書いてないけどな。
けど、俺はこの二人から聞いた情報を元に話すしかない。
アデーレ「そうなんですね」
アビー「では、冒険者にはそのまま伝えます。立ち入り禁止って言ってる貴族がいるけど、今のところ犠牲者の報告はなし、たまに希少なキノコが取れます、と。後は冒険者個々の判断ですね」
一樹「なるほど、それでよさそうだな。破壊推奨の方は伝えなくていいのか?」
アデーレ「それも伝えないといけませんね」
アビー「まあ、人間のやることなので、うっかり漏れちゃうこともありますけどね」
悪戯っぽく笑うアビーには「魔族風ビキニ」がよく似合う。
一樹「それは仕方がないな」
アビー「そうですよねー」
一樹「違いない。ところで、ダンジョンから魔物があふれる様子とかはないかな?」
アデーレ「スリングダンジョンの方はそれらしい報告はないですね。ゴブリンダンジョンの方は普通にうろついてるようです」
一樹「わかった。では、川の西側に来ないように俺のほうでも警戒しておくことにしよう。川を渡るなら自己責任でな」
アデーレ「承知しました」
アビー「例のトンネルっていつ頃開通しそうなんですか?」
一樹「当初の予定よりはだいぶずれ込んでしまったが、もうじき開通できると思うよ」
とりあえず穴だけは空けたが、防備とか地下鉄とかも準備しないとね。
アビー「楽しみにしてます。危険もなく温水プールで遊びながらお金も稼げるダンジョンなら、私もちょっと行ってみたいし」
あの『えろえろダンジョン』を全裸で駆け回るアビーか。
それは俺もぜひ見てみたいな。
一樹「そのときは俺の配下に入り口まで護衛させよう。ゴブリンの巣窟と隣接してるなら、入るまではちょっと危険だからね」
アビー「おおー!ありがとうございます!アデーレも行こうね!」
アデーレ「いえ、私は・・・ちょっと」
アビー「えー、行こうよ。領主様もこう言ってくれてるんだし」
アデーレ「私は・・・その、体重がどうかな、って」
あー・・・どうなんだろ?
彼女も太ってはいないが、重量制限はけっこう厳しめの設定なんだよね。
武具を持ち込めないように、獲物を大量に持ち出せないように。
一樹「なにか指示書きがあるって話だったが、具体的な数字が書いてあったり、試せたりとかはしないのか?」
アデーレ「重量制限に引っかかると飛び石が沈むらしいのですが、一つ目の飛び石が沈んだところで引き返せば攻撃はされない、とは聞いています」
一樹「なら、いくだけ行ってみたらどうだ?」
アビー「そうだよ!いこいこ」
アデーレ「は、はい・・・」
行ってみて駄目だったらすごい切ないよね。
まあ、あの飛び石は1つ1つが単機能ゴーレムだ。
基本的には一定の重量を超えたら沈むようになっている。
アデーレのときは俺がモニターして、ちゃんと全裸なら支えるように指示するかな。
一樹「決まりだな。トンネルが完成したらまた連絡するよ」
アビー「はい、お願いします」
アデーレ「はい・・・」
アデーレが「魔族風ビキニ」からこぼれそうな胸を抱えて不安そうな顔をする。
大丈夫だよ、って言ってあげたいけどここは仕方ないか。
アビー「ではでは、失礼しまーす」
アデーレ「失礼します」
一樹「ああ、今日はありがとう」
ビキニ姿のかわいらしいお尻と太ももに視線が吸い寄せられる。
危険の無いダンジョン、ということなら一般の女の子も入って来れるか。
ただ、ゴブリンの巣窟と隣接してるのがネックなんだよね。
雪風たちでゴブリンを抑えることはできるけど、姿を見せられないしな。
あ、機動隊仕様のシャルロッテたちが護衛するって形なら大丈夫か。
よし、楽しみも増えたことだし、トンネル完成を急ぐとするかな。




