第74話 ブロマイド
公衆浴場や学校を中心にコインロッカーを配備した。
これらのコインロッカーも単機能ゴーレムを使うことにする。
職人を探して作って貰えば維持に必要な魔力は節約出来る。
ただ、偽造コインとかセキュリティなどの対策が手間だ。
ガーディアン達ならダンジョンコアを通じて経験を共有出来る。
偽造コインの判別能力が一様に上がって行くというわけだ。
加えてコイン仕様の追加や変更に対応するアップデートも一瞬だ。
更に放置荷物や不審物への対応もしやすい。
俺か俺のガーディアンが開けろと言えば直ぐに開く。
マスターキーが不要な為、ピッキングやマスターキー盗難の心配が無くなる。
ダミーでマスターキー用っぽい鍵穴は付けとこうかな。
街の運営と言う点で言えば職人に依頼した方がいいのかもしれない。
そうすれば雇用創出と技術発展に繋がっていくのだろう。
俺が居なくなった後の管理の問題もある。
ただ、今回は金も時間もないのでゴーレムで行こう。
風呂には入って欲しいし、置き引き対策はちゃんとしないとね。
開拓村での伐採と抜根の作業もだいぶ進んできた。
こちらについてもそろそろ俺の仕事の時間だろう。
街道沿いに図書カフェ、その東に美術館、博物館、図書館と作っていく。
そしてその北側には高級ホテル、迎賓館、警察&消防を作る。
さらに北の小山というか丘の向こうの北側斜面には団地&託児所を作る。
大農園を作る予定だから、そこの労働者が暮らせる場所は確保しないとね。
もっとも、ダンジョンの地上部にそういう名前をつけただけの話だ。
警察署と団地以外はちょっといい石材を使って装飾もつけてはあるけどね。
人材や内装、調度品などはまだまだこれから用意していかないといけない。
クリスに依頼して公爵家配下の文官たちにがんばってもらうとしよう。
街の統治に関して実務はほとんど丸無げだな。
まあ、人材に当てがないから主導権については争いようもない。
俺の意地で行政機能が麻痺して村人に迷惑かけるわけにもいかないしね。
地表の事はクリスに任せて、俺は地下の心配をするとしよう。
当面は積極的に『根』を伸ばして『領域』を拡張する方針にしている。
だが、『領域』管理アプリ上で黄色いマスの表示も増えてきた。
これは近隣のダンジョンマスターの『領域』を示している。
今の状態で『根』をぶつけられれば簡単に侵食されてしまう。
死蔵されるリスクもあるが、念のため『根』に防御用の魔力を込めておこう。
シュバルツに倣って100万ポイントを黄色いマスの近くの『根』に投入する。
相手のレベルや方針によってはこれでも突破される可能性はあるけどね。
それは『領域』をぶつけられた時の状況を見て対応するとしよう。
さて、コバルトたちからインクの件で報告があったので見に行くことにする。
綺麗な写真が印刷できるなら、人気の踊り子たちの写真を売り物にしたい。
王国にも写真はあるらしいのだが、これまた王家の専売特許らしい。
式典や社交界デビュー時などの機会に貴族たちが使っているそうだ。
ゴーレムで似たような事はできるらしいので、こっちではもっと気軽に使える。
さし当たっては色街の踊り子がモデルだから、色っぽい写真がメインになるか?
将来的にはもっといろいろな写真を売り出していきたい。
分配は税が2割、印刷費が2割、販売店が2割、モデルと撮影者で4割かな?
うまくいけば安インクと木材の端切れが金貨に化けてくれるだろう。
アルミ「如何でしょう?綺麗に印刷できてると思いますが」
差し出されたA4サイズの写真を見て、俺は思わず目を逸らす。
一樹「何を印刷してるんだ、お前は!」
アルミ「なるみちゃんから提供されたテスト用データですが、何か問題でも?」
ちらっとしか見ていないが、下着姿のマリーが大きく写し出されていた。
俺は王国の安インクからの高純度で細かい粒子のインクの精製を依頼していた。
これはそのインクの出来栄えを確認するために印刷したものと言うことだろう。
それは分かるんだが、なるみのやつ何を考えて・・・・いや、平常運転だな。
コバルト「面倒な奴じゃの。パンツぐらいでいちいちうろたえんでもいいじゃろ」
下着の上から白衣を羽織っただけのコバルトが口を挟む。
いつも丸出しのお前のパンツとは訳が違うんだよ。
アルミ「一樹さん、写真の出来栄えを確認してもらえませんか?」
やはりパンツ丸出しのアルミが重ねて声をかけてくる。
この研究室では抗弁したところで勝てる気がしないな。
一樹「わかった、確認しよう」
しぶしぶ俺は写真を受け取って視線を向ける。
マーガレットだろうか?マリーは花柄の下着を身に着けている。
場所は開拓村の俺の屋敷の脱衣所だろう。
気心の知れた誰かと談笑しているような笑顔を浮かべている。
写真には写っていないが、隣にはきっとアーニャが居るのだろう。
アーニャの代わりに俺が立っているのを想像して見る。
マリーはちょっと困ったように苦笑いを浮かべた。
コバルト「どうじゃ?綺麗にうつっとるじゃろ?」
ネオン「パンツの編み目までくっきりにゃー」
一樹「そ、そうだな。よく出来ている」
そうだった、写真の出来栄えを確認しなくては。
パンツの編み目?あー、なるほど、確かに見え・・・
って、何でパンツを凝視してるんだ、俺は!
アルミ「カードサイズでも潰れずに印刷できました」
アルミが同じ図像のL版サイズ、いやA7サイズ(?)の写真を差し出す。
さすがに編み目は見えないが、マーガレットが判別できる程度には鮮明だ。
一樹「なるほど、いい出来だ」
コバルト「それで終わりでは無いぞ。見よ!」
コバルトとネオンがイーゼルの覆いを勢い良く取り除くと、A1サイズの巨大な写真が現れた。
飛び込んできた肌色に、再び慌てて目を逸らす。
一樹「何を印刷しとるんだ、お前らは!」
コバルト「脱衣所ではどうにも色が足らんと思ってな」
ネオン「赤いお花と黄色いちょうちょも綺麗に発色できてるにゃー」
コバルト「どうじゃ?空の色、森の色、川の色、どれもいい出来じゃろ?」
少しだけ視線を戻すと、中央にはやはり肌色が大きく写し出されている。
全裸で水浴びをするマリーとアーニャ、初めて戦ったときのデータか。
この構図は記憶にないが、俺が走っている最中に使い魔が送った映像だろう。
一樹「森の絵が欲しいなら中央の2人は要らないんじゃないか?」
アルミ「伺った用途から考えると人物が中心になりそうでしたので、肌色の再現に力を入れてみました。如何でしょう?」
そういえば記念写真とかアイドルの写真とかを売って稼ごうとか話してたっけ?
そういう意味では確かに肌色は大事、理に適ってはいる。
しかし、見たいんだけど見ちゃいけないというか、直視できないというか。
ネオン「どしたの、スポンサー?ちゃんと見て」
アルミ「お気に召しませんか?」
スポンサー?俺のことか?
そうだった。俺が依頼して、俺の為に頑張ってくれたんだよな。
テスト用データはアレだが、成果はきちんと確認しなくては。
意を決して正面から写真を見据えてみる。
森の中で水と戯れる2人の少女、なかなかいい構図ではある。
アルミ「この肌の質感、どう思われます?」
いや、体を注視するのはさすがに・・・・。
いやいや、そういうこと言う場面じゃないよな。
一樹「そ、そうだな。いいと思う」
マリーの肌はもう少し透明感があったような気もする。
いや、改良の余地はあるにしても、これはこれでいい出来だ。
アルミ「ありがとうございます。では、今後も順次改良を進めていきますね」
一樹「ああ、よろしく頼む。ところで、これって他の奴には見せてないよな?」
アルミ「はい、私たち3人となるみちゃん、あとはマーガレットだけです」
マーガレットはインクには直接は関わっていないが、同じ研究室で働いている。
だが、彼女も俺のガーディアンだからそこまでなら見られても問題はない。
コバルト「試作品もしっかり保管してあるぞ」
一樹「試作品もあるのか。じゃあ、人に見られないようにしっかり燃やして処分してくれ」
コバルト「承知した」
一樹「あと、これ・・・・」
どうしよう?この写真を人に見られる訳には行かない。
だが、俺の為に頑張って作ってくれたのに「燃やせ」は無いよな。
一樹「あー、これは俺がもらっていく。このデータは今後印刷禁止な?」
ネオン「了解にゃー」
一樹「写真はこれで全部か?」
コバルト「今のところはな」
一樹「そうか。じゃあ、もらっていくぞ。ありがとな」
俺は3枚の写真を持ってコアルームにテレポートする。
予想外に高いクオリティの写真が印刷できるようだ。
次はアイドルを何かプロデュースする必要があるな。
何がいいだろう?歌手?ダンサー?スポーツ選手?
この世界だと強い騎士とか冒険者とかの英雄もありなのか?
改めて写真を見ると、やはりかわいい。
マーガレットの花柄模様、こんな下着も持っていたのか。
ヤバい!さすがにこれはキモいな。
この写真は早々に処分しなくては!
いやいや、これはアルミたちが俺の為に頑張って作ってくれたんだし・・・。
・・・・どうしよう?




