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第7話 ボス部屋戦闘

俺の願いもむなしく、睦月と如月の出番は意外と早くやってきた。

ダンジョンが発見され、冒険者たちがやってきたのだ。

最初の3組目までは2層までで撃退できた。

しかし、持ち帰られた情報によって彼らは着実に歩を進めている。

今モニターに映っているのは4組目のパーティ、オークと戦っている。


なるみ「オークは持ちそうにないね」

一樹「ああ、強いな」


リーダーは剣士の男だろうか。

それに大盾と槌の男、長弓の男、魔法使いの女の4人パーティーだ。

前衛の2人が引き付けている間に、後衛の2人が着実にダメージを与えている。

徐々に傷が増えていくオークに、自分の姿が重なる。


なるみ「だいじょうぶ、きっと勝てるよ」

一樹「ああ、そうだな」


負傷によって動きが鈍くなったオークを剣士たちが畳み掛ける。

剣と槌が容赦なくオークを叩きのめし、戦いは終わった。


一樹「俺の出番か」


冒険者たちがオークの胸を切り開いて魔石を取り出している。

負ければ俺もああなるのか?

そしてなるみも・・・。


なるみ「かずきおにぃちゃん、がんばって」

一樹「ああ、行ってくる」


俺はコントロールルームを出てボス部屋に入る。

2層に続く半円状の階段に人の気配。

かすかに感じる魔法の発動は補助魔法だろうか?

2層に戻る扉はすでに閉じているはず。

侵入者は俺を倒す意外に生きる道は無い。

俺は侵入者に情報を持ち帰らせるわけにはいかない。


大盾の男を先頭に、こちらを警戒しながら階段を下りてくる。

ちらりと見えた射手のやじりはずんぐりと膨らんでいる。


冒険者たちが慎重に歩を進めてくる。

テッポウウオの吐く酸に一瞬躊躇するが、強行を決めたようだ。

あの酸は確かにあまり強くはない。


一樹「いくぞ」


俺の声に応え、睦月と如月が杖を構える。

二人の杖に魔力が集中していく。

呼応するように相手の魔道師が魔力を集中させる。


一樹「撃て」

睦月・如月「ファイヤーアロー」


2条の炎の矢が放たれる。

大盾の男がくぐもった声を上げ、魔道師が倒れる。

炎の矢の着弾より早い。弓使いたちだ。

炎の矢とすれ違いに風切り音。


一樹「ウィンドボム!」


矢じりに仕掛けがあるのは先刻承知。

マジックシールドで防ぐより爆風で弾くべきだろう。

俺の魔法に弾かれた矢が閃光を放つ。

直視は避けたがさすがに少し目がくらむ。

前方から足音が迫る。

視力がまだ頼りないが、道は一筋だ。


一樹「ストーンバレット!」


中空に打製石器のような岩が浮かび上がる。

弾丸というよりは砲弾というべきか。

一直線に石畳の回廊をなぞる。

大盾の男が前に出て身構える。

岩の砲弾に大盾ごと鎧がひしゃげる。。

その影から剣士が飛び出し、肉薄する。

もう魔法は間に合わない。

棍棒で剣を弾く。

剣士が最小限の動きで即座に突きを繰り出す。

頬をかすめる剣に思わず飛び退る。

距離をつめてくる剣士を大振りの一撃で牽制する。

紙一重でかわした剣士の振り下ろしを棍棒で受け止める。

そのまま力任せに跳ね除ける。

剣士は自ら後ろに飛んで衝撃を殺す。

間合いを取り、しばし睨み合う。


速い。いや、動きに無駄がない。

単純な速度ならこちらが凌駕している。

攻撃力も防御力もこちらが勝っているはず。

しかし、技術に差がありすぎる。


剣士が再び間合いを詰める。

鋭い連続攻撃を捌き切れない。

決定打こそ無いものの、小さな傷が俺の焦りを募らせる。

俺の一撃さえ入れば勝負は終わるというのに!


幾度目かの攻防の中、剣士の足がもつれる。

ようやく効いてきたか!

俺はすかさず棍棒を振り下ろす。

受け止めた剣が地面に転がる。


テッポウウオの酸はフェイク。

本命は経皮吸収の麻痺毒だ。

動きさえ鈍らせれば勝負は終わりだ。

俺は剣士の頚椎に棍棒を振り下ろした。


石畳の回廊に目をやると、敵の射手が矢を受けて倒れている。

剣士との攻防で確認する余裕がなかったが、弓使いと魔法少女で倒してくれたようだ。

剣士と連携されていれば俺の命はなかった。

もう少し余裕があるかと思っていたが甘かったか。


コトリと音を立てて棍棒が地面に落ちた。

いつのまにか手が震えていたようだ。

今さらのように頚椎を砕く感触を思い出す。


なるみ「かずきおにぃちゃん、おつかれさま!」


いつのまにか現れたなるみに声をかけられる。


なるみ「大丈夫?顔青いよ?」

一樹「そ、そうか?」

なるみ「怪我してるし、奥で休んでて。あとはやっとくから」

一樹「あ、ああ」


やっとく?なにを?

片づけか?なにを?


頭が思考を拒む。

いや、駄目だろう、女の子に押し付けて自分だけ休むなんて。

顔を上げた先に睦月と如月の姿が目に入る。

場違いなかわいらしい服、きょとんとした幼げな顔。


一樹「人形?」

なるみ「おにぃちゃん!いいから休んでて。ここは大丈夫だから」

一樹「ああ、そうだな。頼む」


足を引きずるようにコントロールルームに入る。

思考を停止したまま、俺は白い石壁を眺めた。


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