第6話 美少女召喚
なるみ「いま!待望の!美少女☆召喚!」
よく分からないポーズを決めるなるみ。
一樹「テンション高いな」
なるみ「だって、かずきおにぃちゃんが喜ぶと思ってかわいい女の子のモデルいーっぱい用意しといたのに、毛虫とかへんな魚とか作らされるし。やーっとプリセットモデル使ってくれたと思ったら豚だし。あ!ひょっとしておにぃちゃん、人の顔にねこ耳じゃなくて、首から上全部ねこのほうが好みだった?」
一樹「いや、人の顔にねこ耳でいい」
なるみ「よかったー。じゃあとうとう喚ぶんだね、あのしまぱんメイドを!」
一樹「いや、ねこ耳メイドはまた今度にしよう。今は戦闘力が優先だ」
領主になるまでには使用人をそれなりに揃えておかないと格好がつかないだろう。
住人を雇う余裕があればそれでもいいが、おそらく最初のうちは召喚アプリ頼みだ。
しかし、今は一人(?)暮らし。しかも食事も不要な体とあっては家事手伝いは無用だ。
それよりはダンジョンの防備を固めるための戦力のほうが優先度は高い。
なるみ「そっかー。でもいつかは喚ぶんだよね、あのしまぱんメイド」
一樹「ああ、あのねこ耳メイドもいずれは喚ぼう」
なるみ「ふんふん。それで、今回は誰を喚ぶの?」
一樹「魔法使い系にしようと思っている」
ボス部屋で一緒に戦ってくれる仲間が欲しい。
近接系か遠距離系か迷ったが、武術を知らない俺が近接系と連携が取れるとは思えない。
援護射撃で敵の後衛を抑えてもらいつつ、俺が前衛を各個撃破するのがいいだろう。
欲を言えば、相手が石畳の回廊を渡りきる前に十字砲火で仕留めたい。
また、矢狭間にいるアーチャーが遠距離攻撃で狙われたときのために、正面にも牽制用の遠距離攻撃手段が欲しいのだ。
一樹「この魔法少女と魔女ってのはどう違うんだ?」
なるみ「どっちもかわいいと思うんだけど、魔法少女のほうがおにぃちゃんごのみかも」
一樹「俺は性能面を聞いている」
とりあえず魔法少女の詳細画面を開いてみる。
なるみが手をかざすと、画面が2分割になり、となりに魔女の詳細画面が現れた。
魔女のほうが使える魔法の種類や威力が増えるようだ。
予算が限られている今、比較的コストの低い魔法少女は魅力だが・・・。
一樹「魔力容量ってのは、いわゆるMPか。持久戦に弱いのはネックだな」
なるみ「そこはダンジョン内で戦う分には気にしなくていいよ。テリトリーの外で戦うときに必要になる部分だね」
一樹「なるほど、なら魔法少女でよさそうだな」
狭い空間での戦いだ、下手に高威力の魔法を使えば自分が蒸し焼きになる危険もある。
なるみ「でしょー?」
なにやらニマニマしているなるみはスルーだ。
一樹「む?キャストオフ、だと?これはどういう機能だ?」
デフォルトでチェックが入っている。
なるみ「服を脱がしたり、装備品をはずしたりできるよ」
一樹「どういうメリットがある?」
なるみ「やん、女の子になに言わせる気?おにぃちゃんのえっちー」
こいつ、中身はおばちゃんだろ?いや、むしろおっさんか?
一樹「まぁ、そういう機能なら無くてもいいか。お、チェックはずすとコスト下がるんだな」
なるみ「けっこうディテールまでがんばったんだけどなー」
一樹「えーと、性能面とか運用面でのメリットは無いんだよな?」
なるみ「んー、状況に応じて装備を変えられるようになるね。あと、服も魔力で構成してるから、普通の素材の服を買うか作るかして持ってくれば、服の分の維持コストを節約できるよ」
一樹「それを先に言え。ちなみに服の分のコストってどれくらいなんだ?」
なるみ「だいたい100ポイントくらいだよ」
一樹「400ポイント中の100ポイントか、けっこうでかいな。キャストオフ有りなら汎用性も上がる上、将来的にはコストも削減できる、と。なら、当然有りだな」
なるみ「うんうん」
魔力に余裕があるわけではないが、長期的なデメリットを無視してまで目先の節約に拘るほど逼迫しているわけでもない。
一樹「召喚対象はこの2人。場所はここでいいよな?」
なるみ「うん、だいじょうぶ!」
一樹「よし、召喚実行!」
なるみ「おいでませー」
中指の腹でリターンキーをはじく。
中空に繭のように白い光が現れ、少女のシルエットが浮かび上がる。
その表面を虹色の光が駆け巡り、衣装を構成していく。
光の繭が四散すると、少女たちはコトリと軽い音を立てて降り立った。
なるみ「おにぃちゃん、名前つけて」
名前?考えてなかった。
一樹「えっと、じゃあ睦月と如月で」
なるみ「じゃあ、睦月ちゃん。ごあいさつ、どうぞー!」
睦月「睦月です。よろしくお願いします」
なるみ「睦月ちゃんのぱんつの柄は?」
睦月「くまさんです」
一樹「何を言わせとるんだ」
なるみ「ふふふ。じゃあ、次は如月ちゃん」
如月「如月です、よろしくお願いします。えっと、パンツ?は・・・」
一樹「言わんでいい」
なるみ「知りたいくせにー」
一樹「やかましい」
揃いの衣装と大きな三角帽子に身を包んだ二人。
髪は睦月がショートカットで如月がロング。
口調は如月のほうがはきはきしているか。
それにしても・・・
一樹「二人とも声似てるな」
なるみ「あー、それはですね」
なにやら改まった口調で姿勢を正すなるみ。
なるみ「かずきおにぃちゃんの好きな38人の女の子の声を解析してみたのですが、不思議なことに11パターンしか声紋が検出できなかったのです。選択肢が限られているため、声の重複が多い点についてはどうかごよーしゃねがいます」
一樹「無駄にハイテクなオタクいじりをどうもありがとう」
なるみ「どういたしまして。それはそうと、シシャ会しようよ?」
一樹「試写会?」
なるみ「魔法使ってるとこ見たいでしょ?」
一樹「ああ、試射会か。見たいね」
俺たちはコントロールルームを出てボス部屋に入る。
ダンジョンの壁は滅多な事では壊れないらしいので、正面の壁を的にする。
一樹「これから魔法の試射をするが気にしないでくれ」
矢狭間のアーチャーさんに声をかける。
向こうも顔を出して了解のジェスチャー。
なるみ「おにぃちゃん、ちょっと下がって。高いよ、しゃがんで」
言われるままに壁にもたれて座り込む。
なるみ「じゃあ、いってみよー!」
睦月・如月「はいっ」
二人が杖を構え、集中を始める。
魔力の集中に反応して、髪と服が風を含んだように微かに膨らむ。
睦月・如月「ファイヤーアロー!」
掛け声と共に炎の矢が放たれ、同時に短いスカートか盛大に翻る。
ヒヨコだったか。
なるみ「どう?」
しまった、ぜんぜん見てなかった。
一樹「ああ、いいんじゃないか?」
なるみ「でしょー?かずきおにぃちゃんが好きだったゲームのエフェクト、かなり忠実に再現できてると思うんだよね」
一樹「そっちかよ!?」
なるみ「ん?」
一樹「つか、パンチラ見るためにプレイしてたわけじゃないからな」
なるみ「またまたー。で、魔法のほうはどうだった?」
一樹「ああ、悪くない威力なんじゃないかな」
なるみ「ふむ?何を元に威力を判断したのかは分からないけど、おにぃちゃんがOKなら大丈夫だね」
改めて見ればダンジョンの壁には傷はおろか、焦げ跡すらついてはいない。
壁が丈夫過ぎるせいで判断のしようがない。
一樹「こいつらは基本、牽制用の弾幕担当だからな。威力はあまり重要じゃないんだよ」
なるみ「なるほどー」
目の前でスカートがめくれたら見ちゃうだろ、ちくしょー!
戦いの最中にこれをやられて、集中を乱さずに居られるだろうか?
地球で暇つぶしにやっていたゲームに、来世(?)でこうも振り回されることになるとは。
まあ、醜いモンスターに囲まれてるよりはずっといいんだけどさ。
一樹「こいつらの出番が少ないことを祈ろう」




