表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/125

第5話 戦闘

なるみ「だいぶ近いね。このままだと発見されるかも」


モニターに映るのは3人組の若い冒険者だ。

大柄な剣士、短弓使い、そしてロッドを持った少女は魔法使いか?

ダンジョンで冒険者を迎え撃つにはもうしばらく時間がほしい。


一樹「発見される前に外で撃退するか。しかし、1対3か」

なるみ「ダンジョンの外ではあるけど、『領域』内だからダンジョンからの魔力供給は受けられるよ」

一樹「そうだな」


ダンジョン最下層のコアから周囲に魔力の『根』を伸ばしてある。

『根』が張り巡らされた一帯が俺たちの『領域』だ。


なるみ「魔力で強化された状態なら、若い冒険者相手に苦戦することは無いと思う」


武術の心得はないが、魔力で身体能力を常人の数倍に強化できる。

技術によほど大きな差がない限りは負けないはずだ。

どの道避けられない戦いならば、覚悟を決めるしかない。


一樹「例の服装でうってでる。用意してくれ」

なるみ「はーい」


俺は黒尽くめの全身タイツに着替えた。

コンセプトは「魔族の下級兵士」。

参考にしたのは特撮ヒーロー番組の怪人の取りまきだ。

仮面はいろいろ考えた末にのっぺらしたものにした。

覗き穴も呼吸用の穴も目立たないようにしてある。

下手に表情をつけるより、無機的なデザインのほうがいいだろう。


一樹「行ってくる」

なるみ「気をつけてね」


ガサッ。

わざと大きな音を立てて、冒険者の頭上の枝に飛び移る。

前衛の男が剣を抜くのを見てから踊りかかる。


剣士は剣の刃で棍棒を受け止める体勢。

空中で体を捻り、剣の腹に棍棒を叩き込む。

剣を叩き折り、続く一撃で金属鎧の胸当てをへこませる。

くぐもった声をあげ、男が膝を着く。

あばらの1、2本は折れただろう。


右側に魔力の集中を感じる。

女がこちらに向けて杖を構えている。

おそらく発動前に距離を詰められるだろう。

念のために低い姿勢で相手の右手の下に潜る。

棍棒を振り上げ、ロッドを叩き折る。

いや、ひしゃげて飛んだ。

想定より女の握力が弱かったようだ。


女は尻餅をついた。

閉じた目がゆっくりと開きはじめる。

どうする?追撃しないと不自然だ。

殺すのか?

よく見ると14、5歳くらいの少女のようだ。

厚手の丈夫そうな服は小さなナイフくらいなら防ぐのかもしれない。

しかし、棍棒の打撃の前には無力だろう。

殺すのか?

手足を攻撃するか?棍棒の柄で小突くか?

いや、この体勢なら頭か胸を潰すのが自然だ。

殺すのか?

手加減していると悟られるわけにはいかない。

殺すのか?


少女の瞳孔がゆっくりと開く。

弓のしなる音が聞こえる。

棍棒を振って矢をはじく。

次の矢を番える隙を与えずに距離を詰める。


助かった。お礼に左腕だけにしといてやる。

弓を叩き折り、そのまま左腕に軽く当てる。

少年は悲鳴を上げて後ろに倒れる。


棍棒を構え少年に無造作に近づく。

少年の顔が恐怖に歪む。

唐突に歩みを止め、あさっての方向に顔を向ける。

一度少年のほうに視線をやってから、先ほど見た方向へ走り去る。

別に何があるわけでもない。

優先すべき「何か」のために戦闘を放棄した、という演技だ。

「今回は運よく助かったが、次にまた遭遇したら命はない」

そう思わせることが目的だが、うまく演じられただろうか?


途中ぐだぐだと考え込んでしまったが、思考加速中の話だ。

おそらく1秒と経っていない。

不自然には思われていないはずだ、たぶん。


一樹「悪く思うなよ」


無理な話だ。

それでも、やつらは俺たちの命への脅威なんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ