第49話 レアドロップ
カトリーヌ邸や学校の建設予定地の伐採を進めていく。
伐採しなくてもダンジョンは生やせるのだが、せっかくある樹は有効利用したい。
カトリーヌさんたちは町の様子や地形を見て回ったり、名簿を作ったりしている。
俺は伐採作業や鬼族との戦闘訓練を続けつつ、砦の防備の強化を図る。
砦の両脇は山になっているが、敵に回りこまれる可能性もある。
山の中に配置する兵力としてゴブリンを100体召喚することにしよう。
ゴブリンはソードマンとアーチャーを各50体、砦の両脇に半数ずつ配置する。
さらに、砦自体の防衛用に魔女型ガーディアンを召喚する。
魔道防壁を展開できるのが俺と弥生の2人だけというのはどうにも心細い。
俺が攻撃に専念できるよう、屋上に配置したアーチャー達を守ってもらおう。
落雷のエフェクトと共に、いくつもの光の繭が中空に現れる。
その一つ一つに、エルフ耳の女の裸体が浮かび上がる。
全て同じ顔の女たちは、弥生のコピーだ。
美女の裸体が林立する様は壮観だが、やはり胸になにかざらつきを覚える。
胸元に虹色の光が走ると、白地にドット柄の小さなブラジャーが現れる。
乳首がぎりぎり隠れるくらいのブラはハーフカップというにも小さいか。
続けて20人の裸体がお尻を見せ付けるようにゆっくりと回る。
腰周りを虹色の光が包み、やはり白地にドット柄の小さなパンツが現れる。
最後に全身を虹色の光が包み、衣服を完成させる。
頭にはいつもどおりの大きな三角帽子。
顔面にはどこか外国の仮装祭りを思わせる仮面を付けている。
上着は胸元の大きく開いたクロップドタンクトップだ。
タンクトップの肩からは、腰の少し下までのマントが垂れている。
下はややV字型で縦幅10cmほどのショートパンツだ。
オーバーニーソックスとの間のいわゆる絶対領域がまぶしい。
別に6人を召喚して最初のダンジョンのボス部屋の矢狭間に配置した。
対アウラエル戦でアーチャーをやられたのを繰り返したくはない。
左右に3人ずつ配置して、アーチャーたちを守ってもらおう。
そっちはV字のエロエロ衣装のままだ。
たった今召喚した20人は谷の砦用だ。
開拓村の砦と谷の入り口の砦に10人ずつを配置する。
ある程度人目のある場所なので、露出はちょっとだけ控えめだ。
攻城兵器や大規模魔法が来ても、10人居ればそれなりに防げるかな。
一樹「なるみ、この間の『聖騎士』を覚えているか?」
なるみ「んーと、トネールって人のこと?」
一樹「そんな名前だったかな?奴の雷撃を防げると思うか?」
なるみ「タイミング次第かな?単純に威力の話なら、弥生さんが2~3人居れば大丈夫だと思う」
不意打ちさえ受けなければ問題ないか。
当然だがやはり索敵と警戒が厳にする必要はあるな。
一樹「そうか。ところで、『聖騎士』ってのは魔法も使うもんなのか?」
なるみ「わかんない。けど、この間の人は魔道具を使ってたみたいだよ」
一樹「そうなのか?」
なるみ「うん、回収した装備品の中にそれっぽいのがあったから解析しといた。接続した魔石の魔力を根こそぎ吸い取って一気に放出する術式だね」
一樹「魔石さえあれば何発でも撃てるということか?」
なるみ「術式を見る限りではそういうコンセプトっぽいね。予備の魔石も見つかってる。けど、回収した魔道具は回路が焼き切れてたから、あれ以上は撃てなかったんじゃないかな?」
一樹「そうか」
『聖騎士』が持ってきた以上、王国ではけっこう上位の品質の物だろう。
なら、あの威力の魔法を連発される心配はないということか。
だが、今後その辺を改良される可能性は考えないといけない。
それに、魔法使いっぽくない奴が魔法を放ってくる可能性は常にあるわけか。
一樹「他に注意すべきアイテムは何かあったか?」
なるみ「あとは、やっぱり剣と鎧かな。なかなかお金かかってそうな装備だよ」
2人の『聖騎士』は揃いの白銀の鎧を装備していたか。
単純に見栄えがいいってだけじゃないらしい。
なるみ「本体は鉄とクロムが主成分の合金だね。要所要所をオリハルコンで補強して、ミスリルで魔導回路が彫り込んである。動力はダンジョンコア由来の魔石が埋め込んであるよ」
鉄とクロムの合金、聞き覚えがある気はするがなんだったかな?
ダンジョンコア由来の魔石の方は、なるみの仲間の遺骸ってことか。
当然そこにいたダンジョンマスターも殺されたのだろう。
そこに至るまでに配置されていたガーディアン達もだ。
あの鎧一つの為にどれだけの命が失われたのか。
一樹「魔導回路ってのはどう言う効果のものだ?」
なるみ「物理耐性強化と火炎耐性強化だね」
火炎耐性は鎧のお陰か。
『聖騎士』にとって火炎攻撃はカウンターチャンスってわけだ。
隙を誘うのに使えそうだが、大勢に見られたし二度目は無理かな?
一樹「なるみはこう言うの作れるのか?」
ミスリルの魔導回路と言えば、『翻訳の腕輪』を作ってもらった。
なるみ「できるよ。かずきおにぃちゃんサイズにリメイクしようか?」
一樹「いや、白銀の鎧なんて俺には似合わないだろ」
なるみ「まあ、たしかに」
いや、一応一度は否定しようぜ?
一樹「取り返しに来られても面倒だ。鋳潰してインゴットで保管しといてくれ」
なるみ「らじゃー」
いい鎧の様だからこっちで再利用と言う手もあるのかもしれない。
だが、作り直せるなら無理に今のままで保管する必要も無いだろう。
素材の状態に戻した方が自由度は高い。
一樹「そういえばフラッシュグレネードだっけ?なんか光る奴を投げてきたのもいたが、あれはどういう物だ?」
なるみ「あれはまず内核に閃光の魔道回路を彫り込んで、陶器やガラスで作った外殻にそのストッパーが組み込んであるんじゃないかな?最後に内核に魔石を嵌めて蓋をして完成」
陶器の外殻が割れれば発動、使用者は完成品を投げつけるだけというわけか。
一樹「それなら例の油壷に発火の魔法を埋め込んでもいいかもな」
なるみ「それくらいならすぐ作れるよ。けど、ミスリルは使い捨てに出来るほどの在庫はないかな」
一樹「魔道回路ってやっぱりミスリルなのか?」
なるみ「ミスリル以外だと、魔力の伝道効率は下げるけど銀やプラチナでも一応できるね。あとは、発動率下がるし長期保存もできないけど、竹の炭を魔獣の血と脂で練った墨で描いてもOK」
なんか急におどろおどろしいワードが出てきたな。
けど、レアメタルを使い捨てにするよりはいいか。
一樹「油壺に関しては発動率5割もあれば十分だろう。近いうちに魔獣狩りだな」
なるみ「いいけど、すぐに使う当てがあるの?血と脂は新鮮な奴じゃないと使えないよ?」
生き血かよ!
攻め込まれてから魔獣狩りに出かけるわけにもいかないな。
一樹「いや、原料も保存不可とは思わなかった」
なるみ「性能でも使い勝手でもミスリルが一番だね」
一樹「アーネストさんに取り寄せてもらえるかな?ミスリルっていくらするんだろ?」
なるみ「わかんない。あとは、ミスリル装備の冒険者を倒すとかだね」
一樹「おいおい」
なるみ「ん?」
いや、今までもさんざんやってきた事だし、今更か?
俺やなるみの身を脅かす侵入者に遠慮するつもりなど無い。
それでもし死んだなら持ち物は有効利用させてもうつもりだ。
だが、こっちでそれを期待するのは何か違う気がする。
それでも、やってる事は結局同じなのか?
一樹「いや。ところで、魔獣ってのは何でもいいのか?」
なるみ「基本的に魔力の高い魔獣ほど伝導率が高くて日持ちもするみたい。ドラゴンとか最適だね」
一樹「もうちょい手ごろなので頼む」
なるみ「この辺りだとストーンバイパーとかかな。やっぱり何か作るの?」
一樹「春になると『魔界』に渡る冒険者も増えるんだろ?冒険者対策に組み込むなら使用頻度もそこそこ高くなるし、日持ちしなくても問題ないんじゃないかな」
なるみ「なるほどー」
魔法の炎を維持するには魔力を注ぎ続けなければならない。
だが、油を燃やすならそういった心配は要らなくなる。
うまくやれば侵入者を追い込むのに使えるだろう。
特にミスリル装備の冒険者は入念に殺さないとな。
高品質な装備を持っているのはやはり高レベル冒険者だろう。
つまり、俺たちにとってより大きな脅威であるということだ。
まあ、半分くらいはミスリルを入手するための言い訳である事は否定しない。
だが、高レベル冒険者に何度も侵入されては遠からず攻略されてしまうだろう。
出来るだけ初見で殺すのが俺となるみの安全確保の為に必要な事であるのも事実。
追い剥ぎのような真似をする事に抵抗はある。
だが、冒険者とダンジョンマスターは殺し合い、奪い合うのが常だ。
もちろん、その関係を解消すべく動いている最中ではある。
それでも向こうから俺のダンジョンに侵入してくるのなら話は別というものだ。
あとは、王国が魔獣の生き血を集め始めたら要注意だな。
近く何か大きな動きがある前兆ということになる。
冒険者ギルドに入っている依頼の動向にも注意しておくことにしよう。




