第25話 シャワー
カシの予測によれば数日中に強行偵察部隊がこちらに襲来する。
勝利条件は屋敷から500m以上離れた地点での撃退、または殲滅だ。
まずは『領域』を屋敷の東側1km程度まで拡張する。
以前なら何週間もかかっていたところだが、今なら数日で終わる。
続けてゴブリンアーチャーとゴブリンソードマンを各20体召喚。
ゴブリンソードマンは500m地点に集中的に配置する。
ゴブリンアーチャーは500m~1km地点に散開させた。
敵はいつ来るか分からないし、来るかどうかすら分からない。
わずか500mとはいえ、拠点からは道の無い山中だ。
見張りに通うのも辛いので、ゴブリンに待機させる。
ガーディアンなら何週間でも不眠不休で茂みの中で息を潜めていられる。
それと併せて村の整備も進めなければならない。
今の住民は避難民なので、いずれは鬼族の里に帰っていくのだろう。
だが、滞在が長引く可能性もあるし、将来の領民の為でもある。
耕作地は30アールほどまで拡張し、石垣で段々畑にしていく。
山のあちこちから湧いている水を簡単な水路で畑に誘導する。
おいおいしっかりした石組みの水路にして行こう。
ダンジョン入り口から畑、俺の屋敷、鬼族の里へ道も作る。
とりあえずは下ばえを払っただけの獣道程度だ。
これもおいおい石畳や石段に変えていくとしよう。
差し当たっての課題はゴミの処分だ。
俺一人が出すナッツの殻や魚の骨程度なら適当に埋めれば問題ない。
しかし、住人が68人も増えては間に合わなくなる。
現状はダンジョン入り口付近に穴を掘って埋めているが、すぐ飽和するだろう。
ちなみにトイレの分はダンジョンの不思議パワーで土に還るようだ。
おそらく原理的には山小屋のトイレとかと同じような感じなのだろう。
これが無かったら難易度は桁違いだったろうから本当に助かる。
ただ、それ以外にも有機物を含む生活排水はいろいろとある。
下水処理場もそのうち作らないといけなくなるのだろう。
さて、話をゴミ処理に戻そう。
生ゴミを焼却しようとすると場所も燃料もけっこう必要になる。
確か釣鐘型の容器に入れて放置する堆肥化とかいう方法があったはずだ。
山の西側のふもとに生ゴミ処理場を作ることにしよう。
コンコンコンッと執務室のドアをノックする音が聞こえる
「どうぞ」と応えると入って来たのはパンジーだった。
パンジー「失礼します。今お忙しいですか?」
一樹「いや、問題ない」
パンジー「ではシャワーをいただきますね」
パンジーが悪戯っぽく笑ってドアを閉める。
ここしばらく、女性型ガーディアンの行動に変化があった。
俺の休憩に合わせて、わざわざ申告してからシャワーを浴びるのだ。
自分の裸体を見ろ、ということらしい。
本来ガーディアンには食事も風呂も睡眠も必要は無い。
しかし、ダンジョン外で活動する者にはその振りだけさせている。
人間のように振る舞い、周囲に違和感を抱かせないためだ。
別に俺に裸を見せろという意味での指示ではない。
人間族と戦争中の鬼族が警戒しないよう、人間でないことは伝えている。
それでも不眠不休で働き続ける人型の存在は不気味に映るかもしれない。
また、将来人間族を俺の街に受け入れるための布石でもある。
俺に従う人間っぽい存在がいれば、人間族も従ってくれるかもしれない。
女性型ガーディアンが俺に裸を見せたがる目的はおそらく魔力だ。
俺の体は喜びや怒りといった感情の高ぶりに合わせて魔力を生むらしい。
その魔力は『魔力パス』を通じてダンジョンコアに供給される。
性的興奮もまた、ダンジョンの餌ということなのだろう。
だが、それならただ見せるより効果的な方法がありそうなものだ。
画面が勝手にシャワールームの映像に切り替わる。
パンジーがいそいそと服を脱いでいる。
体を許す女がいるのに、ただ画面越しに眺めるというもなんだな。
俺は部屋を出て脱衣所のドアを開いた。
パンジー「あら、ご主人様。今日は直接ご覧になるのですか?」
一樹「ああ、そうさせてもらおう」
パンジー「承知しました」
パンジーは変わらぬ笑顔で淀みなく服を脱いでいく。
裸になってシャワーを浴びるパンジーを見て、俺も服を脱ぐ。
シャワールームに入り、抱きしめてみるが嫌がる素振りは見えない。
思い切っておっぱいを掴んでみるが、やはり変わらぬ笑顔を浮かべている。
嬌声を上げるでもなく、赤面するでもなく、顔を顰めるでもなく・・・。
どこに手を伸ばしても、期待するような反応は見せない。
パンジー「ご主人様もシャワーを浴びられるのですか?」
一樹「あ、ああ。そうだ」
パンジー「では背中を流してさしあげますね」
互いに向かい合い、パンジーが手を回してタオルで俺の背中をこする。
しばしばおっぱいが当たるが、意図してやっているわけもなさそうだ。
背中が終わると、そのまま全身を洗って行く。
パンジー「終わりました」
一樹「ああ、ありがとう」
パンジー「では、お先に失礼しますね」
パンジーは浴室のドアを全開にしたまま、体を拭き始める。
いつものように、見せ付けるようにゆっくりと。
もうちょっといちゃいちゃ感が欲しかったかな。
なんというか、生殺し感が半端ない。
頼めばいろいろしてくれるんだろうか?
いや、俺と彼女はダンジョンマスターとガーディアンだ。
シャワーを見せるまでは彼女たちが自主的に始めたこと。
だが、こちらからそれ以上を求めるのはパワハラになるんじゃないのか?
いや、相手は魔道人形なんだ。遠慮する必要はあるのか?
パンジーはゆっくりと下着をつけると、下着姿のまま髪を梳かし始めた。
俺は浴室のドアを閉め、視界をさえぎる。
やはり画面越しに眺めるくらいがちょうどいいのかもしれない。
パンジー「ご主人様」
一樹「なんだ?」
パンジー「明日からはご主人様のシャワーの時間に合わせますね」
一樹「わかった」
パンジーが脱衣所から出て行く音が聞こえた。
あれ?今のはどういう意味だ?ついそのまま返事してしまったが・・・。
明日から毎日一緒に入ってくれるということか?
それは嬉しいがこの生殺し状態はちょっときついぞ。
かといって断るのも惜しい・・・どうしよう?




