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第11話 天使型偵察機

なるみ「『魔王』とは、Lv.1000に到達したダンジョンマスターに与えられる称号です」


今日のなるみは白のブラウスにクリーム色のミニのタイトスカートだ。

教師のイメージだろうか?右手には指揮棒のようなものを持っている。


一樹「他のダンジョンマスターを殺すことが条件じゃないんだな」

なるみ「ちがいます」

一樹「『魔王』になると何が変わるんだ?」

なるみ「わかりません。ただ、『魔王』になると開放されるコマンドはあるようです」

一樹「日本に帰ることはできるのか?」

なるみ「わかりません。たぶん無理です」

一樹「ノワールさんは『魔王』なのか?」

なるみ「わかりません。たぶん違います」


分からないことだらけだな。

それにしてもLV.1000か、俺は最近ようやくLv.4になったばかりだ。

別に目指す気もないが、『魔王』への道は恐ろしく遠そうだ。

ただ、必ずしも殺しあわなくてもいいと分かったのはうれしい。


一樹「何が得られるのかは分からないが、レベルさえ上げればみんなでなかよく魔王になれるわけか」

なるみ「それはできません」

一樹「なぜだ?」

なるみ「ダンジョンLvを決めるのは『領域』の面積です。この半島の面積だと『魔王』になれるのは一人が限界です」


結局、「一番強いダンジョンマスターが魔王」って話になるのか。

もしくは西に進出して人間たちの土地を奪うか・・・。

それじゃ漫画やゲームに出てくる魔王そのものだな。


ルシファーは「殺しあうよう仕組まれた世界」と言っていたか。

この世界の人間たちは容赦なく俺たちを殺しに来る。

生き残るためには強くならなくてはならない。

ダンジョンマスターの強さは『領域』の広さとほぼ同義だ。

土地が限られている以上、全員が同じように強くはなれない。


また、俺たちは『領域』を離れればただの非力な人間だ。

ダンジョンマスター同士の共闘には障害が多い。

それに自分が死ねば利益を得られる人間に背中を預けるのは難しい。

相手の命もかかっている状況ならなおのことだ。


俺が今いるのはかつて広大な『領域』を有したダンジョンの跡地。

周りに手付かずの土地が広がっているのはそのためだ。

俺と同時期に生まれたであろうダンジョンマスター達が西にいる。

急いで『領域』を確保しなければ、拡張のために殺し合いが必要になる。

力を蓄えてから、などと悠長なことは言っていられないか。


なるみ「質問は以上ですか?」

一樹「以上です」

なるみ「では授業を終了します。ありがとうございました」

一樹「ありがとうございました」

なるみ「生足もいいけど、たまにはパンストもいいよね。どう?色っぽい?」

一樹「どっちも変わらん」

なるみ「むー。かずきおにぃちゃんのいけずー」


むくれるなるみは置いておいて、召還アプリを開いてみる。

『魔王』の件とは別に気になることがあるのだ。


なるみ「ん?今度はどんな子召還するの?」

一樹「子ってわけじゃないが・・・400億ポイントだと?」

なるみ「ドラゴンかー、まだ早いんじゃないかな」

一樹「一番低いので200億ポイントか。あいつら、いったいどれだけ魔力貯めてるんだ」


ちなみに子供サイズのくのいちで40万、大人サイズで60万だ。

そして俺の現在の魔力備蓄量は20万ちょい。

『領域』拡張をがんばったおかげで収益は1日9万ほどまで増えてきた。

それでも数十万日分、俺がドラゴンに乗れるのはかなり先の話か。


なるみ「高レベルなダンジョンマスターなら数百億どころか数百兆溜め込んでることもあるね。でも、昨日のドラゴンなら天然の本物のドラゴンだと思うよ?」

一樹「本物のドラゴンだと?」

なるみ「うん。魔力の感じからして間違いないと思う」

一樹「どうやって仲間にするんだ?」

なるみ「条件は交渉次第だけど、少なくともねぐらを提供できないなら無理だよ」

一樹「ねぐらか・・・」


交渉次第ということは人語を解する程度の知能はあるわけか。

あの巨体が寝起きする空間を用意するだけでも大変だ。

何を食べるか知らないが、食べ物の確保も大変だろう。


なるみ「ダンジョン本体の横に大きな縦穴を作って、そこからダンジョン深層に入れる横穴を掘るの。そうやって住処を提供する代わりにダンジョン深層の守りをお願いするのね」

一樹「ドラゴンの出入り口だけで1ヘクスまるごと使いそうだな」

なるみ「そうだね。あと深さも大切。3~4層程度の浅い階層だと、縦穴から冒険者が入ってきちゃうでしょ?」

一樹「逆にセキュリティホールができてしまうわけか」

なるみ「そうそう。ドラゴン側としても、頻繁に侵入者が来るような場所ならそこらの洞窟で寝たほうがましってなっちゃうから、それなりに守りの堅固なダンジョンじゃないと来てくれないんだよ」

一樹「なるほど、確かに当面は無理そうだな」

なるみ「でも、立派なダンジョンになれば、そのうち向こうから寄ってくるから大丈夫」

一樹「そういうものか」

なるみ「うん」


ドラゴンの件は当面は保留だな。


一樹「高高度から周囲を警戒できるガーディアンだとどんなのがある?」

なるみ「天使とかかな」


画面に白い羽の生えた女性の姿が表示される。


なるみ「認識能力はけっこう高いし、雷魔法・光魔法・治癒魔法も使えるよ」

一樹「それは魅力的だが、必要魔力が800万か。ちょっと無理だな」

なるみ「子供サイズでも720万だね」


『領域』への侵入者により早く気づく目が欲しい。

また、西に『領域』拡張する前に、先の状況を地表だけでも確認したい。


一樹「なるみ、ガーディアンはお前がデザインしてるんだよな?」

なるみ「そうだよ?」

一樹「機能を省いてコストカットできないか?魔法は要らない。見るだけでいい」

なるみ「映像送るだけの空飛ぶカメラってこと?」

一樹「そうだ。映像の解析はこっちでやろう」

なるみ「それなら15万くらいだけど」

一樹「すごい落差だな」

なるみ「その分映像解析でなるみの負担は増えるんだけどね」

一樹「そうか、すまん。きつようなら別の方法を考えよう」

なるみ「んー、1体くらいなら大丈夫」

一樹「そうか、魔力に余裕ができたら、ちゃんとした見張りを増やすよ」

なるみ「きっとだよ?じゃあ、召還いってみよー!」


ターンッと中指の腹でリターンキーを弾く。

いつものように白い光の繭が現れ、少女のシルエットが浮かぶ。

虹色の光が衣服を構築し、光の繭は消えた。


一樹「えっと、じゃあ名前は・・・」

なるみ「ちなみにしゃべる機能はありません」

一樹「そ、そうか」

なるみ「歩く機能もないから、外まで担いで行かないとだね」


少女(?)は何かに手を差し伸べようとするかのようなポーズで固まっている。

いろいろと試した末に右脇に抱えてなんとか運び出した。

魔力で力を強化できるから重さは苦にならないが、この形はちょっと運びにくい。

『領域』内なら場所は選べるのだから、地上で出せばよかったか。


なるみ「飛ばすよー」

一樹「ああ、やってくれ」


少女の背中に光の翼が現れる。

そのまま羽ばたきもなく、風も立てずに上昇して行く。


一樹「見えなくなったな」

なるみ「もう雲の上だね」


地表を観察してもダンジョンのことはよく分からないかもしれない。

しかし、現状で『領域』外を観察するためには上空からの目視しかさなそうだ。

冒険者の動きが観察できれば、ダンジョンの場所くらいは分かるだろう。

明日からまた『領域』拡張を進めよう。今度は、西へ。

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