第109話 文化祭
一樹「出でよ!サモン・ウィッチーズ!」
稲妻のエフェクトと共に中空に無数の光の繭が現れる。
その一つ一つに、黒髪の少女の姿が浮かび上がる。
同じ顔が並ぶ光景は、何度見ても眩暈に似た感覚を覚える。
目を閉じたままの少女の身体は小さな胸を見せるけるようにゆっくり回転する。
その胸元に虹色の光が走り、白地に水色のドット柄のジュニアブラが表れる。
続いて小さなお尻を見せ付けるように半回転し、腰周りに虹色の光が走った。
ブラとお揃いのドット柄のかわいらしいパンツが現れる。
最後に全身に虹色の光が走り、衣装を完成させた。
どことなくボーイッシュな雰囲気の意思の強そうな黒い目の輝き。
髪はしっかりと編み込まれ、コンパクトに収まっている。
動き易そうな紺色のつなぎに、銀色の防火マントを羽織っている。
後ろのコピーたちはフルフェイスの防火ヘルメットで顔は見えない。
銀色のビキニ風の服の上に、やはり銀色の防火マントを羽織っている。
そして、皆一様に水色を基調とした魔法の杖を装備している。
一樹「お前の名前は水無月にしよう。『領域』やダンジョンの内部や付近で火事が起きたときは消火に当たってくれ」
水無月「分かりました、おにーさん!」
一樹「基本的には警察署兼消防署に待機だ。火事に即応できるよう、領内各所に支署も随時作っていこう」
水無月「はい!」
ダンジョンはほとんどが石造りだから火事の心配はほとんどない。
しかし、テナントの内装は各店舗に任せているから布や木材が多い場所もある。
また、『経済特区』の一部は土地単位で貸し出していて、豪商が自社店舗を作っている。
加えて温泉宿は木造の離れも多いし、火事の心配も少なくない。
魔法少女は本来はダンジョンの防衛の為に戦うガーディアンだ。
しかし、水や氷雪系重視型の魔法使いは消火活動にも使えるだろう。
状況次第では戦ってもらう可能性もあるが、当面は消防を担ってもらおう。
治癒術師の卯月や皐月と同じく、ここでいう『魔族』風にしておいた。
住民や町の家屋を「守る」立ち位置に『魔族』風のガーディアンを使う。
これによって『魔族』の印象を良くし、人間族との融和を計るという目的もある。
今回は302人の魔法少女を召喚した。
水無月と水無月’は地下鉄東駅と開拓村の消防署で署長をそれぞれ務めてもらう。
あとは地下鉄東駅、開拓村、『経済特区』の消防署に各100人を待機させる。
小柄な魔法少女にしたのは、入り組んだ場所でも通りやすくするためだ。
これは領内で行われる創作活動への支援の一環でもある。
領民に止まらず、『経済特区』住民にも創作活動を推奨している。
区役所の東側が公園になっているが、その地下をサークル棟として安価で貸し出した。
資材や作品の搬出・搬入の為に、区役所と共用の貨物用エレベーターも追加した。
文化祭の開催を公示して以来、それらの創作活動も活発化しているようだ。
水無月の召喚は、製作や展示の中で起こりうる火事を意識した対応でもある。
併せて忍者型ガーディアンを使った私服警備も200人増員した。
工具は凶器にもなりうるし、人や物の流れも増えるからだ。
文化活動を推進するのはショービジネスや工芸品の製作の為だけではない。
地球で防犯関連の話で「セントラルエイト」とかいう研究を聞いたことがある。
人の犯罪傾向の目安とか、犯罪を犯す要因になる主要な8つの因子というやつだ。
これを解消することで犯罪の抑止や再犯防止に繋がると言うわけだ。
具体的には犯罪歴、反社会的認知、反社会的な人間との付き合いとかだったかな?
あと大きいのは反社会的人格、そして意外な所で余暇の過ごし方も影響が大きいらしい。
健全な余暇の過ごし方、良い趣味を持って貰う事は、防犯の意味でも効果が高いという。
小人閑居してなんとやら、その辺の人の性は数千年経っても変わらないという事か。
各種サークルの支援は、住民に娯楽と安全を同時に提供する効率のいい投資と言える。
そんな訳で、文化活動には領民だけでなく『経済特区』の住民も巻き込んでいきたい。
治安維持と併せて、労働者を呼び込むという意味でも効果が期待できそうだ。
主な納税者である領民にも十分に利する政策になるだろう。
文化祭のオープニングセレモニーは『経済特区』の小劇場で行った。
体育祭と同じく、『ふるーてぃあ』と兎人族のパフォーマンスで幕を開ける。
小劇場には特に貴賓席などは無いので、俺は舞台袖で待機している。
俺はスタッフの合図を受けて舞台中央に出る。
一樹「文化祭の開催を宣言する」
それを切欠に賑やかな音楽とダンスが盛り上げる。
俺はそのまま舞台を去る。俺の出番はこれだけだ。
俺が出る必要があるのかは疑問だが、一応最高責任者として顔を出した方がいいらしい。
小劇場では各種サークルの発表が順次開かれる予定だ。
区役所と美術館では、子供達の作品展示も行われている。
デパートの催事場や出店で作品を販売している者もいる。
ホテルの東側に作ったオークション会場で売りに出される物もある。
美術品という奴は値段をつけるのが難しい。
無名の作家の作品などは特にそうだろう。
そのため、希望する者は作品をオークションにかける事にした。
オークショニアについてはクリスに紹介してもらう。
領民だけでは質的に不安があったので、鬼族の職人に出品を打診した。
美しい螺鈿細工や陶磁器も出品してもらい、なんとか体裁を整える。
個人的に興味を惹かれたのが色々な動物を模した金属の可動フィギュアだ。
鬼族の鎧職人が技術力のアピールや修行の為に造る事が多いらしい。
魚や蛇、蟲などの曲線的な動きを再現した模型はなかなかに面白い。
領民の作品も一通りオークショニアに見て貰っていい物を選んでもらう。
それ以外の細々とした出品については、展示場に並べて入札を待つ事にする。
出品者は展示期間、最低価格、即決価格を設定して展示を依頼する。
これは地球のネットオークションを参考に、一部をアナログにしたものだ。
客は展示場で現物を見て、欲しければ端末から入札をする。
領内通貨はコインなどの現金を使わず、仮想通貨を使用している。
その為、入札した金額の一時預かりやその解除も管理がしやすい。
その辺りは「経理のお姉さん」型のサーバが担当している。
どういう訳か外観は2.5倍スケールの眼鏡っ娘フィギュアだ。
今頃はスカート型の放熱板が盛大に舞っている事だろう。
展示には場所代が少しかかるだけなので、出品のハードルは低い。
無名の作家の作品が、思わぬ高値で売れる可能性も無くはない。
オークショニアにも販売額の1割を手数料として渡すことにしている。
本会場ほどではないにしても、頑張って盛り上げてくれることだろう。
いつかここから一流の芸術家が生まれる事を願いたい。
オークション会場の一部は成人限定区画にしておいた。
裸婦画や裸像については全部まとめてそこで扱うことにする。
エロ画像も芸術的な裸像も全部同列に扱う事に疑問を持つ者もいるだろう。
だが、その線引きを客観的かつ具体的に規定するのはなかなか難しい。
日本におけるヌード作品の扱いには以前から疑問を持っていた。
性器の描写については年齢制限を設けても発表は不可とされていた。
その一方で、海外の作品を「芸術である」として展示することもあった。
「芸術」として広く認知された作品だけが公開できる状況。
では、その途上にある作家や作品はどうなるだろう?
「芸術」として認知してもらおうにも、公開すら許されない。
これはヌードモチーフの芸術が育ちにくい環境と言えるだろう。
そもそも、何を持って「芸術」とそれ以外を区別するのか?
また、「性的」である事は「芸術的」であることを否定するものなのか?
少し違う話になるかもしれないが、人間の味覚を考えてみよう。
様々な味の区別と併せて、「美味い」「不味い」という感じ方もある。
未熟な果実や腐った物を「不味い」と感じるのは、当然身を守る為の本能だろう。
反面、塩気や甘み、脂などを「美味い」と感じ、しばしば過剰摂取してしまう。
これは狩猟採集時代に不足がちだった栄養を補おうと言う本能だろう。
視覚情報についても「美しい」とか「醜い」という感じ方がある。
この感覚にも、生存や種の保存に関わる何かしらの機能があるのではないだろうか?
例えば豊かな森を「美しい」と感じるのは、その環境が生存に適しているからだろう。
「美」と「健康」がしばしば同時に語られるのも、根底は同じだろう。
異性を惹きつける魅力もまた「美しさ」の1つだ。
ならば「エロさ」と「美」はしばしば同居する事になるだろう。
世の中には、ただ欲情を発露しただけの表現も多いかもしれない。
だが、「性的」である事が必ずしも「芸術的」である事の否定になる訳ではない。
もちろん、子供にポルノを見せるのがよいとは思わない。
また、成人が相手でも公共の場で無差別に見せるのはよくないだろう。
その辺りの線引きは必要だが、それでも発表の機会は残しておきたい。
俺の領ではヌード作品及びそれに準じるものは「条件付で公開可」とする。
要は「成人向け」と明示して未成年の閲覧を制限するということだ。
街頭での展示などについては申請を受けて個別に審査することにする。
年齢制限なしの展示会などへの出品についても同様だ。
発表の機会について平等性が完全に確保できているとは言いきれない。
しかし、年齢制限さえつければ発表することはできる。
そこで支持を集めれば、その後の審査にも影響するかもしれない。
少なくとも、成人相手なら自分の作品を売ることができる。
とりあえずはこの条件で様子を見よう。
なるみ「ねね、このぱんつかわいいと思わない?」
一樹「ん?こら、それは俺に見せちゃ駄目な奴だろ」
なるみ「いーじゃん。みんな頑張って造ったんだから、見てあげようよ」
画面には女の子が簡素な下着姿でランウェイを歩いている様子が映し出されている。
縫製クラスを受講した生徒達が自作の下着を発表しているところだろう。
この後にはプロの職人が作った下着を女の子が着て見せるショーもあるはずだ。
一樹「そこは女性しか入場を許可していない会場だ」
なるみ「入場はね。でもここはかずきおにぃちゃんのダンジョンだよ。それに、かずきおにぃちゃんが見てくれないとどれが好みに合ってるかどうかわかんないじゃない」
一樹「・・・右から2番目の子とかかわいいな」
なるみは言い出したら聞か無いので一度は返事をしておこう。
どれもあまり変わらない様に見えるけどね。
なるみ「かずきおにぃちゃん、今ぱんつじゃなくてモデルで選ばなかった?」
一樹「いや、そんなことはないぞ」
なるみ「それはそれで覚えておくから、今はぱんつを選んでよ」
一樹「・・・・左から3番目」
なるみ「ふむふむ、確かにかわいいかも。こういうのが好みかー」
ようやく満足してもらえたか。
通常のファッションショーとは別に、これは女性専用エリアの会場でやっている。
会場単位では無く区画単位で女性専用なのは、ヌードデッサン等の都合からだ。
絵描きやデザイナーを育てる為に絵画の教育には力を入れていくつもりでいる。
絵や彫刻は魔法の基礎訓練にもなるらしいから、その意味でも有効だろう。
そして、ヌードデッサンは美術の基本の1つだと聞いている。
ただ、ヌードデッサン会とヌードショーをどのように区別するのか。
入場者がクロッキー帳を持っていればデッサン会と言い張れてしまうのか。
また、ヌードモデルのポーズをどこから「猥褻」と見做すのか。
異質な物のような感覚はあるが、客観的かつ端的に線引きするのはかなり難しい。
なのでヌードデッサンは原則として色街の一画でやってもらっている。
ただ、ヌードデッサンが美術の基本であるのなら、小さい頃からやった方がいい筈。
子供の絵を描くなら子供をモデルとしたヌードデッサンもした方がいいのだろう。
しかし、未成年を異性の前にヌードモデルとして立たせるのはさすがに問題がある。
また、見せる側でも描く側でも、未成年を色街に立ち入らせる訳にもいかない。
そんな事情から、妥協案として同性のみを集めるデッサン会場を造ることにしたのだ。
描き手が同性のみならばと、この場所限定でヌードモデルを引き受ける者もいる。
デッサン会の参加費が払えない子供達にはいくつかのグループを作ってもらった。
会場だけ無償で貸し出し、モデルは交代で務めるよう指示しておく。
また、未成年をモデルとしたヌードの図像はその区画からは持出禁止にしておく。
発表用の作品ではなく、飽くまで技術を磨くための訓練という位置づけだ。
ついでなので、今回のような子供用下着のファッションショーなどに使う会場も造った。
治癒術師候補生が行う子供の身体の観察実習などもその区画でやってもらう事にする。
そんなこんなで同性のみが立ち入れる区画、というものが出来たわけだ。
もちろん、性別を問わず入場や出展ができる普通の会場もある。
普通の服の発表会は年齢も性別も制限を設けず、『経済特区』の小劇場で行う。
だが、下着や露出度の高い服についてはやはり色街でやってもらう事にした。
こちらは男女は問わず、入場者も出演者も成人限定だ。
なるみ「蜘蛛の糸が手に入ったから、シルクっぽいぱんつも作れるね」
そういえば蜘蛛の糸と蚕の糸は似たような素材なんだっけ?
同じ太さの鋼線よりも強度が高いって話だったな。
ミノムシの糸は更に強いって話もあったが、こっちには居るのかな?
一樹「パンツならコットンでいいだろ?蜘蛛の糸は弓の弦に使う予定だよ」
なるみ「そうだったね。あとは、女性型ガーディアンの胸に使うのもいいよ」
一樹「どうなるんだ?」
なるみ「おっぱいがより艶やかになってシルクの手触りになります」
一樹「いや、要らないだろう。おっぱいは今でも十分にきれいだよ」
なるみ「まあね!」
なるみは自慢げに平らな胸を張る。
なるみ「あと、魔力を流せば皮膚が強靭になるから下手な鎧より丈夫になるよ。胸を攻撃されてもコアが破壊されるリスクはだいぶ減るね」
一樹「いや、それを先に言えよ。そういう事なら蜘蛛の糸もっと欲しいな」
なるみ「うんうん。この間みたいな上位種はなかなか見つからないけど、小さいのならこの辺でもちょくちょく見るよ」
一樹「糸の質は落ちないのか?」
なるみ「いくらかは落ちるね。それでも素材としてはなかなか優秀だよ」
差し当たってはそいつらを採集することになりそうだな。
だが、小さい蜘蛛から糸を集めるならけっこうな数が必要になるだろう。
そうなると生態系への影響が心配だな。
一樹「捕り過ぎてもまずいんじゃないか?数の調整はアネモネに頼めば大丈夫かな?」
なるみ「そうなんだけど、この辺だと残しておいてもたぶん冒険者がほとんど狩り尽くしちゃうよ?」
一樹「なら、むしろ保護した方がいいのか?」
なるみ「んー、主な生息地はもっと奥地だから問題ないんじゃないかな?むしろ、冒険者に持っていかれる前に積極的に狩った方がいいと思う」
蜘蛛の糸は人間族にとっても有用な素材と言うわけか。
それなら余った分は売ってミスリルなんかを仕入れてもいいな。
それとも冒険者から買い取って人の流れを活性化したほうがいいか?
一樹「小さい蜘蛛の採集なら子供達の小遣い稼ぎにしてもいいな。あとは、養殖とかも出来るならしてみたい」
なるみ「養殖かー。ゴブリンは繁殖力が高いから場所と餌さえ確保できるなら出来なくもないかもね」
一樹「ん?なぜゴブリンの話が出てくる?」
なるみ「え?養殖するなら餌が必要でしょ?」
そういや、ヘルスパイダーの話だったか。
一樹「さっき言ってたちっこい蜘蛛と言うのは具体的にどれくらいの大きさなんだ?」
なるみ「この辺で見かけるのは体長1~2メートルくらいかな」
先日グリシーヌが捕まえてきたのは4メートル程だったか。
あれと比べれば確かにかなり小さいな。
だが、2メートルの大蜘蛛が温泉宿付近に出るのはまずい。
一樹「わかった。養殖は諦めよう。温泉宿付近に来たヘルスパイダーは見つけ次第狩ることにする」
なるみ「あい」
一樹「狩りはアネモネに任せて大丈夫か?」
なるみ「大丈夫。というか、ゴブリンを狙ってたまに入って来るから、既に何度か対応してるよ」
一樹「そうだったのか?」
ガーディアンってけっこう自律的に動いてくれるんだな。
みんな優秀で助かる。
なるみ「うん。でも、大きいのが出たらかずきおにぃちゃんもお願いね」
一樹「分かった。無理はしないように伝えてくれ」
なるみ「あいさー」
スピーカーから拍手の音が聞こえてくる。
下着ファッションショーの学生の部が終わったのかな?
最後にステージ上に自作の下着を身に着けた生徒がずらりと並んでいる。
大きい子もちらほら居るようだが、小さい女の子が多いようだ。
縫製クラスと言っても、うちの職業訓練校の専門性はまだまだ低いのかな?
今回は一般的な下着を模倣しただけで、独創性のある物は少ない様に見える。
いずれはこの場で縫製スキルやデザインセンスをアピールして欲しい。
売り手と買い手、服飾業界と職人を結ぶ架け橋になって欲しいと思う。
司会「暖かい拍手をありがとうございます!縫製初級クラスの皆さんでした」
なるほど、ここまでは初級クラスの学習発表会だった訳か。
家庭内での利用を前提とした基本的な裁縫スキルを教えているはずだ。
講師の手配やカリキュラムの策定はルーデレルに指揮を任せている。
上級では自分の店を持てるレベル、中級はそこで働けるレベルを目指す。
中級クラス以上の発表ならもう少し独創性のあるデザインも期待できるだろう。
造った本人かその友人などがモデルとなってステージに立つ事になっている。
学生の部の最後は、事前コンペで選ばれた者の作品が出てくるはずだ。
コンペ入賞者には、こちらで手配したモデルを使う事が許されている。
なるみ「中級クラス以降の発表も楽しみだね」
一樹「そうだな。だが、俺は発表会の後のマネキン展示で確認するよ」
なるみ「えー?せっかく生身の女の子が着てるとこ見れるのに」
一樹「だから、その会場は女性専用区画だ。他の会場を見せてくれ」
なるみ「むー。ならなるみが見るのは問題ないよね」
一樹「ああ、そうだな」
モニターの操作権がこっちに移ったのでマウスで会場を切り替える。
すると中空に巨大スクリーンが現れてさっきの会場の様子を映し出す。
おや、あれはシェリーか?もう中級クラスに進んでいたのか?
ブラジャーと言うより、えーと、ビスチェとか言うんだっけ?
大きなおっぱいを支えられるように下を広めに作ってあるようだ。
一樹「そのスクリーンは魔力消費がでかいんじゃなかったのか?」
なるみ「そうだね。でも、今のレベルならそこまで気にする必要はないよ」
一樹「そうか」
なるみ「それに、お祭りの時はけちけちしちゃ駄目なんでしょ?」
一樹「まあ、そうだな」
手元のモニターで他の会場を順に確認していく。
盛況とは言いづらいが、一応人は入っているようだ。
小劇場とオークション会場はそこそこ賑わっているか。
小劇場では歌や踊り、朗読や演劇などが披露されて行く。
クオリティとしては微妙な所だろうが、領民の祭りだからそこは気にしない。
要所要所で兎人族のパフォーマンスも入り、飽きないよう工夫してくれている。
先ほど触れた小劇場での一般向けのファッションショーは明日行われる予定だ。
出品者もモデルも、今なるみが見ているショーと被る人が多いからね。
オークション会場ではドレスやタキシードなどの盛装が目立つ。
芸術に金を入れるのも貴族の嗜みというのはこの世界も同じらしい。
もっとも、辺境の街だから来ているのはほとんど代理人らしいけどね。
みどり達3人もかわいらしいミニのドレスで参加して注目を集めている。
展示型の会場で髪飾りを狙っているようだ。
博物館の骨格標本も好評の様だ。
グリシーヌが倒した亀型の亜龍に、俺が倒したオーガロード。
あとはストーンバイパーやゴブリン、カミツキウサギなどなど。
博物館と呼ぶにはまだまだ展示品が少ないが、迫力は十分か。
再びスピーカーから大きな拍手の音が聞こえてくる。
なるみの出した巨大スクリーンに、10代後半くらいの女の子が下着姿で並んでいる。
これは縫製中級クラスの生徒達の自作下着の発表が終わった所かな?
俺が検診を担当している色街の踊り子の姿も何人か見えるようだ。
職業訓練支援制度を活用してちゃんと手に職を付けてくれているなら嬉しいね。
一樹「今のところ、どこもトラブルは無い様だな」
なるみ「そうだね。で、この中だとどのぱんつが好き?」
一樹「・・・左から2番目」
なるみ「なるほどー」
街では『ハイランダー』の傭兵部隊とステファン率いる警備隊が警戒に当たっている。
街の規模を考えればこの2隊を雇うだけでもそこそこ厳しい所だろう。
しかし、それとは別に私服警備が220人と剣士隊200人に弓士隊200人もいる。
更に、山を通って侵入する者に対しては忍者隊とゴブリン隊が警戒している。
『魔族』とされている俺と、最近まで戦争していた鬼族と人間族。
いろいろと不安はあったが、今回は平和裏に終われそうだな。




