クロちゃんズ・ルーム
クロちゃんの巣箱は、大きめの、虫飼育用ケースだ。
透明のプラスチックケースに、網状の蓋と窓がついている、あれだ。
壁面には外からガムテープを巻いてある。
鳥は、基本的に「透明な壁」を認識できない。
慣れれば多少の理解は示すが、ヒナは、これにパニックを起こす場合がある。
ある程度の保温と遮蔽感が必要となるため、本当は段ボール箱が良いのだが、
いかんせん、鳥のトイレ事情がアレなので、
段ボールがいくつあっても足りなくなってしまう。
今、クロちゃんが使っている巣箱は、
2年ほど前までヒヨドリのぴよこが使っていたモノだ。
ぴよこも風呂場を拠点としてあちこち飛び回っていたが、
「ハウス!」と言えば、自分から巣箱に戻ってきたものだ。
ぴよこ亡き後、らおぴんの生活には「鳥成分」が不足していたが、
クロちゃんの出現で、必要以上に成分補充、むしろ過剰なくらいとなった。
鳥かごは?
と、思うのが普通だとは思う。
だが、開放的すぎると、鳥は落ち着かない。
とりわけ寝床となると、隅っこや、箱の中などに隠れたがる。
それにクロちゃんは大きすぎるので、鳥小屋ならともかく、鳥かごは無理だ。
ペットサークルでも小さすぎるくらいだ。
ちなみに、鳥かごも持ってはいる。
かつてぴよこ用に用意したのだが、拒否されてしまった。
邪魔にはなるが捨てかねていたある日、
自宅のネズミ取りケージに、小さな家ネズミが掛かった。
処分しかねて迷っていると、その夜、おっさんがやらかした。
「ほーれ、ちょろ吉。これ食うか~?」
あんたね……、
名前付けて、エサまでやっちまった生き物を、どうすんの?!
ネズミじゃ、放すワケにもいかないのに!
という経緯で、鳥かごはちょろ吉の棲みかとなった。
ある朝、ちょろ吉は、おっさんがロックし忘れた戸口から脱走してしまった。
家の中でネズミが自由になるというのは、あまりにもマズい。
次に出会った時は、お前は敵だ。
悲しいが、消えてもらう。
しょんぼりしたおっさん、のたまわく
「今夜はバームクーヘンあげようと思っていたのに……」
その夜。
鳥かごの中で、がさがさと音がする。
見に行くと、
なんと、
ちょろ吉が戻ってきて、自らケージに入り込んでいた。
まあ、ネズミが快適に暮らす分には十分だったが、
カラスには狭すぎる。
というか、入り口が小さすぎて出入りもできまい。
只今のクロちゃんズ・ルームは、こんな感じだ。
ちなみに。
黒いザルの中にクロちゃんもいるのだが、見えない。




