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2023/6/4 落ちる季節

初夏、それは巣立ちの季節。


クロちゃんは巣立ち前の脱落組だが、かつて、巣立ち直後に墜落していたぴーちゃんとの出会いは6/8、ちょうど今の時分であった。


同年にカラス2羽を保護する羽目になるのも、たいがいな経験である。


今はキジバトまで加わって鳥だらけの我が家。

それゆえ、とにかくこの季節、これ以上の出会いは遠慮いたしたく、鳥、とりわけカラスの巣がありそうな場所には近付かないよう気をつけている。



そんな6月のとある日曜日。


優雅に朝寝坊をキメていた私の下に、深刻そうなおっさんが現れ、のたまった。


「おい、ちょっと様子のおかしいカラスがおるねん」



……わかっている。

さっきからやたらカーカー鳴き交わしているカラスの群れに、うちのぴーちゃんまで参加しての大合唱が聞こえていたしな。


声の感じからすると、うちの近所を縄張りにしているハシブト夫婦と、ちょっと甘えた子供っぽい餌鳴きであろう。



「ちょっと見たってくれへんか?」



……………。



「……拾うで?」


「そら困る!」



そうだろうとも。


百歩譲ってハシボソならギリギリセーフと言えなくもないが、このネタ案件は間違いなくハシブトである。

しかも、9割9分巣立ち直後だ。

更に言うなら、両親つき。


下手すると近寄るだけで両親から集中砲火を浴びかねないし、よしんば無事に保護できたとして、巣立つまでカラス界で暮らしたハシブトカラスは、そうそう人間に都合の良い懐きかたはしない。


うちのぴーちゃんだって、インジェクション中のごく希な機会にしか、モフる事はできなかった。

今なんて、決死で撫でに行って、9割咬まれて流血している。



だがしかし。


本当に遭難しているヒナなら、ワタシには見捨てられる自信はない。

両親が諦めるまで待って、第3のカラスを迎え入れることになるだろう。

おっさんが何と言おうと、正直、我が家の選択権はワタシの手中にあるのである。



とにかくしぶしぶ様子を見に出て行くと、向かいにある平面駐車場に停められたワンボックスカーの上に、ハシブトカラスが1羽。


ウチの屋根と、近くの電柱にハシブトカラスがそれぞれ居座り、互いにカーカー鳴き合っている。


車上のカラスは、口の中を見るまでもなく幼さが見える子カラスであった。

駐車場の管理人が、追い払うべきか逡巡している。


このエッセイを読んで来られた皆さんにはもうおわかりの事と思うが、ここで子カラスを追い払おうと箒のひとつも振り回したら、悲劇の幕開けとなる。

現にワタシが少し近付いただけでも、頭上から殺気が漂って来ている。


親はセットで見守っているし、子供は元気で、ちょっと甘えている感じだし、これは巣立ち直後の休憩タイムっぽいよなあ……。

ヒトに近い場所すぎるので、せめてもう少しマシな位置に来るようせっつかれているのであろう。


とりあえず管理人のおっちゃんに、危険なので追い払う素振りは見せないこと、直に移動すると思われること、いなくなったら車を確認して、もし糞がついていたらソッコーで水洗しないと跡が残る旨を説明してその場を収めた。


何でそんな事を知ってるのかと訝しげな管理人さん。

そしてワタシも、何でそんな事を他人様に説明する羽目になっているのか。


……そもそも言い出しっぺのおっさんは、玄関扉の隙間からこちらの様子を伺ってるし……




とりあえず第3のカラスは飼わずに済んだ。


30分おきくらいに経過を見ていたのだが、車上から塀へ、塀から屋根へ、順調に高度を上げて、しばらく後に公園辺りに移動していった模様だ。



よかった。


名前は今度こそキューちゃんかな……とか、ちらりと頭を掠めはしたが、カラス増量の危機を脱した日曜日であった。

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