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2022/8/7  カラスのいびき

ぴーちゃんは、いびきをかく。


夏、真っ盛り。

風通し良くして隣の部屋で寝ていると、カラスの気配が色々と伝わって来てやかましいのだが、熟睡していると思しい深夜、その音は聞こえてきた。



遠くで子猫が鳴いてるのかな?



床下に何か動物が巣でも作ったのかな?



そんな感じの、「クークー」「キューキュー」「ニューニュー」……うーん、どう表現して良いかいまいちわからない。

ちょっと、モスキート音にも似ている。

大抵の音声はカタカナで表現できると過信していた日本語も、発音の壁、あるいは人工物としての限界を感じさせられてしまうものだ✨。


東北のおじいちゃんと会話しようとして、何度、しかもゆっくりと言い直してもらってさえも、カナ文に起こせなかったりした体験とかを思い出す。

あれを通訳できていた若い孫を、心底から尊敬したものである。



とにかく、謎の物音にしばらく戸惑っていたのだが、ある日、悟った。




これ、カラスの寝息……と言うか、イビキだわ……と。





ぴーちゃんは、巣立ちに失敗したカラスだ。


巣立ちから間もない未熟な頃に、ビルのガラス窓に突っ込んで落ちていた。

保護当初は脳震盪の後遺症と、嘴の歪みがあった。

しかしながら、大阪では、野鳥の診療からカラスは除外されているため、飼育の意思を伝えても、診察を断られるケースがほとんどなので、クロちゃんのクル病も、ぴーちゃんのこれも、自力で看護するしかなかった。


幸い、キツツキに近い鳥であるカラスは、ツツキ系の衝撃には強い。

頭蓋に大きな損傷や陥没は見られなかったので、餌やオモチャを引っ張らせて矯正するうちに歪みはほとんどなくなって、今では不自由なく小さな実とかも啄めるようになっている。


だが、人間の場合でも、鼻をぶつけたり殴られたりすると、軟骨が折れたり変形したりする。

カラス、とりわけハシブトのぶっとい嘴は見た目も威力も鋼鉄かと思うレベルの構造物だが、中身と根本は軟組織。

嘴そのものだって生きており、これはアヒルのぴーこちゃんで学んだのだが、破損すると、ちゃんと治癒する。


多分、ぴーちゃんの嘴の中にも、鼻腔に至るどこかに骨折跡とかがあり、ちょっと呼吸が阻害されているのではなかろうか。


因みにアヒルのぴーこちゃんのケガの理由は、他所の家の庭に侵入して飼い犬のエサを盗もうとして噛まれた結果であった。

その後当該犬とは仲良くなって、飼い主からは専用の皿まで用意してもらい、一緒にごはんを食べている姿を目撃したものである。





一晩中続く、カラスのイビキ。



妙に耳につくその音に、寝苦しさも3割増しな日本の夏の夜である。








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