2021/12/9 微妙な進展
その昔、アニメ「アルプスの少女ハイジ」を観て、何故か車椅子と松葉杖を「お嬢様グッズ」として認識してしまったワタクシは、ちょっとばかり骨折に憧れていたりしたものである。
子供の世界は単純で、学校でギプスと松葉杖で現れた級友なんかは、意味もなく一躍クラスの英雄となったりもした。
だがしかし。
クララお嬢様のごとくにお世話してくれる教育係や侍女がいる、あるいは、たいしてやることもない上に大人が世話してくれる子供と、築百年木造日本家屋(改)に暮らす多重アルバイトおばさん(太め)では、もはや異次元レベルで環境が相違する。
松葉杖で両腕が塞がってしまうため、荷物がほぼ持てない。
まとまったものならリュックだが、頻繁に出し入れする小物類にはやや不便。
小物ならウェストポーチ……だが、服装によっては、とりわけ防寒着を要する冬には着用困難な場合も多い。
ショルダーバックなんかは、ブラブラすると、杖に引っ掛かって邪魔だ。
たすき掛けタイプのリュックが便利だが、あまり見かけない上に結構良いお値段だ。
レジ袋や手提袋は、自宅内で洗濯物を運んだりするには重宝するが、長距離を持ち歩くには、杖の脚に絡まるのでめちゃくちゃ邪魔だ。
そこで、見つけた物が、これである。
松葉杖バッグ。
杖の分岐部分とグリップに固定できるので、ブラブラしない。
ポケット等はほとんどない単純な造作だが、財布にカードケース、携帯電話や定期券辺りを突っ込めれば、大抵のお出かけには事足りる。
ワタクシ的な最善点は、タブレットが入る事だ。
ほとんどの携行バッグ類はスマホを基準に作られているため、タブレットが手放せない人間にとっては、どれも微妙にマイクロ過ぎるのだ。
だが、困難なのはお出かけだけではない。
自宅で、職場で、松葉杖で塞がった手では、「ぶら下げる」以外の運搬作業が全くできないのである。
カラスの水入れも、お茶の入ったマグカップも、道具が乗ったトレイも、袋に入れてぶら下げられる物以外は絶望的に運べない。
お陰で、今やご飯はキッチンの流し前で立って食う女と化している。
お茶碗すら運べないからだ。
こうなると、松葉杖バッグだけでは何ともならない。
最低でも、片手はフリーであって欲しい。
そこで見つけたのが、これだ。
ハンズフリー松葉杖、iwalk。
義足の親戚みたいなもので、膝で支えて自立できるタイプの杖だ。
こうなると全然「松葉」ではないが、一般的な分類で「ハンズフリー松葉杖」と通称されているようだ。
アマゾンでも売られているし、やや安い類似品もある。
とはいえ結構なお値段だ。
しかも、立つ、歩く、には圧倒的に便利であるが、座る時には邪魔だ。
義足と違って、本物の脚を曲げて「消える親指」の子供騙しマジックを思い出させる状況になっているので、座ると、杖の脚部分が真っ直ぐ前に突き出されてしまうのだ。
電車やタクシーで座る時なんかには外す必要が生じる場合もあるが、乗降の度に脱着していては、それこそ時間が足りない。
が、はずしたままだと、松葉杖無しでは動けない。
結局、通勤には松葉杖も持って行かないと道中で困る場合もある。
特にワタクシの場合、折れていない右足もやや不自由なので、完全にハンズフリーというわけにはいかない。
だが、ちょっとした立ち回りならほとんど普通にできるようになるので、これはかなり便利だ。
高いが、廉価品でもいいからアマゾンで買おうとしてカートに入れて……ポチろうとして気がついた。
「お届け2~3週間 12/30~1/5配送」
因みにその日は12/9であった。
一応、ギプスは早くて12/23に外れる予定だ。
ちょっと古いが。
……いつ要るの? 今でしょ?!
そう、この商品は大抵、不馴れな松葉杖生活にちゃぶ台返しをしたくなる一週間か10日目辺りに、何とかならないかと思って探し始めるタイプの品物なのだ。
足首周りの骨折は、よほど重症でなければ、概ね1ヶ月くらいでギプスは外れる。
よって、必要なのは2~3週間なのだ。
半月後に届いても困る。
すぐに届く正規品は高いし(送料込み30000円弱)、仕方がないので中古を探すと、意外にも結構な数の出物があった。
大抵の人は2度も3度も使うもんじゃないし、嵩張るし、お金もかかったしで、即転売案件なのだろう。
中古とはいえ、結構なお値段が居並ぶ。
だが、かろうじて手が届く価格の出品に出会い、何とかゲットする事ができた。
まだ慣れないが、ほぼ何もできない生活よりは格段マシだ。
あと2週間、こいつだけが頼みの綱だ。
お陰で、ぴーちゃんの水とエサの容器は、やっと洗える場所に運べるようになった。
カラスに迷惑かけまくりの骨折生活、あとどれだけ続くのだろうか。




