2021/11/13 カラスとおでん
おでんの美味しい季節がやって来た。
この辺では「おでん」より「関東炊き」と呼ぶ人の方が多いおでんだが、じゃあ関西炊きって何だと問われても困る。
ここ数年間、夜風の冷たい頃を過ぎると、我が家におでんの絶える日はなくなる。
なぜなら、ちょうど帰宅時間と閉店時間が重なるチョイ飲み屋さんが、毎晩、残ったおでんをくれるからである。
なんなら、鍋のままくれたりもする。
時に人間だけでは食べきれないほどいただいてしまうので、そんな時にはカラスたちのおやつとして、ありがたく活用させていただく事にしている。
カラスの体に良くないんじゃないかというご意見もあろうかとは思うが、正直、どこをどう調べてみても、決定的にカラスに最適な食生活というものは見当たらない。
かろうじて得た知識内で言えば、小鳥から猛禽に至るまで、あらゆる鳥の食うものを全て食う、守備範囲の広さを誇るレベルの雑食だ。
好き嫌いはあっても腹が減れば大根でも食うバイタリティーだが、ウチの子たちは、箱入り中の箱入り、深窓の令鳥。
基本、ワガママで贅沢なため、体に良さそうな気がする物をあげても、おいしくなければ、あんまり食べなかったりする。
その辺は人間と同じだ。
其れよりなにより、鳥としては、カラスはよく食う。
ビッグサイズのドッグフード一袋を、二羽で、1ヶ月で食べ尽くす。
猫3匹で一週間はもつキャットフードが、カラスたちでは3日で終わった。
正直、餌にこだわっていられる範疇を越えている。
おでんに話を戻そう。
出汁を洗って、おでんの具材をひと口サイズに切ってやると、喜んで食べる。
主に練り物。
塩分は多いが、鳥ならある程度は大丈夫だろう。
これには有効な点が1つある。
練り物に、色々な物をねじ込めるのだ。
他のエサだと、これが意外に難しい。
好物のお肉とかだと、結構な長時間、喉にある餌袋と嘴の間で出し入れを繰り返して楽しむため、異物に気付いて吐き出しやすい。
それもあるが、せっかく美味しいものをあげるのなら、おいしく食べさせてやりたいというのもある。
例えるならこれは、セロリが絶対に無理な人に、体に良いから……と、好物のハンバーグの中にブツ切りの生セロリをゴロゴロ入れて食べさせようとするようなものだからだ。
カラスの場合だと、これは、ボレー粉となる。
ビタミン添加した、粉砕貝殻だ。
どうしても日光に当たる時間が短くなるし、虫などの活き餌も食べられないので、様々な大型鳥用の餌も織り混ぜて与えるようにしているのだが、木の実やボレー粉は、とにかく粒が小さい。
そもそも大嫌いな訳ではなく、あげればシャクシャク食べたりするが、こういう粒の細かい物は、嘴のデカいカラスには食べにくいものなのだ。
粉なので小さな器に入れる必要もあるが、大抵の適した器に、カラスの嘴は入らない。
よしんば入っても、そういう器は嘴で割ったりねじり取ってしまったりされやすい。
そこで、おでんだ。
ちくわや平天のような練り物を指先大に刻んでやると、一口で丸のみする上、勢いよく次々たべる。
じっくり味わうほどではないが、好物であるという標だ。
なので、そこに切れ目を入れて、ひとつまみずつのボレー粉を押し込んでおくのだ。
もちろんまぶすという手もあるが、そうすると、ツルンと飲み込む喉越しが変わってしまうためか、あまり食べない。
そりゃそうだろう。
ワタクシだって、ツルンとしたものならツルンと食べたい。
ちなみに、クロちゃんは厚揚げ豆腐が好きだ。
塊でもらって、チマチマつついてたべる。
4センチ角くらいのものを一個でお腹いっぱいになるようだ。
他の練り物は、ドッグフード大に刻んでやらないと、うまく食べられない。
置いたまま啄むにも、足で押さえて引きちぎるにも、中途半端な固さであるらしい。
クロちゃんは、グニャっとしたものを踏むのが嫌なのだ。
ぴーちゃんはその点、守備範囲はグローバル。
試してはいないが、コンニャクだって食いそうだ。
ちくわなんかも、まるごと上げても喜んで食べる。
止まり木に運んで足で押さえて、ゆっくり楽しんで啄むのだ。
が、大抵途中で落っことす羽目になり、後の掃除が厄介なので、あえて刻むようにしている。
ちなみに、平天は刻まないと食べられない。
くわえて止まり木に運ぼうとする段階で、全部、千切れて落っことすっからだ。
そんなぴーちゃんのお気に入りは、ゴボ天だ。
だが、いつも、ゴボウだけ上手に抜いて捨ててある。
まだ引き抜き現場は目撃できていない。




