2021/3/6 カラスの春
世間に春がやってきた。
さすが、3月。
まだ寒くはあるのだが、3月に入ったとたんに、これまで着ていたコートでは汗ばむようになってきている。
着替えのできないケダモノたちも同様らしく、猫たちによる、布団への侵入権を争っての流血沙汰は激減した。
ちなみにこの件で流血するのは猫ではなく、らおぴんだ。
痛い。
布団の中でケンカするのは勘弁して欲しいものである。
とりわけ気温の変化を感じやすい環境下にあるのは、クロちゃんだ。
ぴーちゃんの部屋は比較的屋内奥地にあるため、わりと気温が安定している。
ほとんど地下洞窟の理屈だが、まあ、そんなようなものだ。
すまん、ぴーちゃん。
クロちゃんは、ただでさえ好きな水浴びが、暖かい季節を迎えて、さらに大好きになった。
もう、洗面器が空だと、咥えて振り回して催促するので喧しい。
通りかかった近所の人が、「風呂場にイタチが入り込んでるのでは」と心配してくれるレベルの大騒ぎ。
窓が怖くて外を見ないしあまり鳴かないカラスなので、通りに面しているにもかかわらず、ここにカラスがいるとは、わりと知られていない。
らおぴんがシャワーを浴びにクロちゃんの部屋(浴室とも言う)に入ると、蛇口をつついての大催促がはじまる。
蛇口からの掛け流しが、クロちゃんのマイブームなのだ。
いや、らおぴんは……
水じゃなくてお湯を浴びるから。
お湯出したからって怒るなよ……
とにかく邪魔しに来る。
洗面器と見れば飛び込んでくるし、シャワーは浴びに来るし、蛇口の下には特攻してくるし。
更には、洗髪しようと前屈みになるや、背中に飛び乗って来るし。
あまりの邪魔さに、シャワー横の浴槽の蓋の上に、クロちゃん用の洗面器を置いてやったら、めっちゃ喜んで水浴びをし始めた。
これは、真冬にはできないネタだ。
なんせ、飛沫が冷たい。
それ以前に、せっかくシャワー浴びてるのに横から降り注ぐカラス汁。
人間として、これで良いのだろうか。
真横で嬉々として混浴を楽しむカラスは非常に可愛いのだが、絵面の全体図的に、写真を披露するわけにはいかないのが残念だ。
ちなみに、もちろん写真は撮っていない。
タブレットの防水加工を過信したくはないのもさることながら、さすがにらおぴんといえど、状況的にどうかと思ってしまうからである。




