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閑話 報告

これを気にかけて下さっていた方は、おそらく皆無であろう。


だが、報告しちゃう。



おっさんの包丁研ぎ、その後、である。



なんと、半月を経て、今なお継続されている。

それすなわち、まだ仕事がナイという事に他ならないが、怪しすぎる包丁研ぎ屋が予想以上に周知されてきたのだ。


当然だが、生活するに十分な収入は見込めない。

だが、ステイ・ホームなこのご時世、ひとり憂鬱にカレンダーを眺めているよりかは前向き案件である。



何より、缶ビールひとつ買うにも嫁さんのご機嫌をうかがわねばならないという、世のダンナ族として考え得るに、およそ最悪な状況だけは解消されたワケなのだ。

若干であるが、なんか、気性も丸くなった。


いちいちカラスにケンカを売っては負ける毎日にも、やや変化が訪れた。



おっさんが、ぴーちゃんをやけに可愛がっているのだ。





そもそも、よく噛むぴーちゃんには馴染めなかったおっさんだ。

本人は「犬派」だと宣うが、要するに、ひたすら従順で、かつ何をされてもブレなくすがりついて来る生き物が好きという類いの奴なのだ。


ちなみに、当然ながららおぴんは、そんなタイプではない。


凶悪さにかけては、ぴーちゃんごときに後れを取るほど緩くはない。



嫁にはない優しさをカラスに求める男というのも人間としてどうかとは思うが、その心情については、もしかしてらおぴんにも責任の一端はあるかもしれない。

というか、ある。


そんなおっさんに、「カラスに大声を出さない」「ケージをどついたり、脅かすような行動をしない」という2点をしつこく教育してきたのだが、その甲斐あってか、最近になって、ぴーちゃんが少し穏やかになってきた。


近付けば漏れなく噛まれていたのが、かなり緩和されたのだ。


素早く手を引っ込める必要はあるものの、軽く、ササッとなら頭を撫でる(掠める)事も可能となった。


元より、ケージに頭を擦り付けたりしているので、撫でられるのは嫌いではない様子。

ただ、噛むほうが好きなだけで。


手から餌をあげる時にも、以前であれば、めっちゃ気合いを入れて挑んで来たものだ。

だが最近は、「そっ」と嘴で、うけとって行く。



かわいい。



愛玩動物としての一般的基準からすれば、有難がるレベルにはちょっと遠いはずなのではあるが、かわいいのだ。




家庭に吹きすさぶ冷風に芯まで冷えたおっさんの心をとろかす、カラスの微妙な愛。


おっさん×カラスの物語を発展させる気はさらさらないが、カラスのいる優しい家庭の構築に向けて、一歩前進したとは言えよう。



包丁研ぎ。



怪しすぎる副業ながら、影響力はなかなかのモノだ。


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