2020/3/3 ぴーちゃん同居計画
のっけから後ろ向きではあるが、クロちゃんとぴーちゃんの同居は残念ながらあり得ない。
人間から見れば大差ない「カラス」同士なのであるが、カラス的視点で鑑みれば、クロとぴーの間には、深くて暗い河がある。
いくらROW & ROWでも、黒い舟を出そうとも、その辺はどうにも埋まらない。
こいつらは、わりかし違う生き物なのだ。
人間と一緒に暮らしやすいのは、クロちゃんだ。
ちんまりしているし、力も弱い。(※くどいようだが、あくまでもらおぴん基準である。)
腕に止まっても、嚙み付いても、人間にたいしたダメージはない。(※同前)
キャーキャー騒がれはするものの、モフモフすることも可能だ。(※同前)
ぴーちゃんは、愛玩生物としては失格著しい。
工場カラスとして、人間と接する時間が少ない環境で育ってきたせいでもあるだろう。
ちょっと大人になって落ち着きはしてきたものの、こいつは、限りなく猛禽に近い性質を有する。
猛禽との扱いにおける差といえば、与えるエサがドッグフードや九官鳥フードで済むか、生餌と、冷凍ネズミや千切ったヒヨコを必要とするか否かくらいだ。
前後左右に食い込む爪と、牙同然の嘴は、少々フレンドリーであってもなおかつ危険な凶器だ。
とりわけ爪は、掴んだら放さないパワーと勢いなので、凶暴な猫相手並のダメージを食らう羽目になる。
だが、まあ、ある程度こちらの言葉を理解したりもする。
さらに言えば、喋る。
目下、ぴーちゃんのおしゃべりレパートリーは、「オハヨ」「バイバイ」「イテッ」「マタネ」で、これを組み合わせて話しかけてくる。
朝、顔を見ると「オハヨ」。
「また後で」と席を外すと「マタネ、マタネ」と呼ぶ。
黙って退出すると、「バイバイバイ、マタネ、バイバイ」を独りで繰り返している。
で、こちらから「ばいばい、またね」と言って退出すると、黙っている。
どうやら若干の法則は理解しているようだ。
あと、喋りはしないが「ハウス」もわかる。
……たぶん、わかっている。
ぴーちゃんがウチにやって来たなら、色々と大変そうではあるが、念願の「おしゃべり動画」撮りができるのではないかと期待している。
カラスのユーチューバーとして、デビューできちゃったりするかもしれない。
だが、ろくでもない会話を傍受されないように気を付けておかねば、どえらい事件が発生しそうだ。




