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2020/3/3  ぴーちゃんの岐路

ハシブトカラスは凶暴だ。


ハシブト、すなわち・・・・・・ぴーちゃんの事である。



凶暴だとは言え、それはあくまでも人間の立場から見たペットとしての基準であって、別に、カラスが世界に害なす災害級の魔獣だとか、そういうワケではない。

世間には、それこそ脱走でもされれば警報発令レベルのイキモノを愛玩している人も多いが、ぴーちゃんなんぞは、仮に脱走したところで、害はと言えばゴミ漁り程度。

脱走はおろか、一般論ではむしろ放鳥を推奨されたりもする、可愛らしい生き物である。


そのくせ、「じゃ、ここで放しまーす」と宣言すると、誰もが「・・・・・・場所変えてもらえます?」などと勝手な事を言うのだが・・・・・・。

とりあえず「野鳥は元いた野生に」とおっしゃる方々には、元いた場所の野生生物生存可能環境が健全かつ近隣住民による危害が無い旨の保証をいただく事にしている。

過激かもしれないが、ガラスに激突したことに起因するぴーちゃんの負傷が、自然界における弱者淘汰とは思えない故の結論である。



そういえば、釣りを趣味のひとつとするワタシは、野生生物とお近づきになる機会にわりと恵まれている。

深夜の海岸でタヌキの親子と共に夜光虫を眺めたり、シカの群れと山道を延々歩いたり、どうやらケダモノとの親和性は高いらしい。


そんなワタシが恐怖した相手、



それは、「犬」だ。



正直、山で出会ったクマよりも怖かった。


とある準都会の広大な埋め立て地を自転車で移動していた時だ。

建物の少ない平地に、プレハブの倉庫と、その周りを囲む犬小屋の一群があった。

何気なくその前を通り過ぎようとした瞬間、十数頭の犬が各小屋から一斉に飛び出してきた。

当然の如く、繋がれてはいない。

小さいものはダックスフント、大きいものはレトリバー、

一般的な愛玩種の、汚れ果てた姿であった。

数ヵ所噛まれつつ、ママチャリで50キロ出せると定評のある、滋賀の田舎で鍛えた脚力で埋め立て地の直線道路を人里まで走破し、コンビニに飛び込んで事なきを得た。


どうやら、近隣でも周知の吠え付き迷惑案件であったらしいが、どうやら飼い主が失踪するにあたり、犬を放置、かつ「解放」していったらしい。


その後は、警察と消防、保健所による大々的な野犬狩りと相成ったらしいが、あの目に遭ったワタシにはもはや「かわいそうだから黙認しておこうよ」と言える余地はなかった。


それ以来、ワタシは犬を飼わない。

なぜなら、来るべき南海大地震において、逃げ延びた飼い犬が野犬の群れと化す未来を見たくはないからだ。

まして、そうなるとはわかっていても、繋いだり、危険な場所に閉じ込めたまま人間だけ避難することなどできず、迫り来る危機から逃れられるよう、「解放」してしまう自分が分かっているからだ。


同じ理由で、繁殖する水棲生物や、外来種も飼わない。

飼育環境が天災で崩壊した時に、逃がさずに処分する事ができないからだ。

ペット放置の原因がすべて「遺棄」であるとは思わない。

脱走や、災害、その他色々あるだろう。


処分が可哀想だからと、逃がす場合もあるだろう。


だがその結果、害獣として駆除される羽目になっている。




カラスを保護し続けることは、あまり一般的ではない。


ワタシも、あえてカラスを飼うために捕獲や収集をしたりはしない。


カラスに限らず、ワタシが飼う生き物は、たまたま出会った迷子の個体ばかりで、かつ繁殖しないように気をつけている。

野性に還せる個体は野性に還しているし、生き延び難い場合や、カラスやネズミのように、放す事によって迷惑となる個体は保護し続ける。

敷地内で子供を産んだ野良猫は、万が一の場合でも殖えることのないように、全員去勢した上で保護した。


クロちゃんやぴーちゃんを飼い続けているワケは、人間に育てられた彼らが厳しい縄張り争いに勝てずに死ぬ未来がほぼ確実であり、また、鳥口密度の低い場所で放鳥した場合、そもそも鳥の生きられる環境ではなかったり、地元に迷惑な存在となるかもしれないからだ。







さて




重い話で長くなった。




かつてここで、「飼う前によく考えよう」と書いたことがある。

それは、人に勧める場合にも同様だ。


想定内ではあったのだが、近日、ぴーちゃんはワタシが引き取ることになった。

ただいま環境作りの真っ最中だ。

風呂場はクロちゃんの縄張りだし、そもそもぴーちゃんクラスになると、放し飼いはやや危険だ。

猫たちが籠に近付けば、はっきり言って、猫に危険が及ぶ。

加えて、中型犬並みの排泄物が発生する。


ちなみに、原因は、新たに赴任してきたベトナム派遣社員さんがカラスとの同居に馴染めなかったためである。


ぴーちゃん、痛恨の、とーちゃんとのお別れである。



さすがのワタシも、種族のちがうカラス2羽は、許容限界値。

今春、迷子のカラスを見かけても、申し訳無いが保護はできない。



とはいえ、○十年の人生において、興味は持ちつつ縁のなかったカラスに短期間で2羽に遭遇した事がそもそもレアな事案だ。

それだけ生育環境がきびしくなってきているのであろう。



まもなくカラスは繁殖期。

今月からは禁猟期にも入る。




カラスのみならず、見捨てられた雛鳥と出会わずに済む春であるよう、切に願ってやまない。




挿絵(By みてみん)


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水遊び後でずぶ濡れ中

この際、芸を仕込んでYouTuberか何か目指すしかないか?

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