カウンターパート
「君が代は…(一太郎の携帯に着信が鳴る)」
「はい。もみもみ」
警察学校の同期である守俊からである。
「久しぶり、元気?」
「久しぶり。元気だけど…なんかタイミングがね」
「いやどうしてるかなとふと思い出してね。学校のお笑い王が」
「…そういうことか」
「そういうこと。さすがは元公安志望だっただけある」
「志望だっただけだよ。真にこの国を守るために自分の名前で表に出てやる方が向いていると気づいたからね。今回の選挙に関してのカウンターパートは私だ」
「お前は、学校時代からそもそも目立ちたがりやというかおしゃべりだから向いてなかったよ。まぁ、俺らのとこまで名前が挙がるだけでもたいしたもんだよ。立派な対向組織。対向個人といったところか」
「はは。で俺がトラップ引っ掛からなかったから大物議員様が調べろということねぇ」
「おっと。ノーコメント。辞めているのに教官の教え守ってるのお前くらいだから逆にスゲェ」
「はぁ。自分を客観視すれば、モテない自分に話しかけてくるのはトラップの可能性大だからね。何かしら来ると読んでいたけど、もっと巧妙にやってくれなきゃつまらない。世界基準でお願いしたいわって遠回しに上に言っといて。内調あたりに。なんてね」
「はは。冗談でもやばいやばい。俺は出向の身分だし。まぁ今のお上様(内閣)は強権行使だから色々気を付けろということだ。あからさますぎてわからないという手段もある」
「道理でねぇ。スキャンダルだらけの一方で強権発動とは、地方議員を含め末端議員の教育がなっていないわけだ。侍がいない」
「言っとくけど、スキャンダルにも国益のためのものもあるからなぁ」
「国益か。色恋スキャンダルがねぇ。あくまでも最近の事例はトラップじゃない政治家個人の自由意思だからね。これが国益だったら俺、日本を諦めるよ。極度の清廉潔白を求めてるわけじゃないけど」
「まぁ、最近は質が悪いというか、オープン過ぎて悪気すらないからなぁ。故意にマス様にリークしているわけでもなく、勝手に報道されて自滅していく例が増えた。色々腐った社会だから志あるものが上に立つ方が俺ら下っ端にもいいのは確かだから。国家の忠実な犬も忠実ではいられない…なんてね。死なない程度に頑張れ。チェリーさん。じゃ」
電話が切れた後、下を向いて一言吐きだした。
「やっぱハニートラップだったか。だよね」
そして、一太郎は少し残念そうに上を向いて空に呟いた。
「モテなくて良かった。教官助教。日本という国が私の妻です」
「さて。お次はどう来るか。どう返す(カウンターする)かな。いざ出陣!」
一太郎は「都筑一太郎」と名が記載されたタスキを肩にかけ、「チェリー魂」というハチマキをおでこに巻いて自宅を出ようとしたが、鏡に映る自分を見てすかさずハチマキを外し、ズボンポケットにグチョグチョにして入れた。
自分を瞬時に客観視できるのはある意味一太郎の強みであり、弱みでもあるのかもしれない。
<次号>
子育て世代




