桃太郎
「桃太郎」
桃から生まれた桃太郎が犬、猿、キジにきびだんごを与え、一緒に鬼ヶ島に鬼退治に行くという物語のあらすじをほとんどの人が知っていることだろう。
選挙でいう「桃太郎」は、立候補者が、のぼりを立てて選挙区内の有力者達を引き連れて、商店街や地域のお店、公園等を一緒に歩きながら挨拶して回ることを言う。
ここでいう「きびだんご」は何かを考えることはタブーというか真実はは当事者達じゃないとわからないのかもしれない。もちろん、その何かはその立候補者自身への期待や魅力が根源であってほしいものだが…。
平和党候補者の港北たくとぐらいレベルであれば(当選回数がある程度あるし、イケメン風)、選挙区内の各地域の有力者を支持者として固めているため、「桃太郎」はまるで大学病院の院長の総回診のよう、いやある意味、歩くだけで周囲の女性ファンをその場で昇天させるあのイケメン集団ジャパニーズばりのオーラ(雰囲気)を醸し出す。
一方の一太郎はひとり。猿もキジも…いない。
しかし、実は一太郎には中学生の時から信頼できる彼女がいたのである。
ちなみに一太郎の初キッスの相手である。
その名は、キャンディ!まさかの外国人!なんて思う人は想像力の欠如である。
キャンディは一太郎が高校生の時に動物愛護団体の譲渡会で引き取った雑種の雌であり、もう18歳という高齢犬である。
人間でいえば93歳くらいであり、もう自力で歩くことは難しい。
ただ、キャンディがいなかったら一太郎はもうこの世にはいないだろうくらい大事な存在であり、人生の辛い時に支えてくれた唯一の彼女であった。
「キャンディ、おはよう。一緒に付いてきてくれる」
一太郎は、朝8時にキャンディを連れて選挙区内を回わることにした。
「ペットと防災、高齢犬の介護、動物愛護、保護犬の里親の問題等」は一太郎が実現したい公約でもある。
一太郎は、ペット用ベビーカーにキャンディを乗せて中街台駅に向かった。
「ワン、ワン」
キャンディは最近、元気がなかったので一太郎は得意の犬の吠えものまねをしながら歩き続けた。
「ワァン、ワァン」
それに応えるようにキャンディも小さな喘ぎ声のように吠えた。
現実的には一太郎とキャンディでは「桃太郎」にはならず、スキャンダルだらけの鬼退治はできないかもしれない。
でも一太郎はキャンディとともに希望区内をひたすら歩き、すれ違う人に挨拶をし続けた。
移動遊説はできないため、ただただ、挨拶をするだけ。
「ワン、ワン、こんにちは」
キャンディは一太郎を優しく見守るように見つめていた。
もちろん、きびだんごはキャンディが好きな「チョコレート」…犬にはもちろん駄目。
それは春の桜が散り始め、葉桜がまぶしい朝の日のことだった。
次号
開き直りと覚悟




