19:絶頂の死闘
クズ主人公転生モノを書かれている「暮伊豆」様よりレビューをいただきました!
ちなみにランスさんは真人間です!
「アーーーーーーーーーサーーーーーーーーーッ!」
「ランスーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
――共に大地を蹴り飛ばし、宿敵目掛けて一瞬にして駆け抜ける。そうして武器を打ち合わせた瞬間、凄まじい衝撃波が巻き起こった!
「「うぉぉおおおおおおおおおおおお――――ッッッ!!!」」
アーサーの剣が火花を散らし、オレの背骨が髄液をぶちまける!
かくして激闘は始まった。魔の存在に全てを奪われた復讐鬼と、そんな少年に憧れて『魔王』に成り上がってしまったオレの、最初で最後の最終決戦が――!
背骨を武器にして鍔ぜり合うオレに、アーサーが血涙を流しながら吼え猛る。
「死ねぇ、死ね死ね死ね死ね死ねェェェェエエエッ! 信じていたのにッ! 慕っていたのにッ! よくも僕のことを裏切ったなァァアアアッ!!!」
「ぐぅぅううううううううううッ!?」
アーサーは強かった。鍛え上げられた圧倒的な筋力によりオレのことを押し込み、ついには地面ごと陥没させていく……ッ!
そうか……これがお前の、憎悪から得た力なのか。道を違えたオレに対する、今のお前の想いなのか。
ああ、ならば――
「――受け入れてやるよ、アーサー。どうかオレのことを滅茶苦茶にしてくれ」
「えっ?」
そうしてオレは優しく微笑み――抵抗することを完全に止め、アーサーの斬撃を真正面から受け止めた。
「がはぁぁあああッ――――!?」
次の瞬間、手にしていた背骨ごとオレは袈裟斬りにされてしまう。臓器が弾け、血潮が舞い散り、呆けたアーサーの顔へと粘つく体液がビチャリとかかった。こうしてオレは呆気なく死んでしまったのだった。
だがしかし――!
「――よぉぉぉぉおおしアーサーッ! お前の想いは受け止めたッ! だったら今度はオレの番だよなぁぁああああッ!?」
「なぁっ!?」
オレは死んでいる状態のまま、アーサーの顔面へと熱いヘッドバットをブチかましてやった!
自分の腰と頭蓋骨が砕け散る勢いで放った一撃は、アーサーの身体を勢いよくぶっ飛ばしていく。
さらにこれだけでは終わらない!
「おいおいおいおいおい忘れたかァァアアッ!? オレたちは共に、ドラゴンの血から再生能力を得たバケモノ同士なんだぜぇ!?
一回逝っちまったくらいで、終わるわけがねぇだろうがよォォオオオオッ!!!」
オレは腹の中に手を突っ込むと、『腸』を引きずり出してアーサーに向かって投げつけた。
粘液を帯びた自慢の武器は彼の身体に絡み付き、その動きを拘束をする。さらに――!
「だからよぉアーサーッ! グズグズに溶けて一つになっちまうくらいまで、今日は激しく殺り合おうぜぇぇええええッ!!!」
お次はこれだ! オレは腹の中からある臓器を取り出すと、もがいているアーサーの顔に超全力で投擲した!
ソレは彼に当たった瞬間、パンと音を立てて破裂して――
「ぎゃっ、ぎゃぁあああああああああッ!? これはっ、『胃』ィィイイイイッ!?」
「がははははははははははッ! やっぱり消化器官はセットじゃないとなぁぁあああ!!!」
アーサーの顔面へとオレの胃酸がぶちまけられる! 少年特有のきめ細やかな肌が一瞬にして赤く爛れていき、凄まじい絶叫がカムランの丘に響き渡った!
どうだアーサー、感じたか!? 伝わったか!? オレのことを導いてくれたお前に対する、心からの感謝の気持ちがッ!
「アーーーーーーサーーーーーーーーーッ! たしかにオレたちは決裂したッ! お前に憧れた感情も、お前のことを想い続けたあの日々も、全ては虚しく闇へと消えた!
だけどっ、オレがここまで頑張り続けることが出来たのは、やっぱりアーサーがいてくれたからこそなんだよッ! 全てが過ちだったとしても、それだけは永遠に変わらない事実なんだッ!」
お前は結局、オレが憧れていたような英雄じゃなかった。ああ、だけどいいんだ! 憧れ続けてきた“オレのアーサー”は、心の中で生きているのだから!
『そうだよランスさん、本当の“英雄”はここにいる! ボクたちはもはや二人で一人ッ! 貴方はボクで、ボクは貴方なんだッ!
だから――!』
そう、だから――ッ!
「『お前は死ねぇッ! 現実のアーーーーーサーーーーーーーッッッ!!!』」
そうしてオレはあばら骨に両手を引っかけると、力強く引き裂いて『心臓』をアーサーに見せつけたッ!
オレの感謝を、オレの総てを、どうか死ぬほど思い知れぇぇぇぇええええ!!!
「さぁ、やろうぜアーサーッ! アーサーを殺すために力を貸してくれッッッ!!!」
『もちろんだよランスさんッ! ――中枢神経完全掌握、心拍数100億パーセントォォォオオオオッ!!!』
かくして次瞬、ドクンドクンドクンドクンと心臓の鼓動が一気に高まる! その心音は空気を揺さぶり、ついには大地を震わせ始めたッ!
さぁ、もっと昂れ! もっと木霊せッ! この情熱よ、天に轟き敵を討てぇッ!
「オレのハートを受け取りやがれぇぇぇええええええええええええええええええッッッ!!!」
『超高血圧・動脈破裂砲、発射ァァァアアアアア――――――ッ!!!』
そして、終末の一撃が放たれる。
大動脈が超爆発を巻き起こし、大量の鮮血と共にオレの心臓が射出されたのだ――!
腸による拘束と胃酸による継続ダメージを受けていたアーサーに、音速で空を駆け抜ける心臓を回避する術などなかった。
「ぁっ――ぁああぁああああああぁああああああああぁあああああああああああああああ――――ッッッ!!!??」
耳をつんざく絶叫と共に、空前絶後の爆発音が響き渡る。
オレの必殺技がアーサーへ直撃した瞬間、ドゴォオオオオオオオオオオオンッ! という音を立てて、彼を中心として分子崩壊が巻き起こったのである。
常人の1億倍の心拍数・“70億”のビートを刻んだオレの心臓は、もはや全てを破壊する超振動兵器と化していた。その威力の前には大地すらもが悲鳴を上げて絶頂し、アーサーが立っていた場所から赤きマグマが天に向かって噴出した。
どうだ……思い知ったか復讐鬼ッ!
「――これこそが、オレの手に入れた絆の力だッ! 人間としての本当の強さだッ!
魔物や魔族と手を取り合い、希望を胸に全力で生きてきたからこそ、オレはここまで成長できたんだよッ!!!」
拳をグッと握り固め、マグマに溶けたアーサーに叫ぶ。
ああ、全ての始まりは間違いだった。何度も暴走し、幾度も血を流し、数えきれないほどの罪を犯してきた。現実のアーサーと決裂したショックで、ようやくオレはそれに気付いた。
だけど――間違えていたからって、少し失敗してしまったからって、それで歩みを止めて何になるッ!?
「アーサー……オレはわかったんだ。理想が胸にある限り、人間は何度だって立ち上がれる……どこまでだって成長できるんだって!
間違いを受け入れ、失敗を反省し、今日の涙を明日の希望に変えることが出来るんだッ! だからアーサー死んでくれ!!! 今日はお前を殺すけど、明日は誰かを守るから!!!」
ブクブクと燃え滾る溶岩に向かって、オレが熱く吼え叫んだ――その時だった。
「……ト、める、カァ……――認める、かァァアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
噴出するマグマが弾け、熱き熱風がカムランの丘に吹き荒れた。
そうして彼は――再臨を果たす。全身をドロドロと赤く滾らせ、口や耳から黒煙を噴き上げながら、アーサーは死の淵から蘇ってきたのだッ!
「ランスゥゥゥウウウウウウウッ!!! お前なんかが人間だなんて認めるかァァァアアアッ!!!
お前はバケモノだッ! 魔族以上に凄惨で、魔物以上におぞましいこの世界の破壊者だッ!
僕はお前みたいなヤツが……殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて堪らないンだよォォオオオオオオオオオオオッ!!!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!! あぁ、それでいいんだよアーーーーーーーーーサーーーーーーーッ!!!
『復讐を止めろ』だなんてクソみてぇなことは言わねぇよッ! だってお前気付いてるかァッ!? 魔族や魔物をぶっ殺すって言ってる時、眼球の奥がすっげぇ生き生きと輝いてるんだぜぇえええッ!?
溜まった憎悪をぶつけることに興奮してんだろ!? どうしようもないほどに滾っちまってるんだろォッ!? だったら全部……オレに吐き出して逝っちまいなァァァアアアアアアアッッッ!!!」
さぁ、こいよアーサーッ! オレの原点ッ! お前の全てを飲み込み喰らって超越した瞬間、オレはさらなる高みへ羽ばたくことが出来るんだからよォォオオオッ!!!
――互いに背骨を引きずり出して、オレたちは共に駆け出した。
ドラゴンのもたらした再生力が無限に続くわけがない。いつかは限界が訪れるだろう。だが、“そんなものは知った事か”と狂ったように口元を歪めながら、オレたちはオレたちを全力で否定し合う――!
「オレの手でッ!」
「僕の手でッ!」
「「――死ねよ宿敵ッ! くたばりやがれぇぇえええええええ――!!!」」
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