幕間:最終楽園帝国・アルビオン
ゲーム世界転生モノを連載している「ツリー」様より、【ダークネスソウル・オンライン】のほうにレビューを頂きました!
また【ダークネスソウル・オンライン】ですが、なんとオーバーラップ大賞の結果発表ページに名前を載っていました! やったぜ!(※一番下)(※やったとは言ってない)
https://over-lap.co.jp/narou/narou-award5/
――アルビオン帝国は今、存亡の危機にあった。
『ギギャッ――ギギャァァアアアアッ!』
『グゴォォォオオオオオオッ!』
モルガンの意識が不安定になったことで彼女の魔力が一時期的に減衰し、支配下に置かれていた魔物たちが野生を取り戻してしまったのだ。
“アルビオンの民衆を傷付けてはいけない”という命令から解き放たれた魔物たち。彼らの心に湧き出したのは、人間への殺意だけだった。
『ギギィ……ッ!』
醜い容姿をした猿の魔物・ゴブリンは思った。“なぜ自分たちが、ニンゲンごときと共に暮らさなければいけないのか。奴らは憎むべき敵対者のはずだ”――と。
『グゴォオ……!』
異常な巨体をした豚の魔物・オークは思った。“なぜ自分たちが、ニンゲンごときと共に働かなければいけないのか。わざわざ金など稼がなくとも、腹が減ったのなら奴らを食ってしまえばいいだけの話だろうが”――と。
その他にも、コボルトが、アルラウネが、スライムが、ハーピィが……あちこちから無理やり掻き集められたありとあらゆる魔物たちが、一斉に殺意を爆発させた。
さぁ、暴虐の時は来た。邪悪なる人間たちを皆殺しにして、魔物にとっての平和な世界を作り上げてやろうではないか!
“それこそが我らの始祖、≪魔王・モルガン≫様のご遺志なのだから――!”
そうして魔物たちが、想いを一つに大虐殺を始めようとした――その時、
「――あっ、ゴブリンさんだー! ねぇねぇ、今日も一緒にあそぼーっ!」
殺意を滾らせていた一匹のゴブリンへと、幼い少女が満面の笑みで駆け寄ってきた。
憎悪や偏見など欠片も持たない無邪気な態度で、ゴブリンのしわくちゃな手を優しく握ってきたのである。
さらに、
「――よぉオーク、今日も一日頑張ろうや! ウチのカミさんがお前に弁当作ってきたから、昼は楽しみにしておけよ~!」
今にも街を破壊しようとしていたオークの背中を、大工頭がポンと叩いて笑いかけた。
最初はおっかなびっくりな接し方だったものの、今ではオークのことを“力持ちで頼りになる現場のエース”としてすっかり信頼しきっていた。
その他にもアルビオン中で、似たような光景が展開される。
「よしコボルト、散歩いくぞ!」
「よしアルラウネちゃん、ちんぽイくぞ!」
「スライムちゃん、ロリ巨乳美少女に変身してッ!」
「ハーピィちゃんって卵生なのになんでおっぱい付いてるの???」
……これから殺されるとも知らず、いつも通りの馴れ馴れしい態度で接してくる人間たち。
そんな彼らのあまりにも無防備な様に、魔物たちは呆れ、嘲笑し、溜め息を吐き……そして、
『――ギギャァ! ギギャァ!(よっしゃ、一緒に遊びましょう幼女先輩!)』
『グゴゴォオオ!(ハラヘッタ! メシ、メシッ!)』
……そして魔物たちは、暴れることを止めた。
人間たちへの殺意はある。憎しみもある。それらは決して消えてはいない。
だがしかし――アルビオンで暮らしていく内に、人間にも種類があることを魔物たちは学び知った。
優しくしてくれる人間がいることを知り、温かい料理の美味さを知り、多様な遊びの楽しさを知り、ふわふわなベッドの柔らかさを知り――そして人間とも愛し合えることを魔物たちは知ってしまった。
ゆえにもはや、ただ闇雲に暴れ回っていた頃には帰れない。帰りたいとも思わない。
今ここに、魔物たちは自覚した。このアルビオンこそが、自分たちにとっての楽園であると。
彼らは切に希う。この平穏で優しい日々が、ずっとずっと続けばいいと。
そして――差別してくる人間を皆殺しにして、この楽園を作り上げてくれた優しい“魔王様”の帰還を、強く強く願い続けるのであった。
これより、残り3話で完結となります。
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