16:狂喜の覚醒
転生ギルド受付嬢モノを書かれている「Seica」様にレビューをいただきました!
世に広まっちゃいけない系クレイジーサイコホモファンタジーなのに、みなさんのおかげで知名度グングンですわ……! もうなろうキッズの性癖受付口はガバガバ!!!
『――ドラゴンよ。お前に鋭い牙を与えよう。凶悪な爪を与えよう。大きな翼に、強靭な巨躯を与えよう。
そして……浴びた人間に圧倒的な再生力を齎す、妙薬の血を廻らせよう。
さぁ、これで完成だ。やがて人類はお前の血潮を狙って、無謀なる挑戦を開始するだろう』
“誰にも挑まれないような、最強なだけの存在では駄目だ。お前は世界を闘争で満たす、災厄の使者となるがいい……!”
――そう願われて、自分はこの世に生を与えられた。
そして始まる闘争の日々。視界に入る人間全てを、殺して殺して殺し尽くした。
千の人類を殺すたびに万の人類に付け狙われるような日常だったが、元より心休まる時など不要。自分は最初からそのために造られた存在なのだから。
そうして――『勇者』と呼ばれる存在により致命傷を与えられ、海の底へと沈められるまで、数千万以上の命を奪い続けた。
(アァ、『勇者』……アレハ……化物ダッタ……)
身体の半分以上を損壊し、もはや自力で動くことすら不可能。気を抜いたが最後、二度と目覚められなくなるほどの傷を与えられた。
だがしかし――諦めるわけにはいかなかった。
あの化物……『勇者』との決戦を迎える前に、最愛の主人と約束したのだから。
『――ドラゴンよ。私はきっと、あの存在に殺されることだろう。
何が勇ましき者だ……あれはもはや英雄でもなければ、人間でもない。
魔物を殺すためならば脳が抉れても立ち上がり、必要とあらば数千人の味方すらも犠牲にして勝利を得ようとする存在など、もはや生物として破綻しているだろう。――だが、』
“再生、転生、あるいは憑依。どんな手を使ってでも、私はこの世に舞い戻ってみせる。
そして今度こそ人間共を滅ぼし、魔物が虐げられずに済む平和な世界を作り上げてみせよう。
その時には……お前も一緒だぞ? 我が最愛の使い魔よ”
はい。仰せのままに、マスターよ……! 貴女様のためならば、千年の時をかけてでも蘇ってみせましょう!
我が母君にして、全ての魔性を統べる存在――≪魔王・モルガン≫様ッ!
◆ ◇ ◆
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッッ!!!」
――隻眼のドラゴンに向かって疾走しながらオレは思った。
“おそらく、今のオレでは勝てないだろう”と。
かつてアーサーはドラゴンとまともに渡り合い、その右目を切り裂くことで勝利を掴んだが、それは彼に鋼の肉体があったからだ。
地獄のような修練を重ねてきたのだろうと分かるほどの振り絞られた筋肉と、努力する中で培われた精神力……それがあったからこそ彼は勝つことが出来たのだろう。
ああ、そんなアーサーに対してオレはどうだ? ほんの一か月前までは酒浸りの日々を送るクズだっただろうが。下地というのがまるで違う。
(少し心変わりしただけで勝てるようになるほど、ドラゴンってのは甘い相手じゃないはずだ。そうじゃなきゃ、『魔王』の造り上げた伝説の魔物なんて呼ばれないだろうが)
油断や自惚れなんてしない。常識的に考えて、今のオレではまだ及ばないと結論付ける。ああ、この数瞬後にも確実に殺されることだろう。
ならば――、
「――この戦いの中で、成長してみせるだけのことだァァァアアアアッッッ!!!」
オレは懐から三本の試験管を――全ての『超回復薬』を取り出すと、蓋すらも開けることなく口の中へと放り込んだのだった。
そうしてバギリと噛み砕いた、その瞬間――、
「ぅ、ぎぃ、ぐぉおおおおおおおおおおおッッッ!?」
全身に激痛が走り抜ける! 脳髄が沸騰して毛細血管が弾け、一瞬でも気を抜けばショック死してしまいそうになるが、だがこの苦痛こそがオレが生まれ変わっていく証拠ッ!
そうだ、オレは成り上がってみせるんだ――アーサーや魔物たちと共に、世界を平和に導く英雄に!!!
「さぁ……付き合ってもらうぞドラゴン――――ッ!!!」
『グガァアアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!!』
そうしてオレは長剣の柄を強く強く握りしめ、大爪を振り上げるドラゴンへと一気に飛び掛かっていった。
ああ――それからはもはや、何度死にかけ、何度再生したかもわからない。
魔龍の爪牙に蹂躙され続け、何度も何度もカムランの丘に鮮血を撒き散らした。
――しかしそのたびにオレは再生し、肉体と技術を進化させていく。
何度もオレを切り裂いた爪撃を十回目で受け止め、百回目で受け流し、千回目でついに攻撃を完全回避すると、ドラゴンの脇腹へとカウンターの斬撃をブチ込んでやった。
だがドラゴンはひるまない。次の瞬間には巨大な尻尾を叩きつけられ、オレは地面を転がされることになったのだが――しかし、
「やった……やったやったやったぁ――やったぁぁあああああああああああ!」
ドラゴンの大きな身体に刻まれた、小さくとも確実な手傷。その成果にオレは悦びで打ち震えた!
――自分のことをクズでどうしようもないと思っていた時もあったが、頑張って頑張って頑張り続ければ、ドラゴンに傷を与えられる可能性があったんだ。天才じゃなくても、取り柄がなくても、ヒトは努力すれば輝くことが出来るんだッッッ!!!
「ははっ、あはははははははははははははははははははははははははははは――――!!!」
自分の限界がまだまだまだまだ先にあるとわかった瞬間、オレのテンションはついに絶頂へと達する――!
気が付けば剣が砕けていたが、それが何だというのか!? 気が付けば『超回復薬』の効果も終わり、それどころか劇薬を飲み過ぎた反動によって心臓が止まっていたが、ああだからどうしたぁぁああああああああッ!?
「アーーーーーーーーサーーーーーーーーーーッ!!! 今こそオレは、『英雄』になってみせるぞォオオオオ――――!!!」
ゆえに死んでる場合じゃないッ! オレは胸骨を全力でブン殴って無理やり心拍を回復させると、最高の笑顔で突撃を再開した!
『グガァァアアアアアアア――ッ!?』
殺意ばかりに満たされていた竜の眼光に、初めて動揺らしき感情が浮かんでくる。
ほぉらどうしたドラゴン!? 攻撃の手が緩んでいるぞォオオオオ!!!
「さぁさぁさぁさぁさぁッ! オレを殺してみせろやぁぁぁああああ!!!」
衝撃だけで大地が砕け散るような猛攻を掻い潜りながら、オレは着実にドラゴンの動きを掴んでいった。
そうして掠っただけでも肉体が千切れ飛ぶような爪撃を素手で受け流すと、一気に跳び上がってヤツの顎を蹴り上げるッ!
『ガグゥ!?』
自身の足が完全に砕け散るほどの威力を込めたことで、ついにドラゴンが痛みに呻いた。さぁ、この瞬間を逃してなるものかッ!
地面へと落ちていく中――オレは自身の腹へと手を突っ込むと、腸を無理やり引きずり出してドラゴンに向かって投擲した!
ああ、こういう時に腸は便利だ! 粘液を帯びたオレのハラワタはドラゴンの首元にしっかりと巻きついてくれる!
さて、後は簡単だ。それを一気に引っ張り、ドラゴンの顔目掛けて飛びつくと――
「――お前のチカラを、よこしやがれぇぇえええええッッッ!」
興奮によって涎を垂らしながら、オレは竜の左目へとかぶりついたのだった――!
すいません、腹筋1万回してたら書くのに時間がかかりました……!
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