14:聖戦の前兆
現代ファンタジーモノを連載している「しば犬部隊」様よりレビューをいただきました!
こんなやべー作品をレビューできる勇者さん多すぎでしょ……!?
「――いいかーモルガン? ウマゴローのためにニンジンを5本買ってあげました。ウマゴローは喜んで3本食べて、後の分は夜食として残しておくと(貧乏臭く)言いました。
さぁーモルガン! 残ってるニンジンは何本だー?」
「わたしが食べちゃうから0本っっっ!!!」
「なにその暴君の理論」
ふわふわな白髪のロリ魔族・モルガンの奴を今日も元気にアホの子である。
オレは彼女を肩車しながら、アルビオンの街を散策していた。
「はいゴブリンさんっ! お花あげるー!」
『ギギャァ! ギギャァ!(え、マジすか幼女先輩!? あざーすあざーす!)』
「それでよぉスケルトン、このへんに旨い飯屋があるらしくってよぉー」
『ガガガガ~ッ!(おっ、いいっすねー!)』
ここを乗っ取ってから一か月。民衆たちはすっかり魔物との共同生活に慣れ親しんでいる様子だった。
たくましいスラムの者たちはもちろん、騎士の軍勢を一瞬で絶滅させたあたりから、商人たちや富裕層の者たちも腹を決めることにしたらしい。
「あ、ランス様ー! 今日はモルガンちゃんとお散歩ですかい!? 新鮮な果物がいっぱい入荷したんで、どうか二人とも貰っていっておくんなせぇ!」
「おっ、ありがとうな店主! ほらモル子、両手にリンゴが一個ずつあるだろう? 全部で何個だと思う?」
「マスターの分もわたしが食べちゃうから0個~!」
「はははっ、ふざけんな」
妖樹・アルラウネたちのおかげで食料は豊富になったし、人の手では大変な作業も魔物と力を合わせることで円滑に進むようになったしで、街はにわかに活気づいていた。
地方の村から次々とやってくる入植者たちのために家を建てたり店を増やさなきゃいけないから、仕事もたくさん溢れてるしな。
「みんな前を見て進んでるんだから、モルガンも早くアホの子を卒業しないとなぁ~?」
「むむむ~ぅ! わたしだってしんぽしてるもんっ! 肩車されてると、マスターの後ろ髪がお股をチクチクしてきて変な気持ちになってくるって今日覚えたもんっ!!!」
「人の頭上で性に目覚めるな」
……マセガキ過ぎるエレインのほうも問題だが、こっちのアホの子もかなり不安だ。
常識人代表と言ってもいいこのオレと毎日過ごしているというのに、こいつらは全然おしとやかになりやがらねぇ。一体どういうことだろうか?
「――あっ、マスター見て見て! 教会が燃えてるよー! 炎がパチパチしててキレーっ!」
「ああ、あそこの神父は『魔物は存在自体が悪だ! この世から消え去るがいいっ!』って毎日ほざいてたからなぁ。
頑張って働いてる魔物たちをどうして罵るのか意味がわからんかったから、神父様のほうをこの世から消すことにしたんだよ」
「おぉおお! マスター頭いい~っ!」
だろぉ? うるさい奴がいなくなって魔物たちはハッピー、神父のほうも魔物と関わらなくなってハッピーってわけで、どっちの要望も叶ってみんな大勝利ってわけだな!
「モルガンも、オレのことを見習って賢くなるんだぞー?」
「うんっ! マスターのことみならうー!」
よーしよし、向上心があるのはいいことだ! このままほんの少しずつでも、いい子に育っていって欲しいものだな。
そうしてモルガンと一緒に街を練り歩いていた時だ。
金色の髪を風になびかせながら、エレインが血相を変えて走ってきた。
「ちょっ、お兄さんにモルガンさんっ! ついに“あいつ”が見つかりましたよっ!」
「あん? あいつってどいつだよ? モルガンわかるか?」
「ウマゴローッ!!!」
「って違いますよ!? あの馬鹿馬だったら今ごろアルラウネとパコってますって!
そうじゃなくて――ドラゴンですよッ! ド・ラ・ゴ・ンッ!」
えっ、ドラゴン? ドラゴン……ドラゴン……ぁあああああああぁぁああぁぁあッ!?
そうだそうだそうだそうだ! オレ、ドラゴンを探してこんな北の果ての街まで来たんだった!!!
「なぁエレイン――なんでオレ、ドラゴンを探してたのに王様になってるんだ……?」
「って知らないですよっっっ!?」
ぎゃあぎゃあと喚くエレインに、そんな彼女を見てきゃっきゃと楽しそうに笑うモルガン。さらには民衆たちや魔物たちまでもが集まってきて、騒がしくするオレたちのことを微笑ましそうに見守っていた。
――回り道してしまったおかげでこいつらと出会えたと思えば、あんまり悪い気はしないな。
(何も持っていなかった昔とは違い、今のオレには誇るべきモノがたくさんある……)
英雄になれるのは一部の天才だけで、クズはクズらしく生きるしかない? そんなつまらない理屈は誰が決めた。
今のオレには共に戦ってくれる者たちがいて、支えてくれる少女たちがいて、守るべき民衆と領地があって――そして追い付きたい背中がある。
(アーサー、待っていてくれよ……! オレは必ずドラゴンを討ち倒し、お前と肩を並べられる存在になって見せるッ!)
拳を強く握り固め、あの日の誓いを再び胸に思い描いた。
そんなオレへとエレインは告げる。
「つい先ほど、五感をリンクさせている鳥の魔物がドラゴンの姿を目撃しました。
場所は、このアルビオンとペンドラゴン王国の王都を隔てている、ちょうど境い目の山岳地帯……」
――通称、“カムランの丘”と呼ばれている場所です……ッ!
物語も後半に差し掛かってまいりました!
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