12:情熱の両雄
「BABEL」様よりレビューをいただきました!
ふぇえ、ピュアななろうキッズたちに無自覚系クレイジーサイコホモ英雄譚が広がっていくよぉ……!
――騎士の大軍勢を滅ぼしてから一週間の内は、本当に忙しかった。
ある日、エレインの奴が「お兄さんのやり方はいつも血みどろですね~っ!」と(めっちゃ嬉しそうに)言ってきたことで、オレは気付いてしまったのだ。これからは王様として、暴力だけじゃなく知的に振る舞っていかなければいけないことにッ!
というわけでまずオレは、鳥の魔物を使って出来る限りの全都市へと文を送ることにした。
“『奴隷オークション』に参加していた者たちよ。その罪を公表し、アルビオン帝国に一度謝罪に訪れるのであれば、正義の名の下に全面的に許すと固く誓おう。もう、無駄な血が流れるのは避けたいのだ”と。
そうすると、地方の下級貴族たちが次々と訪れてくるではないか!
曰く、オレが大量の魔物を使って騎士たちを殲滅したことはすでに国中で噂になっており、もはや抵抗する気はないという。
しっかりと罪を公表したことで領民たちからはすでに信頼を失っているため、これからは過ちを悔いながら、静かなところでそっと暮らしていくつもりなのだそうだ。
そうかそうか、過ちを悔いながらそっと暮らしていくのかー! そっかー!
「――いや、何ちゃっかり生きようとしてんだよ。というわけで全員縛り首な」
そんな感じで、数十名の罪人たちをアルビオンの広場で公開処刑した。
……なんか死ぬ前に『騙したのか貴様ぁ!?』『正義の名の下に許すって言ってたのにッ!』とかほざいていたが、いや何言ってんだよコイツら! その前に謝罪しろって言っただろうがッ!!!
「ごめんで済んだら法律はいらねぇんだよッ! どんな罪人も口先だけの言葉じゃなく、刑を終えることで初めて反省したと見なされるんだよッ!
というわけで死んだら許すッッッ!!!」
『ふざけんじゃねぇぞテメェェエエエエエッ!!?』
それが彼らの最後の言葉になった。うーん、常識のない連中だったぜぇまったくッ!
「よしエレイン! つーわけで領主共が全員死んだから、空いた土地をサクっと支配しにいくぞ~!
それが終わったら、お前には何かプレゼントしてやるからな! なんか欲しいものはあるか?」
「ハァハァ、なんと悪辣な騙し討ち……! わたし、お兄さんの赤ちゃんが欲しいですっっっ!」
「はははっ、オレはいらん」
こんな感じで、金のメスガキのほうはやたらとオレにすり寄ってくるようになっていた。まったく、最近の子供ってのはマセてるなぁ。
子供といえば……アーサーのヤツももう性に対して興味津々なのかなッ!? 悪い女にひっかからないように、今度会ったらオレが色々指導してやらないと!!!
「ねぇお兄さーん……赤ちゃんってどうやって作るんですかぁ? わたしに教えてくださいよぉ~!」
「ふふふ、そうだな……(アーサーには)しっかりと教えてやらないとな……ッ!」
「ふぁっ!?」
――その日の深夜、(アーサーの肉体美を思い出しながら)腹筋10万回した後に部屋に戻ると、エレインのヤツがなぜか素っ裸で眠りこけていた。
風邪をひくと思ったので抱き締めながら眠ってやると、翌朝、ものすっごい上機嫌でオレにおはようのチューをしてきやがった。
なんでも、「ロリの初夜を睡眠姦で奪っちゃうだなんて、なんという鬼畜っぷりッ! 本当にお兄さんは『魔族』好みの男性ですッ!」――なのだそうだ。
……何を勘違いしてるのかは知らないが、幸せそうで何よりである。
それからだが、どうやら各地でペンドラゴン王国への反発が起き始めたらしい。
まぁそれもそうだろう。オレのおかげでたくさんの貴族たちが『私は奴隷遊びにハマっていた変態野郎です』と自白してしまったのだから、炎上するに決まってる。
そんなわけで、魔物の群れを率いながら各地を治めに周っていると、どこの民衆たちも諸手を挙げてオレのことを歓迎してくれたッ!
「ラ、ランス王様、バンザァァァァイッ!」
「私たちはアナタの奴隷です!!!」
「共に王国を討ち倒しましょう!!!」
はははははっ! どうやらみんな正義の心に目覚めてくれたらしいッ!
まぁ一部の連中が王都のほうに逃げ込んだとも聞くが、いいさいいさッ!
(かかってこいよ反逆者共。準備を整え、挑んでくればいいじゃないか……ッ!)
武力がないなら手段を尽くせよ。
罠を仕掛け、毒を垂らし、策をめぐらせて裏をかけッ!
「『英雄』として――全部真正面からブチ壊してやるからよォォオオ……ッ!」
そして邪魔者がいなくなった世界で、オレはアーサーと共に幸せで温かい伝説を作るんだ!!!
――かくして、騎士の軍勢を撃滅してから一週間後。オレは完全に、北部一帯を武力支配したのだった……!
◆ ◇ ◆
「くそっ――これはひどい……!」
王城内部。騎士の待機所にて、僕はニュース誌を見ながら思わず悪態を吐いてしまった。
「どっ、どうしたのでありますか? アーサー特別隊長」
「ああ、例の“ランス”という男によって、北部が完全に支配されたらしくてね……」
湧き上がる怒りを鎮めながら、部下の言葉に応える。
王都に呼ばれてから僕は、ドラゴンから授かった強力な再生力を見込まれて、騎士の小隊を任される立場になっていた。
まぁ、最初は部下のみんなも嫌がっていたかな。年下な上に平民の隊長に率いられるなんて、そりゃあ不安になっちゃうもんね。
――だから全員に決戦を挑んで、真正面から叩き潰した。
平民上がりの僕に剣術なんてものはない。だからこそ、徹底的に鍛え続けた筋力で、彼らの剣をぶっ壊して黙らせてやったのだ。
特にドラゴンから強力な再生力を得てからは、全力で身体を苛め抜くようにしていたからね。
……ついさっきまでだって、魔物たちに殺された村のみんなや、冒険者としての道を断たれたランスさんの無念さを想いながら、腹筋10万回をしていたところだった。
「はぁ……魔物の群れを率いて人々を武力支配していってるだなんて、一体どんな悪党なんだ……!
名前は同じでも、面倒見のよかったランスさんとは大違いだよ……っ」
“腐敗した王国を打倒しよう”と喧伝しているらしいが、腹の底では何を考えているかわかったものじゃない。
(魔物たちを付き従えていることから、革命者のランスという男は『魔族』に違いない……!)
……みんなそれをわかっているだろうに、逆らえないんだ。彼と、彼の従える魔物たちのことが恐ろし過ぎて。
僕としては、そんなヤツは一秒でも早くブチ殺したいという思いなのだけど――しかし、
「あの、アーサー特別隊長……! 自分は、その……ランスという男の言葉にも、一理あるかと思います……」
「なに……?」
――おかしなことに世間では、ランスという悪党を擁護する風潮が広まり始めていた。
「たしかにアイツは暴力的ですっ! 十中八九、『魔族』の者に違いありません!
……しかし、ペンドラゴン王国が腐敗しているのもまた事実ッ! 多くの貴族たちや、私が憧れていた老雄・アグラヴェイン様までもが人身売買に手を出していたらしいではありませんか!?
そんな国に……守る価値は……っ」
……頭を抱えて思い悩む部下に、僕がかけられる言葉はなかった。
ああ、たしかに多くの者が不正を働いているのかもしれない。結果的に、ランスという男に救われた命もあるのかもしれない。
だがしかし――、
(――そんなものは、僕にとって関係あるかッ! 僕は、総ての魔物を滅殺するために生きてるんだよォォオオ……ッ!)
断言しよう。正義だとか悪だとか、そんなものはどうでもいい!!!
僕の心に燃えるのは、魔の存在に対する憎しみの炎だけだった……ッ!
(待ってろよ、ランス……! たとえ世界がお前を認めて、味方が誰もいなくなろうとも、僕だけはお前を全力で殺してやるからなァァァアアアア……ッ!)
――こうして僕は項垂れる部下を放置して自室に戻ると、(ランスへの憎しみを燃やしながら)腹筋100万回を開始したのだった。
ランス 「アーサー……!」
アーサー「ランス……っ!」
なんやコイツら……。
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