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8、晩ご飯と、りざるとたいむ

流石に毎日投稿は、時間の猶予的に無理でしたね……。



「もう、お腹がペコペコで動けません……」



 ライラさんと別れた後、宿に戻った私はレガシーさんと合流し、宿屋一階の小さな食堂スペースにて、晩ご飯を戴くことにしました。


 私は一足先に食堂のテーブルの席に着き、地球の照明器具張りに明るい、光の魔導具(マジックアイテム)に照らされ、テーブルに一人、力なく突っ伏しています。


 他のテーブルには、ちょうど魔物討伐から帰ってってきたばかりなのか、様々な装備を身につけたままの冒険者さんらしき人達が、私達のテーブル以外の席を埋め、晩ご飯が出来上がるのを待っています。



 あ、因みにレガシーさんは、台所の女将さんが一人で大変そうにお料理している姿を見て、調理を手伝いに行ってしまいました。


 ……最初は、私も一緒に手伝いに行くと言ったのですが。

『主殿は、初仕事でお疲れでしょう。夕餉の手伝いは某に任せて、主殿はここでゆっくりとお待ち下され』

 と、絶対に行かせませんという強い意思を込めながら言われ、全く逆らえませんでした。


 レガシーさんって、普段は優しいのですけど。たまに凄い迫力で諌めてくる事があるので、そこだけはちょっとだけ苦手かも知れません……。


 私って、そんなに頼りないように見えるのでしょうか。

 ぐぬぬっ、やはり身長のせいで幼く見えるのが、問題と見なされて……。



―――ぐぅ~……



 ……お友達さんは言いました、「大抵の事は、食欲を満たせば気にならなくなる」と。



「……今は、悩みよりご飯です」



 天国のおとうさんとおかあさん。

 どうやらスズカは、異世界に来ても飢餓も苦手なようです。


 お腹が空くと、考えが鈍くなって。


 がんばるのが、出来なくなって。



 でも、我慢しないと。



 がんばらない、と。



 …………。



―――ゴンッ!



「―――ヘイ、お待ち」



 ……うん?


 何か聞き覚えのある重低音ボイスが耳に届き、それがきっかけで、もやがかかっていた思考が次第に晴れていきます。


 一体誰の声だろう。と思い、声が聞こえた方へ視線を向けると……。



 そこには、スープボウルからはみ出るような巨大な肉塊が入った皿を配膳する、執事姿の男性(ウチのクマ)の姿がありました。


 ……んんっ!?


 思わず突っ伏していた状態から身を起こし、自分の目を疑うような代物を、少し怖い無表情で食堂内のほかのお客さんたちに配膳しているレガシーさんに、私は完全に困惑していました。


 な、なんですか、アレ。

 それこそバレーボール大の大きさのお肉がスープボウルの中に入って、いえ、もはやミートボウル?

 いや、ダジャレで言っているわけではなくて、……えぇ?


 しかもお皿をこぼれない範囲で力強く置くたびに、重低音の「ヘイ、お待ち」とゆう声をかけています。

 めっちゃくちゃドスが効いていて、みなさん青い表情で怯えている気が……。


 あ、他のお客さんの配膳を全て終え、私達の分のお皿を持って帰ってきました。



「主殿、お待たせしてすみませんでした」



 え、笑顔が。

 さっきとは別人レベルの優しい笑顔が、ミートボウル(仮称)を丁寧に運んで来てくれました。


 余りの態度の落差に、他のお客さんたちも驚きで目を見開いてこちらを見ています。



「れ、レガシーさん。さっきのは一体……?」


「さっき? ……ああ、配膳時の態度の事ですか」


「あの、はい。その事です」


「彼らとはちょっと()()()()()があっただけなので。主殿は、お気になさらずに」



 あの、気にするなと言われると、余計気になるのですが。

 そんな殺気混じりに言う個人的なことって、一体なんなのですか……!   


 私と別行動している間に本当に何があったのでしょう。

 ……謎です。 






 その後、何事も無く晩ご飯を戴いた私達は、二階の部屋に戻りました。


 あ、因みにあのミートボウル(仮称)は、薄味でしたが美味しかったですよ。

 あれだけ巨大な肉塊でありながら、中までしっかりと火が通っていて、肉汁がたっぷりジューシーでした。


 逆を言ってしまえば、肉の味が全ての食材を飲み込んでいて、他の味が分かりませんでしたが……。


 なんでも、調理を手伝ったレガシーさん曰く、「魔物の増加が影響して物流までもが滞ってしまい、塩などの調味料類がだいぶ高騰して、満足に使う事が出来なかった」との事。


 レガシーさん的には、上手く調理出来なかった事が大変悔しそうな様子でした。

 でも、貴重になってしまったのなら、しょうがないと思います。


 また魔物が原因で、困ったことが起こっていましたね。

 早くその困り事の原因を取り除くことが出来ればいいのですけれど……。



「それでは、就寝前に簡易的な報告会を開きましょうか」



 レガシーさんのその宣言と共に、私達はお互いの成果を報告しあいました。


 と、言っても。お互いにやっていたことは単純作業だけだったようで、特に話すことも余りありませんでしたが。


 強いて成果を言うならば、レガシーさんがクエストで稼いだお金が、私とライラさんで稼いだ金額の10倍くらいで驚いた事と。

 あとは、予想通りクエストは達成するとお金などの物的報酬以外に、しっかりと経験値を獲得することができた。という確定情報を得られた事でしょうか。


 お金のことも当然凄いのですが、なにより経験値を稼げる手段を確保出来たことが、とても大きいです。



「これで一先ずは安心。と言ったところで御座るな」


「そうですね。あとは今日と同じ事を着実に進めていけば」


「ええ。数日中には、《運命式召喚術》のレベルが2へと上昇するで御座ろうな」


「本当に、よかったです……」



 これで、本当の意味での安全の目処が立ち、その安心感からか、私は無意識にほっと胸を撫で下ろしていました。


 あ、ダメかも知れません。


 安心して気が抜けてしまったせいで、一気に眠気が押し寄せてきて……。



「さて、報告会はここまでにしまして、明日に備えてそろそろ寝ましょうか」


「はい……。そうれふね……」



 いけません。眠気で、ろれつが……


 このままだと、そのまま寝落ちしてしまいそうな勢いだったので、私はなんとか最後の力で意識を繋ぎ止めたまま、自分のベッドの中に潜り込みました。



「では主殿、おやすみなさいませ」


「……おや……すみ……な……ふぁぃ……」



 就寝の挨拶を終え、そこで私の意識は、深い眠りの底へと落ちていきました……。









この後は書き上がり次第、続きの第9話とは別に幕間を一本投稿します。


内容については、本編内で語られなかった、レガシーが単独行動時に何をやっていたか。についてです。


多分今日か、日を跨いでそれほど時間が経たずに上げられるかな?

間に合わなかった場合は、ご容赦を。


※2019年1月25日、誤字・脱字・加筆修正

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