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5、当面の目標

読者さんのというより、主人公のための説明回。

大体が改めて書く必要の無さそうな内容ですが、ゲーム初心者のスズカにとっては大事な内容なので、ご容赦を。

いつもよりちょっと長いです。


 人の話を聞かないクマさんの説教は、女将さんの鶴の一声で強制中断されました。

 女将さんは、救世主さんなのです……!


 その後、私たちは確保した二人部屋の中、今後の目標について相談しあう事にしました。



「まず最初に、ここはもう開き直って、本当に異世界転生をした。とゆう前提で順を追って話させていただきます。

 その方が、色々と話が早いので。

 そして、主殿に伝えねばならない重要事項に付いて、ご報告致します」



 相談が始まって早々、何やらレガシーさんから重大発表がなされるようです。

 一体どんなことについてなのでしょう?


 というか、レガシーさんはまだ異世界転生について、本当かどうか疑っていたんですね。

 用心深いです。



「これは某の現在の能力が記されたステータスです。どうぞ、ご確認下さい」



 そう告げたレガシーさんの前に一枚の仮想ウインドウが表示され、それが私の方へと滑るようにスーッと水平移動をして、目の前で止まりました。



名前:レガシー

性別:オス

年齢:不明


固体:ロイヤルバトラー・ベア

種族:魔獣種


Lv:1

職業:王宮付き執事長


HP:100/100

MP:95/95


筋力:13

頑強:14

体力:20

知力:19

精神:14

器用:20

抵抗:11

幸運:06


エクストラスキル

《人化》《王宮式執務術》


パッシブスキル

《格闘術:Lv.1》《刀術:Lv.1》《忍術:Lv.1》

《鑑定術:Lv.1》《収納術:Lv.1》《料理術:Lv.1》

《錬金術:Lv.1》《調合術:Lv.1》《裁縫術:Lv.1》


アクティブスキル

《爪撃:Lv.1》《投擲:Lv.1》《疾走:Lv.1》


称号

《獣の執事》《忍熊》





「にんクマ……」


「そこについては、触れないでいただけると幸いですっ!」



 能力値よりもまず最初に目に付いた要素については、どうやら触れてはいけない物だったようです。

 黒歴史は誰でも封印したい物ですからね。



「某の名誉のために断っておきますが、このゴザル口調と忍者要素は、運営の悪乗りが原因で御座りますからね!?」



 クマで執事なのは、悪乗りじゃないのですか。

 まあ、それはそれで可愛いので、運営さんグッジョブです。



「見て頂きたいのはそこではなく、全体を通しての戦闘能力の低さについてで御座る!」


「……? レガシーさんは戦闘行為に不向き、ということですか?」


「そうです、その通りで御座ります!

 確かに某は、運営の策略によって格闘術や忍術などの戦闘スキルなどを有してはおりますが、それはあくまでもフレーバー。

 根底に根ざす某の能力は、料理や錬金といった生産職ビルドに特化した物なので御座る」


「……はあ、そうなのです、か?」



 レガシーさんは懇切丁寧に説明してくれているのですが、町に至る道中でゲームの基礎知識を教えてもらったとはいえ、やはり私は完全な初心者です。

 何とか理解したいとは思うのですが、レガシーさんの伝えたい事がいまいちピンと来ません。



「あまり長々と話しても覚えるのが大変ですので、端的に言わせて貰います。

 某は、戦闘において“弱い”です。


 先ほど襲ってきた狼を例として上げば、一対一なら勝てます。

 一対二ならかなりの苦戦をし、一対三以降ともなれば逃げの一手、戦う事自体が愚策です。

 因みに、この場合の“勝つ”というは、主殿を無傷で守りきり戦闘を終える、という意味です」


「な、なるほど」



 危ないです。

 最後の注釈がなければ、「レガシーさんがそんなに弱いようには見えない」と言うところでした。


 それはそうですよね、単独での戦いと誰かを守りながらの戦いでは、難易度が全然違うでしょうし。



「件のメールには、『ゲームの力をそのまま使えるようにした』と書かれていました。

 この事を言い換えて解釈すると、『ゲームの仕様そのままを適応させている』という風にも受け取れます。

 ならば、ゲームと同じように、魔物を倒し、経験値を得て、レベルを上げて強くなる。

 という対策が打てる可能性が高いです」


「えっと。そこで問題になるのが、例えレベルが上がっても、レガシーさんが戦闘に不向きである事に変わりがない。ということですか?」


「まさに、伝えたかったのはその点です」



 ご名答。と言わんばかりにその場で感嘆の意を表すレガシーさん。


 よかったです、ちゃんと合っていました。



「それこそ生産職ビルドのキャラでも、『レベルを上げて、物理で殴る』を実践していけば、ある程度は戦い続けられるでしょう。

 ですが、そう言ったゴリ押しはいずれ通用しなくなるのが世の常です。

 で・す・の・で、ここからはアプローチの仕方を変えていこうと思います」



 アプローチ。

 発想の転換という物ですね!


 で・す・の・で、とゆう言葉に合わせて、両手をポンポン叩いていた姿になごみました。


 

「戦いに不向きな召喚獣しかいなければ、戦いが得意な召喚獣を新たに呼ぶ。

 それが主殿にとって、今後最も優先すべき目標になると言えます」


「……」


「……主殿?」


「……ワタシハ、タダノ、ショウカンソウチ……」


「トラウマを想起させてしまったっ!?」


「ハハハ、冗談ですよ、ジョーダンデス……」


「(とても冗談には見えない、落ち込みっぷりなので御座るが!)」



 受け入れがたい現実を前に、一瞬闇に身を落としかけてしまいました。

 いけません、ここで挫けてしまっては、親切に説明してくれるレガシーさんに失礼です。


 とにかく、やれる事を一つずつ、着実にこなして行きましょう!



「……よし、大丈夫です。スズカはがんばれます!

 それで、私は一体何をすればいいのでしょうか?」


「え、あ、はい。それでですね、召喚獣を複数体同時に呼ぶためには、主殿のスキル、《運命式召喚術:Lv.1》のスキルレベルを、2に上げる必要があります」



 どうやら、スキル自体にも個別でレベルという概念が存在するようです。

 そういえば、運命式の解説その3にも、召喚獣さんの人数を増やせると書いてあるんでしたね。



「スキルのレベルを上げるためには、二つの方法があります。

 一つは、スキルを使用する事で貯まっていく熟練度を上げる方法。

 もう一つは、キャラレベルを上げる為にも必要な、経験値を稼ぐ方法です。


 ただ、前者は召喚術の場合、召喚獣をどれだけ長く召喚し続けていたかで自然と貯まっていく仕様でありますゆえ、計らずとも既に実践済み。ということになるので御座る」



 要するに、前者はスキルを使い込んでいく事で、腕前という名のレベルが上がるのですね。

 なるほど、まさに熟練度です。



「そして後者について。今回はこの経験値を稼ぐ方法で、スキルレベルを上げていきます。

 因みに、魔物を討伐する方法とは別の方法で経験値を稼ぐ目処はついているので。その点に関しましては、ご心配無く」


「ですよ、ね。それを聞いて安心しました」



 前もって、「自分は戦闘が苦手」と自己申告して下さっているくらいですし。

 それとは別の案を用意していてもおかしくはありませんよね。



「それで、肝心の経験値を稼ぐ方法についてなので御座るが。

 これは、クエストを達成させる事で、得られる可能性があります」


「可能性?」


「ええ、まあこればかりは、実際に試してみないと分からないので御座るが。

 ゲームの中には、クエストの報酬で経験値が得られる仕様があり、少なくともCOAO内では、どんなクエスト報酬の中にも経験値が含まれていました。


 今回、ギルドでクエストを受けると決めた理由には、生活費稼ぐ以外にも、こういった“COAO内ではあった仕様”。

 その有無を確認する、検証の意味合いも兼ねているので御座ります」



 なんということでしょう。

 仕様を知らなかったとはいえ、私はそういう発想を、全く思いつきませんでした。

 

 なるほど。

 やれる事をこなすにも、まずは何が出来て、何が出来ないか。

 それらを正確に把握するのも、これからの生活において、大事な要素の一つなんですね。

 とっても勉強になります!



「そうだったのですね。……それなら尚のこと、私も一緒にクエストをこなした方が、いっぱい稼げると思うのですけれど」


「ええ、まあ。それは最もな意見なのですが……」



 私の素朴な疑問に、レガシーさんはその場で頷きはしますが……。

 やはり、なにか私に働かせたくない理由があるようです。


 ここでまた労働法云々と持ち出されたら、「異世界は治外法権です!」と言って無理を押し通しましょう。


 物事は常にケースバイケース。

 緊急時には、その場に応じた柔軟な発想が必要です!

 そしてなにより、役に立てずにただのお荷物になるのは嫌ですから。



「申し訳ないです。頭では分かってはいるので御座るが、某のようなNPCのAIには、プレイヤーの方たちに犯罪行為を助長させないための、いわゆる倫理コードのような物が組み込まれていまして」


「あー……」


「この際、主殿のためにハッキリと申し上げさせていただきます。

 主殿は12歳。しかも、同年代の方たちに比べまして、主殿は身長が特にお小さい。

 端から見ると、まるで幼稚園児を働かせているような絵面にしか見えないので御座る!」


 

「――――――」



 orz 


 絶句。

 ここに来て、まさかの見た目問題です……。


 ……ええ、まあ……はい。

 確かに私の身長は110cmと、同級生さんたちとは、頭一つ分以上の差がありました。

 小学六年生女児の平均身長が、150cm前後だとゆうのも知っています。

 ……自分で調べたので。


 別に妖精族だから小さい。などの理由では全然ないのです。

 それ以前から現実世界でも、変わらずにこの身長だったので。

 余りにもミニマムなので、「もしかしたら何かの病気かも知れない!」と、お父さんとお母さんが生前に大騒ぎして、一時期近所の有名人になったのが、今ではもう懐かしいです。



「あ、主殿。大丈夫で御座るか? 顔色がその、大分優れないように見えるのですが」



 完全に俯いた状態で、言葉の槍による精神的ダメージに悶え苦しんでいる私。

 それに対し、心配した様子で体調を伺ってくるレガシーさん。


 すみません、今ちょっと心の再起をかけているので、もう少し待ってて下さい……。


 まさか、自分の召喚獣さんから、言外に「主殿が働いていると犯罪臭しかしない」なんて言われるとは、思いもしませんでした……。


 えーっと、なんだかもう、これに関してはどうしようもないですね。

 なので、それを逆手にとって、ゴリ押しで行きましょう。

 人間、時には開き直る事も大事だと、お友達さんも言っていました。


 よし、スズカは負けません。

 何度挫けようとも、雑草の如くド根性で復活して見せます!



「レガシーさん、とても丁寧で分かりやすい解説、どうもありがとう御座いました!

 おかげで色々な事が十分理解できましたし、そろそろライラさんの所へ向かいましょう」


「あ、主殿。本当に大丈夫なので御座るか? 体調が優れないのでしたら、主殿はここで休んでいただいても……」


「大丈夫です、スズカは元気なのです!

 レガシーさんが仰っている見た目の問題は、発想の転換によって問題解決です。

 私が幼く見えてしまうのでしたら、逆に幼い子がおこづかい欲しさに、大人のお手伝いをしている。と考えれば、そこまで不自然には見えないと思うのです」



 ……自分で言っていてなんですが、ちょっと無理がある内容ですね。


 レガシーさんの反応は、どうでしょうか?

 できればこれで納得していただけると、助かるのですが。



「……ふむ、なるほど。確かに言われてみれば、そう見えなくもないで御座るな」



 あ、納得してしまうのですね。


 ……なんとゆうか、それはそれで複雑な心境です。



「……はい。それでは、早速クエストを受領しに行きましょう!」


「畏まりました、主殿」



 相談を終え、改めて意を決した私達は、二人揃って宿屋を後にします。


 まず目指すのは、異世界での安定した生活と、二人目の召喚獣さんを呼ぶことです。

 色々大変な事もあるかも知れませんが、がんばって達成してみせますよ!






あらすじの(物理的に)小さい女の子は、元の人間の姿の事でした。

地味にかみ合わなくギクシャクした関係、気遣い精神から来るすれ違いなのかも。


やっと最低限必要な説明は終わったので、次回から話が少しずつ、段々と動き始めます。


※2019年1月25日、誤字・脱字・加筆修正

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