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17、新たなる決意

長くなって完全に遅れました……(悲しみ


「―――主殿、折り入ってご相談したい事が、あるので御座るが」



 その言葉をきっかけに、レガシーさんは、私が無意識に避けていた事柄について、語り始めました。




 五日目の朝。



 気付いたらいつの間にか眠っていた、よく分からない昨日の事を不思議に思いながらも、私は朝御飯などの朝の日課を終え、そしていつものクエストを請けに行く前に、レガシーさんの話を聞くことになりました。



 最初、私に向かって床に傅きながら、真剣な表情でお話を始められたので、いきなりの事でビックリしましたが、切り出された話題を知ったことで、その行動にも少し納得しました。



 話題はとてもシンプルなものです。


 それは、“魔物と戦う”という事。


 いつかは、ちゃんと向き合って考えないといけないと、心のどこかで思い続けていたことです。



「主殿は賢いお方です。ですので、尤もらしい理屈を付けて回りくどく話すよりも、しっかりと現実見据え、敢えて直接的な言い方で伝える方が良いと、某は判断いたしました。


 これから主殿には少々酷な事を告げる事になりますが、どうかお許しを」


「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします!?」



 余りにも真剣な話題なので、緊張してちょっと変な返し方をしてしまいました。


 しかも、昨日のライラさんに続いて、レガシーさんにまで賢いだなんて言われてしまいました。

 本当に私はそんな事無いと思うのですけど、何故そこまで言われてしまうのでしょうか。


 か、過大評価過ぎてプレッシャーが……。


 いけません、これは良くない傾向です。

 このままではテンパって、話が終わった時には内容を全然覚えていない。何てことになりかねません。


 スズカ、ここは落ち着くのです!

 一度深呼吸をして、りらーっくす、りらーっくす……。



 ……ふぅ。よし、もう大丈夫です!

 どんな重たい話でも、バッチ来いなのです!!



「まず順を追って話していきます。

 この世界に来て今日で五日目。今まで四日間情報収集をし続けましたが、町周辺の魔物の大繁殖ついて、未だ改善の兆しは見られていません。


 むしろ日を負う毎に、悪化すらしている有様です。

 ここまではよろしいですね?」


「はい。それは私もこの町で生活している間に、薄々気付いていはいました」


「ハッキリと言って、現状では圧倒的に戦力が足りません。

 昨日、私がギルド内で“強い”と評した鎧の二人組みの方たちがいましたよね?

 彼らもきっと、魔物討伐の戦線に加わるためにこの町に来られたのでしょうが、彼らの力を足しても、解決に至るのには厳しいと言えます」


「え、そうだったんですか!?」



 て、てっきり私は、あの人達なら現状の危機も何とかしてくれると思ったのですが……。



「ですので、私はここで“更なる戦力”の投入を主殿に提案したいのです」


「更なる戦力って、まさか……?」



 レガシーさんのその提案を聞いて、私は自然とメルシーの姿を見てしまっていました。



「お察しの通りです。メルシー、ステータスを改めて見せて下さい」


「分かりました、お兄様」



 メルシーは素直にそう頷くと、自分のステータスウインドウを、二人で見やすいよう大きく拡大して表示してくれました。


 


名前:メルシー

性別:女性型

年齢:ナイショです。


固体:《人形(マキナ)

種族:神性・唯一種


Lv:1 → 2

職業:主人に愛でられるお仕事


HP:45 → 55/55(10)

MP:05/05


筋力:30 → 36(6)

頑強:06 → 08(2)

体力:09 → 11(2)

知力:01

精神:01

器用:01

抵抗:00

幸運:《ERROR》


ユニークスキル

《暴力術:Lv.1》

《???》

《???》

《???》

《???》


エクストラスキル

夏炉冬扇(かろとうせん)

行雲流水(こううんりゅうすい)

明鏡止水(めいきょうしすい)


パッシブスキル

《強化術:Lv.1》《狂化術:Lv.1》《凶化術:Lv.1》

《怪力乱神:Lv.1》《バーサーク:Lv.1》《精神崩壊:Lv.1》

《記憶術:Lv.1》《修復術:Lv.1》《遊戯術:Lv.1》


アクティブスキル

《パワー》

《殴る》《蹴る》《頭突き》

《握り潰す》《捻り潰す》《叩き潰す》


称号

《鮮血人形》《壊れない機械》《狂神》

《エルダーアーク》《ステゴロ最強》

《皆殺し》《神殺し》《ハメ殺し》

《記憶喪失》《天然deアホの子》




 あわわわわ……。


 昨日のクエスト分の経験値でレベルが上がって、ただでさえ高かった筋力が、更に上昇しています……。


 そしてさり気なく称号が!

 《記憶喪失》はともかく、《天然deアホの子》って間違いなく私が思ってしまったのが原因ですよね!?


 しかも『or』じゃなくて『de』に変わってるせいで、両方の要素を併せ持ってしまいましたっ!!



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」


「……?」


「いきなりそんなに謝られて、どうなされたので御座るか?」


「いえ、ただ自分の心の過ちに悔いて懺悔しようと……」



 当の本人であるメルシーは、私が一体何のことに謝っているのかわからないといった風に、きょとんとしていました。


 自分の召喚獣さんにひどい称号を付けてしまった、ダメダメな主人でごめんなさいぃ……。



「と、とにかく、話を続けさせてもらいます」


「はい、中断させてしまってすみませんでした……」


「見ての通り、メルシーは、かんっっっっっっぜんに! 戦闘特化の召喚獣です。

 しかも、主殿とは方向性こそ違いますが、同じくステータスが完全特化された、とんでもないパワーファイタータイプです」


「パワー、あります?」



 メルシーはそう言いながら、右腕を曲げて力こぶを作るポージングを取って、二の腕をツンツンと自分で突いています。


 ただ、メルシーはお人形さんなので、そもそも筋肉が存在しないせいで、私達はそのやたらと細い二の腕が見えるだけだったのですが、可愛らしい仕草なので、もうそれだけでOKなのです。


 眼福、眼福。



「……ええ、まあ、戦力としては、件の鎧騎士達と同等、またはそれ以上の力を期待することが出来ます、……多分」



 ちょっとレガシーさん、そこで自信が無さそうにならないでください、私まで不安になります!



「ええっと、ステータスとしては、私でも何となく凄いと分かるのですけど。

 その、見た目的にはどうしても戦闘に向いているとは思えないのですが……?」


「……召喚時、某が一撃で吹っ飛ばされた事を思い出してくだされ」


「あ……」



 もう、それ持ち出されたら、何にも言い返せません……。



「もちろん、微力ながら某も一緒に同行させていただきます。

 戦力としては並程度ですが、これでも一応、応用力には自信はありますので、支援という形で貢献して行きたいと思っております。


 それに、何も今すぐ魔物の群れに特攻をかけるという訳ではありませぬ。

 初めの内は、町の比較的近い位置でバラけている魔物を相手に、本格的なレベリングを行います」


「れべりんぐ……?」


「複数の意味を持つ言葉ではありますが、この場合は我々の強さの単位であるレベル、それを上げるために経験値を稼ぐ作業の事を指します。


 我々も既にクエストをこなして経験値を稼ぐ作業を行っていましたが、どちらかと言えば、魔物を倒して経験値を稼ぐ行動の方に用いられることが多いです」



 なるほどなるほど、また一つ新しいゲーム知識を身につけました!



「レベリングをする意味ですが、いくらメルシーが強大なスペックを有していたとしても、レベルが低い内ではその力を十二分に発揮する事は出来ません。

 そう言った意味でも、戦闘で勝つ力を得るためにも、レベリングは欠かせない要素の一つなのです。


 それに、私達が稼いだ経験値は、主殿にも等分割されて蓄積されていきます。

 なので、それによって《運命式召喚術》のレベルが上り、三体目の召喚獣をより早く呼び出せるというのも、レベリングを行う利点だと言えましょう」


「あ、それもそうですね!」



 そうでした。

 二人目の召喚獣であるメルシーを呼んだ事で、なんだか全て完了したような達成感に満たされていましたが、スキルのレベルさえ上げられれば、三人目以降も更に呼び出せるんですよね。


 完全に失念していました。



「そして、ここからも重要なことなのですが。

 主殿にも一つ、戦闘とは別のところで、ご協力していただきたい事があるので御座る」


「私に、と言うと。お二人がレベリングをしている最中に、町で情報収集したりとかですか?」


「流石は主殿、ご協力願いたかったのは、まさしくその事についてなのです!」



 あ、当たってしまいました……。

 まあ、私に出来る事と言ったら、そのぐらいしか思いつきませんからね。



「えっと、関係あるのかは分からないのですけど、町から南にそこそこ離れた位置に、緑の大精霊さまと言う精霊さんがが住んでいると言われている、緑の森という場所があって。

 そこで魔物さんがかなり密集して生息しているようです」


「大精霊の住まう、魔物が大量生息する森ですか。

 ゲーム的に言えば露骨過ぎるほどにも怪しい場所ですが……、まあ、現実でそんな事を言うのはナンセンスですね。

 まずは、調べて見ない事には始まりませんか」


「ですね!」


「……それはそうと、主殿。もしや、主殿も独自にこの件について調査を行っていたので御座るか?」


「へ!? いやいやいやいや、そ、そんな深い意味を持って日々を生きてなんかいませんよ、私は!」



 むしろ今レガシーさんにきっかけを戴くまで、思いつきすらしませんでしたし。


 と、いうか、そうですよね。

 せっかく町の中で色々な人と接触する機会があるのですし、その状況を活かして、ちょっとでも多くの情報を手に入れるべきですよね!


 そうですよね!

 情報戦は戦いの基本!……と、映画でスパイの人が言っていましたし、私は物理的な戦闘ができない分、情報を武器にして戦えばいいのですよ!


 これなら、ステータスの低さは関係ないのです!!



「よし! それなら善は急げです!

 私はクエストをこなしながら、色んな人達から情報収集をして来ます!


 レガシーさんとメルシーも、レベリング頑張って下さい! 応援しています!」


「は、はい。……って、あ、主殿?」


「それじゃあ行ってきますなのです!!」



 私は二人にそう告げると、ガチャッ!っと勢い良く自室のドアを開け放ち、冒険者ギルドへと向かっていきました……。












―――《side:レガシー》―――






 止める間も無く、主殿が元気良く飛び出していったドアを見つめながら、私は唖然とするしかなかった。


 先ほどまでの説明は、あくまでも『提案としてこういう案がありますよ』と解説し、内容を理解してもらった上で、改めてその案を実行するかどうかを、主殿に決めていただくつもりだったのですが……。


 まさか、確認をする前に出て行かれるとは、思いもよりませんでした。



「妹様。とっても嬉しそうで、張り切った様子で出て行かれました」


「そう、ですね……。あんなにも嬉しそうな主殿を見たのは、初めてかも知れません」


「お兄様に頼ってもらえた事が、きっと何よりも嬉しかったのかも知れませんね」



 私に頼られた事、が……?



 そう、か。

 確かに、主殿は《運命式召喚術》の説明を聞かれた時、『ただの召喚装置』というフレーズを大変気に病んでおられていた。

 言い換えてみれば、それは『召喚以外は役立たず』と言う意味でもある。


 思い返してみれば、クエストを受けるという話になった時も、夕食の準備の時にも、主殿は何か必死な様子で役に立とうとしていた。


 その様子は、子供が家事を手伝いたいという好奇心での行為ではなく、しなければいけないという、一種の脅迫概念に囚われているような、そんな必死さがあった気がしなくもない。


 もしかすると主殿にとって、役に立てない、何もできないと言うのは、何かしらのコンプレックスを刺激する物だったのかも知れない。



 それだと言うのに私は、効率と安全を優先して殆ど自分一人でやろうとしていた。


 兆候は十分に見られていた。

 思い出すだけでいくつも例が挙げられるほどに。



 ……全く、私は何をやっているのでしょうかね。

 せめて、もう少し主殿の気持ちを深く考えていられたら、直ぐにでも気づけていたでしょうに。


 このままでは、主殿の従者失格ですね、本当に……。


 ですが、過ぎた事をいつまでも悔やんでいるだけでは、何も始まりません。


 主殿が、意を決して自らその労力を費やして下さっているのです。

 主殿の召喚獣である我々が動かずして、何としますか!



「メルシー、私達も自分が成すべき事を果たしに行きましょうか」


「はい、お兄様。私も妹様のお役に立てる様、誠心誠意、努力させて頂きます」



 その言葉をきっかけに、私とメルシーは改めて意を決し、主殿の部屋を後にする。



 まずはレベルを上げ、主殿がもたらしてくれるであろう情報を元に、この原因不明の魔物増殖について対策を講じ、最終的には、事態の完全解決に漕ぎ着けるまでが目標です。


 昨日のサグメさんの口ぶりでは、時間の猶予は余り無さそうにも思えました。

 ならば、出来うる限り早い段階での事態の収拾が肝要です。


 主殿の努力を無駄にしないためにも、この一件、必ず収めて見せましょう!










ここからが正念場です。

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