終 雪降る道で
家に帰る前にどうしても寄りたいところがあると紫苑が言うので、俺達は寄り道をすることにした。向かう先はオレンジ色のコンビニである。艶やかな漆塗りのように目を輝かせた紫苑がコンビニを指差す。
「晃一さん、あんまん。あんまんを買ってくださいませんか」
コロコニに飛び付かれ、あんまんを落とした時の様子が思い出される。目の前でカラスに弁当を持って行かれた子供のような顔をしていたな、カラスなのに。
「えー。俺の財布が軽くなっちゃう」
「私はいつも晃一さんの為に頑張っているでしょう。今回なんて私に依頼だったのですよ。供物だと思って捧げてください」
「供物ねえ」
確かに紫苑には世話になっているし、折角買ったやつは落としてしまったのだからもう一つくらい買ってやってもいいか。財布を手にコンビニに入ろうとすると呼び止められた。なぜか真剣な面持ちの紫苑に見つめられる。
「しかし、晃一さんには先程一度買っていただいたので……このようにするのは、その、あまりよろしくはないですね……」
「……いいよ、別に。でも、半分ずつだからな」
レジで受け取った温かなあんまんを手に俺は外へ出る。待ち構えていた紫苑に半分あげると、女を一撃で落としそうなとろける笑みを浮かべて頬張り始めた。
まだ止みそうにない雪の中、はふはふとあんまんを食べながら俺達は並んで歩く。