第一話ー9
「知り合いと」
「ふ~ん」
「何だよ」
「いや、誰と行くの? って訊いたのに、知り合いって言うから怪しんでるの」
……しまった。
気づかれないかと思ったが、さすがに分かったらしい。
目を細め、こちらを見てくる妃奈子。
つか、怪しんでるのを言っちゃうんだ。
と、とりあえず伊津美と行くと答えておこう。
「伊津美と行くんだよ」
「最初からそう言えばいいじゃん」
「す、すまん」
何で謝ってんだ、俺。
☆ ☆ ☆
妃奈子に理不尽な謝罪をして早二時間弱。
円芭と待ち合わせしていた自宅から十分くらいのところにあるショッピングモールに俺はいる。
円芭がいない……。
大型ということもあり、駐車場が多く存在するのに駐車場を待ち合わせ場所に指定したのは間違えだった。
待ち合わせ時間を十分過ぎても遭遇しないので、入れ違いか別の場所で待っているのかもしれない。
ちなみに、円芭にメールを送っても既読がつかない。
失敗したな……。
一緒に行けば良かった。
「どこ行くの?」
と、後悔していたら円芭の声。
「円芭探そうと思って移動しようとしたんだよ」
「ごめん。ちょっとウトウトしてたら待ち合わせの時間になってた」
「そ、そうか」
後悔して損した……。
単なる寝坊とかありかよ。
「待った?」
「いや、そこまで待ってないぞ」
待った待った。凄い待った。
とは言わない。
そこまで器小さくないから。
「……」
「な、何だよ。その目は」
「本当のこと言ってないでしょ」
「そんなことないぞ」
「嘘だよ。ホントのこと言ってない顔してる」
「待ったよ」
「ほら~!」
「普通は待ってないって言うだろ」
「え~、私は言わない」
そうだろうよ。
大体検討つくわ。
「とりあえず買い物しようぜ」
「確かに」
「んで、なに買うんだ?」
「シャーペン」
「……」
「……」
あれ、ずいぶん溜めるな。
……。…………。………………長いな。
もしかして、シャーペンだけか?
「そ、それだけっ?」
「文句ある?」
「いや、まったく」
「じゃあ、言わないで。あと、近寄るの禁止」
「これ以上離れたら会話できないですけど」
「元からする気ない」
「……」
俺居る意味無いじゃん!
……まぁ、でもここまで円芭自らしてきただけでも良しとするか