第一話ー5
自慢の幼なじみだ。
「この先この学校が持つか不安だな」
「いや、あれじゃ持たんだろ」
あんな校長が学校なんて運営できないだろ。
この高校も時間の問題かもしれない。
「ん? 何の話」
ポテトを摘まんでいたら、声が聞こえてきた。
そこへ顔をあげると、365日見知った人物が首を傾げていた。
何を隠そうその人物は、俺の妹 練本妃奈子。
手にはお盆を持っている。
「妃奈子、腹減ったのか?」
「うん!」
大きく頷いて妃奈子は、俺の左側の席に腰を下ろした。
良いって言ってないんだけど。
まぁ、ダメじゃないけどさ。
近いんだよな、座る位置が。
何でわざわざイスを近づけてくるっ。
「なぁ、もう少し離れられないか?」
「無理」
そう端的に短く答え妃奈子は、ポテトを口にした。
正直端から見れば、一個違いの兄妹が密着しそうなほどの至近距離に座っていても、カップルかな? というくらいで気にもとめないだろう。
何せ周りには、俺らが兄妹だというはバレてないわけだし。
「……」
って、円芭!
そっぽ向いてポスト食べてないで、お前からも注意してくれ。
そのように念を円芭に送るが、まさか届くわけもなく……。
おし、変な空気の流れを入れ替えよう。
「塩加減が絶妙だよなっ」
「ホントここの店員さんは神だね」
「他のところは、薄味だもんな」
「いや、薄味どころか味しないじゃん」
「それは、言い過ぎだろ」
いくらなんでも味がしないっていうのは賛同できない。
こいつの舌がおかしいのか、俺の舌がおかしくなってるのかは定かではないが。
「言い過ぎじゃないもん。そんなに疑うなら今度そのお店一緒に行こう?」
「いや、いいよ。めんどくさい」
「行こう行こうよ~!」
グワングワン!
世界が揺れる。
妃奈子が俺の腕を掴み、揺さぶってきた。
「分かった分かった。行くから止めてくれっ」
こんなところでリバースしたくないっ。
「絶対だよ?」
「絶対行くよ」
「やった!」
「ちょっ、お前どさくさに紛れてポテト盗むなっ」
さりげなさ過ぎてびっくりしたわっ。
つか、自分のあるのに何で俺の食べるんだよ。
小さいサイズなんだから、止めてほしい。
「盗んでないよ?」
開き直りやがった。
どう見ても盗ったじゃないか。
「勝手に食べたろ」
「いやいや、シェアしたの。盗んでない」
何を言ってるんだ、こいつはっ。
俺はそんな風に育てた覚えはないぞ……。
というか、シェアってお互いが合意してないとシェアって言わなくね?
「物は言い様じゃない、それ」
「とか言うお前もどさくさに紛れて俺のポテト取るなよ。ハイエナかっての!」
「……」
「……」
しかも、何かこの女子二人俺を間に挟んでアイコンタクトでバトルしてるしっ。
俺のポテトはバトルの景品じゃないんですけど。
(なぁ、祐)
(どうした、小声で)
バチバチに交錯している二人の静かなる意思を感じながら、こちらへわずかに身を乗り出し小さな声で話しかけてきた諒に答える。
(凄い目立ってるぞ)
(知ってる)
何を今さら。
もうだいぶ前から目立ってたわ。
(どうにかしろよっ)
(それは、無理な相談だ)
(相談なんかしてねぇよ。さっきから俺らの周りだけ誰も座らないんだよ)
(う~ん、そう言われてもな)
確かに諒が言うように、俺たちの周りの席には一人も座っていない。
まぁ、俺も軽く小腹が空いたからと思って、ハンバーガー屋寄って隣の席の連中が声をあげない戦いをしていたら、近くには座らないだろう。
何せ旨いものも旨くなくなるからな……。
もうめんどくさいからポテト二人にあげちゃおう。