第一話ー2
さて、くだらない話をしている内に俺らが通う高校に到着した。
自転車を駐輪場に止め、大層人でごった返してる昇降口前に足を運ぶ。
どうやら新しいクラスの表が張り出されているようだ。
周りからは、『また同じクラスだね』とか『クラスが別でも仲良くしようね』など色々な声が聞こえてきている。
みんな元気だな~。
俺は、そんな元気なんて朝からない。
「行かないのか?」
「ちょっと数が減ってから行くべ」
「まぁ、そうだな」
俺の提案に諒が頷く。
諒も無駄に体力を消耗したくないらしい。
正直メールでクラス発表してほしいよな。
こんなに昇降口が混雑してるんだから。
あと、クラス替えの無い学年に迷惑になると思うんだけど……。
「須藤と一緒のクラスになったらどうする?」
「別に普通だけど」
「俺は嫌だな……」
一体何があったんだよ……。
下を向き、諒は肩を落としている。
「そんなこと言ってると一緒のクラスになるぞ」
「……」
俺の冗談を真面目に取った諒が口を閉ざした。
どんだけ円芭と一緒のクラスになるのが嫌なんだよ。
まぁ、大体検討はついてるけど。
というのも、なぜか円芭の奴諒に酷い接し方をするのだ。
個人的には素直になれないから強く接してしまうのではないかと思っているが、諒曰く全くそんなことはあり得ないらしい。
ちなみに、円芭というのは、俺の幼なじみ。
「よっ!」
前方から小柄な男が近づいてきた。
何を隠そうもう一人の親友である。
「おー! 幾日ぶりに会ったらでかくなったな」
気をまぎらわせようとしたのか、諒が伊津美をいじった。
「昨日会ったばかりだろ」
「……」
ボスッ。「グハッ!」
諒を殴ったこの男は、伊津美陽輝。
俺らの中で常識人と言えば常識人だが、もっとも腹黒さを持っている。
自業自得な諒を一瞥し、伊津美は口を開いた。
「お前らと須藤は同じクラスで、俺は別クラスだったぞ」
「サンキュ」
「う、嘘だろ……」
「ドンマイ」
ここまでショックを受けるということは、やっぱり何かあったのかもしれないな。
なぐさめる伊津美も伊津美で、ドンマイというわりには顔が笑ってるし。
俺の知らないところで色々あるみたいだな。
「にしても、一組か~」
「学年の模範にならなきゃ云々言われるんだよな」
「そんな法律いつ出来上がったっ」
昇降口から二階に上がり、新しい教室へ向かう。
「どこ行くんだ?」
「……え? あっ」
危ねぇ!
ついいつもの流れで一年生ゾーンに行くところだった。
指摘してくれた伊津美は、それだけ言って自分の教室へ消えた。
「あいつらには黙っておいてやるよ」
「是非ともそうしてくれ!」
「間違いは誰にもあるもんな」
「って、違う! それよりも重要なことあるだろ!」
「声がでかい」
「言いたくもなるだろっ」
「気持ちは分かる。分かるが、凄い目立ってるんだよ」
「……」
何事かと視線を寄越した新しいクラスメイトを諒がガンつける。
ガンをつけるなガンを!
新クラスに馴染もうって矢先ヤンチャな子っていう印象持たれるぞ。
「通れないんだけど」
「あ、すま――円芭か」
教室の入り口に二人立ちふさがっていたので、邪魔と言われたら退こうと思っていたが、まさかの知り合いに言われるなんて。
左サイドに結わいた髪がキュートな小柄な女の子。
こいつがさっきから諒が同じクラスになりたくないと嘆いていた人物。
俺の幼なじみ須藤円芭である。
黙っていれば可愛い。
だが、性格は猫のように気まぐれで扱いに困る。
こちらから近づいたり話しかけるのはNG。
「円芭か……。て、どういう意味? 私が居たら悪いわけ」
「別にそういう訳じゃないんだが」
「あ、そ」
短い相づちを打ち、教室に入っていった。
あれで友達がいっぱいいるんだから凄いよな。