第二話ー7
「祐君って何部に入ってるんだっけ?」
「情報科学部」
「え、科学部なの?」
「いや、パソコン部だ」
「へぇ、そうなんだ。ありがとう!」
と、テンション高めに礼を言った妃奈子の去っていく足音。
……。…………。
非常に嫌な予感がするっ。
☆ ☆ ☆
……やっぱり遺伝なのかな、身長って。
諒に啖呵を切ってしまったので、少しでも伸ばそうとありとあらゆる方法を使ってみた。
だが、立ってみてもいつもと視界が変わらない。
ということは、イコールの話な訳で……。
まさかの身体測定が昼食べたあとという残念なタイミングだし。
学校側に悪意があるとしか言いようがない。
「お腹空いた……」
と、たまたま身体測定場所に向かうタイミングが一緒になった円芭が、周りには聞こえず俺には聞こえる声で話しかけてきた。
何か食べ物をよこせとでも言うような口調。
「俺は自力で食べ物は生成出来ないんだが」
「知ってるよ、そんなの」
「だったら、もう少しお茶目な感じに言ってくれ。勘違いする」
「何年幼なじみやってるの」
「……」
いやいやいやっ。
幼なじみでも無理だから。
そんな真剣なトーンで言われたら、あれこの子ガチで言ってる? って普通思うよ。
俺が黙っていたら、突然拗ねたような顔になり、
「十四年だからっ」
そう語気を強めてきた。
知っとるわ!
俺が黙ってたのは、別に年数を忘れて無言だった訳じゃないんだよ。
まぁ、言葉には出さないけど。
「出席番号順に並んでー」
(覚えておいてよっ)
身体測定をする教室につき、先生が誘導しているのを見た円芭は呟きながら俺の後方へ歩いていった。
嫌でも覚えてるよ。
むしろ忘れる方がおかしいわ。
というのも、ことあるごとに親共が円芭と俺の歴史を嬉しそうに話してくるので忘れるはずがないのである。
「それじゃ、そのまま新入生への部活紹介をかねた勧誘をやるから一年はスクリーンを見て」
え、身体測定しながら部活紹介やるの!?
斬新すぎる。
いや、まぁ何か身体測定にしては一ヶ所に集まりすぎだなとは入ってきた時に思ったけど。
この教室が全学年入る方が驚きだわ。
あの校長の考えることはひと味もふた味も違うと言うわけか。
ただの変な親父じゃないかもしれない。
「まず先に文化部から紹介をしていきます」
お、早速じゃないか。
パソコン部からさきかっ。
「それでは、パソコン部から」
どんな紹介をするんだろう。
やっぱり部活の時に話してたやつか?
「ほとんど遊んでます!」
おーい!
『たまに』っていう言葉入れなかったら誤解されるじゃないかっ。
「練本」
「は、はい」
「これに乗って」
「分かりました」
担当教師に促され、身長と体重どちらも測れる計測器に乗る。
あ~、伸びてるといいな。
「やったな、練本。去年より二センチ伸びたぞ」
「おっしゃ!」
「残念ながら体重は増えてるけどな」
「……」
あげて落とすなよっ。
☆ ☆ ☆
「新しい子来るかな」
「絶対来るよ!」
さっき測定してくれた先生が体重の増加を防ぐアドバイスをくれたのだが、女子の食事の仕方ってどんなのだろう。
気の早い部員達を尻目に、俺はネットに助けを求めていた。
どうせそんなすぐ新入部員がくるわ――
ガラガラ!
なぬ!?
扉が開く音がして、そこへ振り向く。
「祐君ヤッホー!」
身内がいた。
だからこの間俺がどこに所属してるか聞いてきたのかっ。
手を振る妹に頭を抱えながら、周囲の視線から逃れる。
何が“ヤッホー! ”だよ!
タッタッタッ!
ムギュッ。
やりおったで、こいつ。
甘え上手な妹は、場所を構わず抱きつくことができるらしい。
背中に温もりを感じる。
「あ、ズルい!」
「はい、ストップッ」
「グフェッ」
こちらに来ようとした高田先輩の首根っこを宮城先輩が掴んだ。
それにより、首が絞まり女子とは思えない声を高田先輩があげる。
大丈夫だろうか。
キレイに首に襟が食い込んでいた。
宮城先輩も張本人ながら心配している。
「さて、新入部員が来たわけだし……といっても、一人だけど」
「さすがに毎年大量に来ないでしょ」
どさくさに紛れて顧問にタメ口!?
「そうよね」
「「……」」
「さりげなくため口止めなさい!」
「先生気づくの遅すぎ」
「余りにもさりげなさすぎなのよ」
「あ、そうだ!」
「な、なによ」