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第二話ー3

 がっちりホールドされてるし、しゃがんですり抜けようにも胸が顔に引っ掛かって埋めてる形になるため変な誤解をされかねない。


「入り口で昼ドラするのやめてくれる?」

「先生!」


 なんてグットタイミング!

 やってきたのは、情報化学部顧問。

 普段はのほほんとして使えない人だが、たまには頼りになる。


「健全なドラマですよ」

「いや、どう見ても健全じゃないでしょ」

「むぅ……」

「とにかく邪魔だからやるなら端の方でやりなさい」


 ……ん?

 今さりげなく不健全な行動を肯定しなかったか?


「分かりました~」


 ヤバい、端の方に連れていかれる!

 ……。

 そう思っていたが、温もりは消えていき


「もう今日は抱きつく気分じゃないから」


 それだけ言って高田先輩は自席へ座った。

 抱きつく気分ってどんな気分だよ。

 この中の誰一人理解に苦しまずに聞いてる奴はいないだろう。

 散々円芭をイラつかせておいて、その対処を全部俺に押し付けてくるのだから高田先輩は世話が焼ける。


「……」

「俺はなにもしてないからな。高田先輩が勝手に抱きついてきただけで」

「あっそ」


 短めの相づちをして、興味なさそうに自分の席へ歩いていく円芭。

 くそ……。

 折角最近話をしてくるようになったのに、これじゃ振り出しじゃないか!


「ごめんね、祐君」

「あ、いえ。宮城先輩は謝ることはないですよ」

「うぅん、葉瑠の友人として代わりに謝るよ」

「優しいんですね。宮城先輩は」

「そ、そんなことないよ。あたしにだって悪いところも……」


 どんどん言葉が小さくなっていくこの女子は、高田先輩と同い年の宮城みやしろゆりあ先輩。

 大人しくて頼りになる我が部活の部長様。

 謙遜がいつまでも続くとめんどくさいので、肩を叩き現実世界へ引き戻す。


「ハッ! あたしとしたことがっ」

「んじゃ、とりあえず今日から部活が始まるわけなので、ウォーミングアップとして速打ちやります」


 宮城先輩の現実世界復帰待ちだったか、顧問がみんなの視線を集めてそう言った。

 最初から速打ちかよ!

 パソコンで絵を描いて、それを発表する方がよっぽど楽だと思う。


「早速ですね」

「もっとめんどくさい奴の方が良かった?」

「とんでもないとんでもない!」


 首を左右に振り、高田先輩が焦っている。

 まったく……。

 今の先輩の発言で部室内がピリッとしたぜ。


 もしこれでパワーポイントを使ったプレゼンなんかに変わってみろ。

 高田先輩の明日はない。

 ……というのは、まぁ冗談にしても、この部活に居づらくなるのはほぼ間違いないね。


「もう……。ほら、ファイル開いて」

「は~い」


 ちなみに、さっきから速打ち速打ち言ってるのは、某新聞社が主催のその名の通り速く文字を打ち込むというもので、あらかじめ用意された例文をひたすら打ち込むというシンプルな検定である。

 この検定タイピングが出来る人の方が有利なので、みんなこれをやると良い顔をしない。

 肩は凝るし、目はかすんでくるし。

 楽しいと言ってる人がいたら、友達になれない自信がある。


「年度初の速打ちだから、まさか難易度の高いのはやらないだろう」

「それ聞こえてたらヤバいぞ」

「……」


 口を押さえ、顧問を一瞥する諒。

 バカだね……。

 何か言いましたって言ってるようなもんじゃないか。


「今日は、高校三年上級を全員・・やります」

「……」

「お、俺じゃないしっ」

「どこからか聞こえてきた声にお答えしたの」


 顧問がガンガン諒を見つめている。

 プラス必然的に他の部員も顧問につられて諒を視界にIN。

 ピリピリモードだな、顧問。


「んじゃ、始めるよ」

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