第二話ー2
さっきの努力は全くもって無駄だった。
つか、別に罠にかけようなんて思ってないけど。
ちなみに、俺達が所属しているのは情報化学部。
通称パソコン部。
周りからは、コン部と呼ばれている。
何をする部活かは名前の通りで、活動内容はほとんどネットサーフィン。
これがコン部と言われる原因の一因になっているのかもしれない。
「はいはい」
「俺が課題無いって言ったら無いんだよっ」
「……」
でたー、俺様発言!
何を根拠に自信満々にそんなこと言ってるやら。
ここは、毅然とした態度でいよう。
無言で諒を見つめ、アウェー感を抱かせる。
「いつからお前俺様系男子になった?」
いつのまにか伊津美が横にいた。
この問いから察するに結構前から後ろにいたな。
タイミング的に凄くナイスなところでの侵入の仕方。
ただ伊津美は珍しそうな顔をしているので、バカにしているというよりも本当に不思議だったようだ。
「別になった覚えないけど」
「いやいや、どう聞いても自己中発言だったけど」
「ウソつけ~」
「ウソなんかつくかよ」
「……すまん」
自分の発言が自己中心的発言をしたと伊津美に指摘され、しょぼんとしてることから反省したようだ。
「ほら、着いたぞ」
と、そうこうしてる内にパソコン室に到着した。
「いや、見れば分かるから」
「? よく聞こえないな」
「何でもねぇよ!」
諒イジリを楽しむ伊津美を見ながら、パソコン室の前で上履きを脱ぐ。
ガラガラッ!
「ひぃーろー君っ」ボフッ。
胸に衝撃が走る。
視線を衝撃のあったところに向けると、ショートカットヘアーの女の子の顔があった。
ニコニコ笑顔を浮かべるこの女の子は、俺の一個先輩で高田葉瑠。
イメージ的には、人懐っこくブンブン尻尾を降っている犬。
出ているところが出ており、巨乳好きにとっては最高なのかもしれないが、生憎俺はBくらいが好みなのでドキッとしない。
……。…………。ごめん、ウソ。
少なからず胸が当たっているのでドキッとはする。
「久しぶりっ」
「お久しぶりです」
「今日もお熱いですね~」
なんともシラケた目で俺を見ながら、低い声で諒が言う。
俺は悪くないだろっ!
なんで抱きつかれた方が敵意を向けられなければならない。
「えへへっ。会えなかった分充電してるの」
「へぇ~」
興味ないですと言うかのごとく冷めた言葉を発し、諒が離れていった。
「先輩離れてください」
「理由は?」
「みんなが見てますからっ」
「いいじゃん」
「はははっ……」
良くねぇよ!
なに公衆の面前でイチャついてんだよって視線が四方八方からとんできた。
この状態を円芭に見られたらマズい。
無理やりにもこのくっつき癖のある犬を引き剥がさなければ!
「先輩マジで離れてください」
「……そんなに嫌?」
「うぐっ」
セコい!
上目遣いにウルウル目はセコ過ぎる!
これじゃ本心が言えないっ。
女の子の最強技の前に打つ術がない俺をよそに、背中に手を回していた手をギュッと閉めてくる高田先輩。
くそっ。
どうしたらいいんだ!
なにか打つ手はないのかっ……。
「入り口でイチャつくの止めてもらえませんか?」
げっ!
この声は、最も見てほしくなかった人物。
「通れるじゃん」
「そういうことじゃないんですよっ」
「じゃあ、何?」
「……」
最も見てほしくなかった人物=円芭は、言い返す言葉が見つからなかったのかなぜか俺を睨んできた。
意味分からん。
睨まれる理由がさっぱり皆目検討もつか――なくはないが、俺限定で睨むのは間違っている。
理不尽な視線を送られながら、どうにか高田先輩から離れられる手段を練る。
……。…………。………………。
やっぱり無理!