子供と家族
「佐竹の後には信吉でよいな」
最近は特に重要な話でないと気抜け眠くなる。
家康の前で私はうつらうつらしながら同意する。
「それとじい、珠姫が利長に嫁ぐのについていってくれ江与からもくれぐれもと」
秀忠から最後に言われて市ねえ様の娘の子供であり、
「それはそれは、喜んで道中の護衛を勤めさせていただきます」
そう言うと秀忠は喜び江与と共に会っていってくれと二人で下がった。
「じい、わしは将軍を譲られてやっていけるのだろうか」
二人だけになると誰にも聞けない事を聞いてくる。
「やろうとせずに将軍がついてくると思えばいいだけの事、わからぬことは側近に任せ後で報告を聞けば」
「じいにかかると簡単に聞こえるのだがな」
「秀忠様から徳川が将軍になると言う事を世間に周知させそれを3代目に繋げればよいことです」
「そう簡単に言うがなれるかも未だわからんのに」
不安はあるのだろう弱味を見せられない父親にも、
「私が必ずと前から申し上げている通り、家康様も間違いないと、外から言われれば私が殲滅しましょう」
そう言うと頷き、
「聞かなかったことにしてくれ」
「決まっておることに何かありましたかな」
そう言うと江戸に待つ江与と共に未だ幼い珠姫に会いに行くためまこと共に向かった。
「叔父上、お久しぶりにございます」
「江与殿ずいぶんご無沙汰してしまったな、元気そうで何より」
市ねえ様の3女であり秀忠とは3度目の結婚で産んだ娘が珠姫であり前田利常との結婚をひかえ江戸から金沢への行列であり私が護衛とお世話役と言うことで江戸城に上がった。
「珠姫をお願いします」
色々と話をして未だ3才の珠姫が乳母に連れてこられ可愛く挨拶をする。
「おじいさま、珠にございます」
「おお、挨拶をしてくれるとは嬉しいぞ、中根忠実じゃじいと呼んでくれれば嬉しいですぞ」
そう言うとはにかみながら頷いた。
「大切にお守りして無事に利常殿の元に」
「叔父上頼みます」
未だ乳離れもしてない娘との別れに江与は悲しみを圧し殺し笑顔で今生の別れを行い行列は出発した。
「珠さま、あれは鷹にございます」
「あんな高く飛べるの、じい私も飛びたい」
無邪気な言葉に私もまこも顔がほころび途中高台に上がり遠くまで見える景色を嬉しそうに見ながら金沢のことや利長の事を聞いてくる。
「冬は寒く雪が降りますが雪化粧は綺麗ですぞ、遠くに見える山もあの日本一の山のように上は白くと」
金沢に行けばそうそう外に出る自由もなく途中で止めては色々な物を見せてさわらせており、同行の責任者である大久保忠隣から色々言われるが、
「最初で最後のこと、無事に届けるようにしておる」
風魔に周囲を囲ませ長い行列の忠隣でさえ近付けず文句を言ってくるので翌日から駕籠には珠姫の良く似た子を乗せて珠姫本人は私の前に座らせ砂浜を走らせたり色々な物を見せたりしながら宿に到着時に合流して過ごしていくと小太郎から報告が来る。
「忠隣がわしの行動に行動をということか」
駕籠が進む間は近付けないが宿に到着と出発時には責任者として顔を見る事になるが珠姫の嬉しそうに色々と話すのを聞いて、駕籠には乗ってないと気がつき影ならばと鉄砲で狙わせると、
「どうされますか」
排除するのは簡単だが鈴をつけるのもと準備させた。
それから次の日の午後、
「パーン」
鉄砲が鳴り響き供は混乱するが風魔は鉄壁の陣をしく、私は予定通り仕留めた雉を手持ち急ぎ戻りまこと共に不安な顔をしていた珠姫が私を見て手をふってくる。
「珠姫の夕食にと、騒がせて申し訳ありませぬ」
「そうか、よろしくおねがいしますぞじい」
そう言いながら駕籠から本物の姫が出てこられたことに青い顔になった忠隣に近づき、
「安心せい、犯人は捕まえたわ、金沢到着まで吐かせる」
「それは、不届きな直ちにこちらへ引き渡していただければ調べ斬首に」
「専門家がおるわ、今日夜にも」
そう言うとなにか言う忠隣をおいて駕籠は進んだ。
その夜、忠隣を呼び出す。
「昼間の件、秀忠さまにもお江与の方にも心配をさせたくない、わしの胸にしまっておく、首謀者の成木由左衛門は急死」
自分の家臣の側近の名前を言われて震える忠隣の肩に手をおき、
「自分の立ち位置を過大評価するでない、奢れば家がつぶれるぞ」
大久保長安が大久保党の力を借りて金をばらまきと言うのを聞いていたので伝え翌日からはおおぴらに旅を3人で楽しみ金沢へと入った。
「利長殿、立派に当主として、まことによい珠姫様を幸せにな」
「中根様には無事に珠姫様を連れてきていただきありがとうございます」
関ヶ原前に家康ににらまれたが母まつを人質に出し関ヶ原でも弟は西軍だが当主として判断して家を安泰にさせたのは上杉と比べればであり加賀100万石をと思いながら金沢を後にして京に入った。
「遊廓は落ち着くな、まこ」
三味線の音が聞こえまこも嬉しそうに、
「ここにいれば女子を守ってくれますからね」
そう言いながら馴染みのところに入り過ごしていると来客を受けることになる。
「長宗我部盛親か」
確か寺子屋で生計を立てていると思いながら一番涼しい座敷でまことゆっくりしていると禿が申し訳なさそうに言ってくるのをまこが手招きして感謝を言いながらお菓子をあげて笑顔にして私が通すように言った。
「盛親殿か、大阪以来だな」
「中根様には面会を許していただきありがとうございます。つきましてはお願いが」
確か元親の4男坊で人望もなく短気で良将を奸佞の懺悔で殺した男でありお互い好かないはずだが、長宗我部再興のためにということらしい。
「家の再興であろう、その顔だと未だ切羽詰まってない直ぐにでもと考えておろう」
「いえそう言うわけでは」
思うところがあり顔色を少しだけかえながら、
「西軍には致し方なくであり、戦わずに降参をしましたし本国の一揆に関しても農兵が勝手にしたこと、反意はありませぬ」
堂々と言う盛親に、
「わしが大阪で奉行衆に三成を勝手に呼び戻したり毛利を呼んだりとしていたときにその方増田と話の席にいたではないか、盛親の烏帽子をもらっていて」
「それについては太閤殿下の命により、大阪では留守を言われたので」
「それならば大津の京極のように籠ればよいだけ、その後の城攻めを手伝い関ヶ原でも徳川に内応を言えばよかろう、広家が動かずあわてて逃げ出したのは愚か、一揆も優秀な家老を殺害した結果と井伊から聞いておる」
「それは書状を出しておりますが、何らかのことで伝わらなかったと」
家康が亡くなってと言うこともあるが、
「それならだろうが、一番は兄を反意もない者を殺害する者を徳川は認めぬと言うことだ、わしが特にな」
長宗我部を改易にと言うのを元親の件もあり私は賛成しなかったが、盛親が兄を殺害したと直政からの報告を受け今になったと、
「奸佞の者を取り立てたその方の責任、わしの目の黒いうちはあるまい」
そう言って立ち上がるとうなだれる盛親をおいて店の外に出た。
「恨まれるように仕向けましたね、いずれ大阪ででしょうけど」
「まあ、大阪では浪人を集めて掃除をするのに幸村とおもにだ」
まこは路地の椅子に座り私も座ると、
「敵にライオンをおかなくても」
確かに強い武将に率いられればどんな兵だろうと整然としたがい危険になると、
「勝ちは確定している。次の世代が戦いを経験するのに良いと言うものさ」
そう言いながら帰っていく盛親を横から見送りこの年、家康から秀忠に征東大将軍を譲り徳川が支配すると言うことを民に知らせた。
「ようやくきたか」
島津の当主である島津忠恒が関ヶ原の申し開きをようやくであり私も顔を出す。
「やな顔をするな、当主なのにまだまだ未熟だな忠恒殿」
「これは中根様、今回の件ありがとうございます」
小太郎に寝所に潜入され菊の花をおかれた件は相当肝が冷えたが家臣に八つ当たりしているのは相変わらずのようで、
「伊集院の件にせよ、すれば対外的に印象が悪くなり忠恒殿は苦労せずにいいが家老と家臣が苦労することになる。それを考えれば名君と言われるかもな」
このあと薩摩藩は尾張藩の治水で苦労をしたりと苦渋をなめたがこの若者はと思いながら、
「わかっております。祖父に恥じない名君に」
そう言って直政(井伊)等と話して江戸と駿府に行くことになる。
私は京吉原に戻りまことゆっくりとした時間を過ごしながら江戸の秀忠に呼ばれたので海路で向かった。
「千姫を大阪にやりとうない」
二人だけになると秀忠は私に言う、
「確かに、男親にとっては娘は最愛のと言うことですからな」
そう言うと秀忠は私の手を握り、
「じいの知恵でこの話無かったことに出来ぬか」
そう言われて考えて話す。
「先ずはお江与の方を説得せねば」
秀忠の妻であり律儀者としても喧嘩をするわけにいかない秀忠は私の前で妻に対するうっぷんを吐き出すので、
「私からも話してみましょう」
ダメ元でお江与の方に面会を求める。
「伯父上、何かご用かと」
私に泣きついたのがどこかで伝わっているのか何時もより構えている。
「千姫と秀頼とのこと」
「反対と言われますか」
この性格は兄上とお市ねえ様を2で割った性格で苦手なのだが、
「反対ではないがあわててすることでもあるまい、千姫も未だ幼いから親許に過ごさせてやれぬかと」
「それは私にも思いますが、徳川家が将軍の位につきお姉さま(淀殿)も不安で戦いになるようなことが無いようにと」
「それは逆の事になると思うのだが」
そう言うとお江与の方は少し考え聞いてくる。
「お江与の方にはわるいが結婚なら良いが人質として扱われるのが、それによって徳川との修復できない傷を残そう」
「お姉さまがそんなことをするはずありません」
私は厳しい顔をして。
「わしが心配しているのは千姫殿が幸せでない何かあれば淀殿のいじめとなろう、少女に対する取り巻きの不手際が伝われば戦いの口実になる」
そう言われ驚くお江与の方に、
「秀忠に悪い虫がつき子が生まれることを恐れているようだが、それでその方は女として幸せか」
「我が子を将軍に当然ではありませぬか」
秀忠の初の子で長丸が産まれたがお江与の方の子でなく殺そうとして殺されてしまう。
「わしも秀忠殿とお江与の方との間に生まれた子に3代目を継いでいただきたいと思うがその方の業は息子同士を憎しみ会わせる事になろうこのままいえば、じいの言う予想じゃ」
これで大人しくなってくれればと思うが、
「そう思ってもどう転ぶかわかりませぬ、幸せな家庭が一瞬で消え去ることも絶対はありませぬ」
これがお江与の方の本音であり小谷での記憶は薄いが母である市ねえ様の辛い顔を身近で見てきた悲しきことが根底にあるのだと改めて気がつかされた。
私は大きく深呼吸をして落ち着かせると、
「確かはない、その方の言うとおり、しかし市ねえ様に顔向けできぬことは自重せよ」
「わかりましたがねえ様の為に千姫は喜んで送ります。伯父上にも大阪まで頼みます」
そう言われ頷き、
「家族思いじゃな、わかった」
そう言って下がると秀忠はそれを聞き、
「わしではなく姉を取ると言うか、わかった必ずや豊臣を滅ぼす」
「善きにおはからいを」
そう言うと行ってしまった。
「おう、なんだ」
太田道灌の館に未だに仮住まいで住んでおりそこに正信(本多)が顔を出した。
「相変わらずか、良いかな」
そう言われ中へと通すと座る。
折り目をただして何時ものように何がこんなにつまらんのだと言うような感じで座り、
「いつ引退する」
家康が将軍を引き継ぎ後は秀忠にと言う事なのだが、
「まどろっこしい言い方はよせお前らしくない」
「秀忠様の事、暴走させてどうするつもりだ」
「いずれ潰すのだろお前もそう考えているから良かろう」
「はいそうですかで周りが納得するか」
「もうしばらくすれば豊臣恩顧の大名も代替わりする徳川と同じように、わかっているのだろう、お前が本音を話さんならこれまでだ」
「娘のことだ」
そう言われて思わず笑う、
「健康だから良いではないか子が生まれるとは徳川殿もと言っておるし」
「3人も、その方の子が」
「徳川の本家の血筋、全く知らぬ訳ではあるまい」
「これ以上生まれれば」
そう言う正信に手を出し話を止め、
「二人にはいっておく、しかしもし3人に何かあれば秀忠以降のお子が産まれぬ」
「貴様」
そう言われて正信が立とうとしたのを押さえつけ、
「無理やりこへいとゆいを徳川の為に座らせているのを忘れぬな、徳川が続くのは賛成だが私とて家族は大事、わしを殺そうと考え成功したとしてもこの件を書いた書状は諸大名の側に仕える影に渡しており連絡がなければ戦国に戻る」
そう言うと顔色の変わらない正信に赤みが指し、
「貴様、貴様は」
「無駄はよせ、私が孫が将軍になろうと言うのではない、秀忠殿が徳川を将軍を継ぎそれが続くだけの事、難しく考える必要はない」
そう言うと顔色は戻り何事もなかったように座りお茶を飲み訪問は終わった。
「疲れた、いつかは言ってくると思ったが、刺し違えてでもとか怖いな」
小太郎から注意を受けていたが、そうなればと思いながら話し合いをして気力を使い果たしまこに甘えながら東京湾を見渡せる縁側で横になる。
「でも、吉宗公とか結局将軍になるから」
そう言われて確かにと思いながら秀忠のDNAを呪いお江与に殺されることになる赤ん坊の冥福を祈りうたた寝を始めた。




